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“雑音”を取り除けば、地方の未来が見えるよ

天才デザイナーに聞く、世界版「シアワセのものさし」

2009年11月5日(木)

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 日本の伝統工芸が世界最高であることを、チェスセットを通じて世界に伝える――。そんなプロジェクトを進める外国人がいた。アレクサンダー・ゲルマン。世界的な現代アートのデザイナーである。

 「すべてのメディアにおいて、世界で最も影響力のある現代アーティストの1人」。2001年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)はゲルマンの名前を挙げた。過去、ピカソなど数十人しか選ばれていないリスト。若干32歳のゲルマンがその名を刻んだ。

 グラフィックデザインのほか、映像、音楽、プロダクト、インテリアなど様々な領域の作品を手がける。有名な「MTV」のロゴも彼の手によるものだ。現在でも、イエール大学美術大学院客員教授、マサチューセッツ工科大学メディアラボ研究機関の客員教授など、数多くの大学で教鞭を執る。

 彼のデザイン哲学を書いた『Subtraction(引き算)』は世界的なベストセラーになった。モノの意味に絶対に必要な要素だけを残し、それ以外は削除していく引き算の哲学。それが、「究極のシンプル」と評されるゲルマンの源流をなしている。

 12年前の初来日以降、日本に魅せられた。2008年には、石川県の山中漆器や九谷焼の職人と共同でチェスセットを作り上げた。世界中にコレクターが存在するチェス。彼らに対して、日本の伝統工芸を発信するためだ。それ以外にも、能や文楽など、伝統芸能や職人に関心を寄せる。

 なぜチェスなのか。なぜ伝統工芸に注目しているのか。危機後の世界をどう見ているのか――。ゲルマンに話を聞いた。その中身は現在、日経ビジネスオンラインで連載をしている「シアワセのものさし」と表裏一体をなすものだった。グローバルから日本を見つめる天才が何を考えているのか、見ていこう。

(聞き手、日経ビジネス オンライン、篠原匡)

 ―― 山中漆器や九谷焼の職人とコラボレーションして、漆器や焼き物のチェスセットを作りました。なぜ漆器や九谷焼に着目したのでしょうか。

漆器という自己完結した世界の中に日本人の特質が見える(写真:村田 和聡、以下同)
画像のクリックで拡大表示

 ゲルマン もともと僕自身が漆器に強く惹かれていた、ということがまずありますね。漆器は曲線を描いた木でできているでしょう。しかも、プロテクションのために木の樹液を塗りつけている。そう考えると、漆器は自己完結された世界を構築していると感じました。

「漆器は自己完結された世界を構築している」

 ―― 言われてみれば、すべて「木」で完結していますね。

 ゲルマン 例えば、お米1つをとっても、日本人はお米からお酒を造り、糊を作り、様々なものを作りだして日常の暮らしで活用していますよね。もちろん、ヨーロッパでも麦からパスタを作ったり、パンを作ったり、ウォッカを作ったりする伝統がありますけど、ヨーロッパや米国はそういう自己完結のプロセスを忘れている気がするんですよ。それに対して、日本はきちんと生活に内在している。

 漆器という自己完結した世界の中に、日本人の特質を見ることができる、と思ったのも漆器に惹かれている理由です。漆器を作るのに、木のクオリティを吟味し、そこに最高の技術を施し、繊細さを極めていくわけでしょう。これは日本人の優れた特質と思います。

 さらに言えば、五感に伝わってくる魅力も大きな要因でした。漆器が持つ独特の光沢や質感はもちろんのこと、触った時の感触は漆器ならではのもの。漆器を「もっと学びたい」と思っているうちに、完璧にはまり込んでしまいました。

 ―― それでチェスを作ろうということに。

 ゲルマン 経済的な発展が加速した結果、たくさんのモノが生産されるようになりました。音楽1つをとってもそうでしょう。

 レコードの時代には批評を読み、レコードを買ってきて、ターンテーブルの上に載せて、次のレコードが出るまで何週間も聞いて、その音楽をしみじみと味わっていました。言い換えれば、その音楽をとても大切にしていたということですよね。

今の世の中は価値のないモノを生産している

 ゲルマン ところが、今の状況を見ると、何千という曲をダウンロードして、ハードディスクに蓄えたりはするんだけど、結局、それを聴かずに終わってしまうことも少なくない。歴史的に見ても、近年に作られている音楽はかつてない数に上るのではないでしょうか。

ゲルマンが仕掛けた山中漆器のチェスセット。背後の自転車も漆器の技術で作っている
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 それが、私たちに何をもたらしたのか、ということをよくよく考えると、人間にとって価値がなくなって来ているものがたくさん生産されているということ。「使い捨て」とは言いませんが、「使い捨てられやすいモノ」をたくさん作っているということになりますよね。

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「“雑音”を取り除けば、地方の未来が見えるよ」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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