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日米軍事同盟、終焉へのカウントダウン

安保体制を裏方で支える時代は終わった

  • 鍛冶 俊樹

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2009年11月13日(金)

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 「オバマは本当に来るのか?」

 そんな懸念の声が外務省内で囁かれるようになったのは先月中旬のことだ。なにしろ日米間の懸案事項、インド洋補給問題と普天間移設問題が暗礁に乗り上げたまま、鳩山由紀夫政権は動きが取れない。米側はバラク・オバマ訪日までの解決を要望していたものの解決の糸口さえ見いだせず、このままの状態で大統領が来日して首脳会談を開いても「決裂するだけ」なのは目に見えている。訪日中止に至るのではないかと危惧されたのである。

 さすがに中止に至らなかったようだが、日程がずれ込む事態にはなった。直接の原因は、米国陸軍基地内での銃乱射事件だ。

 これは突発的な事件とは言え、単なる日程変更というだけでなく、日米関係に暗い影を投げかける深刻な事件でもある。米テキサス州の陸軍基地でメンタルヘルスケア担当の軍医が銃を乱射し、米兵ら13人が死亡、30人以上が負傷し犯人は地元警察の女性警官により取り押さえられた。軍隊には通常、憲兵(military police)が常駐しており地元警察の力を借りなければならなかったこと自体が軍の威信にかかわる事件である。

 しかしそれよりもはるかに重大なのは、犯人が米国籍の米国軍人だがアラブ系でイスラム教徒であった点だ。

 イラク・アフガニスタンにおける一連の戦争を米国のジョージ・ブッシュ前政権は対テロ戦争と呼んだ。しかしこの呼称が変だと言うことは、米国ではとうに指摘されている。テロとは戦争の手段であり、対象ではない。第2次世界大戦でドイツは電撃戦を使用したが、だからといって戦争は対独戦争であり、対電撃戦戦争ではない。ならば、この戦争は何と呼ぶべきなのか?

アフガンに対する欧米と日本の温度差

 1990年代前半、国際政治学の世界的権威であるサミュエル・ハンチントンは次なる戦いを西洋文明対イスラム文明になると予言し、これを「文明の衝突」と呼んだ。結果的に見て、この予言はまさに的中したことになるが、ではこの戦いを「文明の衝突」と呼ぶか? と言えば、答えはノーである。

 なぜならもしそう呼べば、この戦争がイスラム教徒を対象とした戦いとなりかねない。全世界のイスラム教徒を敵として戦うことの不利を欧米はよく知っている。つまり欧米としては対イスラム戦争という側面を決して強調してはならないのである。そこで苦し紛れにつけた呼称が対テロ戦争なのである。

 だが、イスラム過激派はこの戦いを西洋対イスラムの戦争として捉え、聖戦(ジハード)を鼓吹している。多くのイスラム教徒は自爆テロには否定的だが、内心、反欧米感情に共感している。つまり、いつ対イスラム全面戦争に発展してもおかしくない状況であり、欧米はそれを抑えるのに躍起になっているのだ。

 この戦争の正当性をめぐる議論がしばしば散見される。大量破壊兵器がなかったとか国連決議に基づいているとかの議論は、実は表面的なものでしかない。欧米の兵士を悩ませる本質的な疑問はこの戦争が宗教差別に基づく宗教戦争ではないのか? という宗教的な疑問だ。

 従って従来の米軍であれば従軍牧師が兵士の精神面の大きな支えとなるのに、この戦争では宗教色を嫌い、非宗教的な心理カウンセリングに重点が置かれているのだ。ところが今回の事件ではその担当の精神科医がブログに自爆テロを讃える書き込みをし、「アラーは偉大なり」と叫んで凶行に走った。

 犯人はヨルダン系の39歳の男性だが、少佐という階級は軍の中堅幹部でありしかも精神科医、米国のエスタブリシュメントに属しておりアラブ系のエリートと言ってもいい。こうしたエリートが米国の正義を信じられなくなっているのだとすれば、それは取りも直さず、米軍が宗教的に侵されていることを意味する。つまり宗教戦争の側面が表面化せざる得ない状況なのだ。

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