「先細る魚大国ニッポン」

先細る魚大国ニッポン

2009年11月18日(水)

うまい魚が、食卓でなく、海に流れる

流通効率化のしわ寄せは漁師たち

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 東京の高級住宅街である白金に11月7日にオープンした1軒の日本料理店「味彩せいじ」。広尾の懐石料理店を皮切りに、西麻布で鮨を10年間握り、系列の日本料理店も任されたという料理人がいよいよ独立し、腕によりをかけて魚料理を振舞う。

 東京で魚と言って、すぐに頭に思い浮かぶのは、全国から魚介類が集まる築地の魚市場。ここも、やはり、築地で厳選した素材を使って料理を堪能させようというのだろうか。

 「築地? 基本的には頼りませんよ」。料理人、平原成二はこともなげに言う。そして、こう続けた。「毎日どんな魚が届くのか、私も楽しみにしているんです」。

栗の香りがする茹でダコ

 どうやらこの店は、普通の日本料理店とは趣が異なるようだ。平原の仕入先の魚は「とにかく鮮度が違う」のだという。しかも、築地では見ることができないような魚を扱うこともあるらしい。その日の献立は、届いた魚で決まってくる。

 なぜこのような店を立ち上げようと思い至ったのか。平原は言う。「ZEN風土との出会いが始まりでした」。

 ZEN風土とは、平原の仕入先である。強烈な印象は、今でも忘れられない。本物のタコの味を教えられたのも、ついこの間のことだ。

 「よく『いいタコは、茹でると栗の香りがする』と言います。ところが、今までそんなタコにはまず出会ったことがなかったんです。でも、そのタコは本当にそうでした。初めてですね。タコがあんなにうまいと思ったのは」

「味彩せいじ」の店主、平原成二氏。産地直送、旬の味を提供しようと張り切っている。店主お奨めコースは、3500円〜

 10年働いた鮨店では、師匠が直接築地に出向いて最高のネタを仕入れていた。日本料理の経験もあり、いわば魚介の専門家である平原がそこまで感動したタコ。それは、ZEN風土が持ってきた大分のタコであった。

 ここで平原は、水産流通の現実を初めて知る。大分のタコはうまいにもかかわらず、数が揚がらないから、既存の流通に乗らない――。

同じ大きさの魚がなぜ揃うのか

 料理人を驚かせたZEN風土とは、どんな会社なのか。魚の仕入れを始めた経緯について尋ねると、いきなり“先制パンチ”が飛んできた。

 「もしかして、お鮨屋さんの魚が一番新鮮なものだと思ってません?」

 そう言って笑うのは、ZEN風土会長の増田紀雄だ。東京都港区に本社を構えており、もともとはコンピューターソフト開発を手がけていた。それが7年ほど前に全国漁業協同組合連合会(全漁連)のソフト開発に携わったことが縁となって、全国の漁港とのネットワークができた。

 これをきっかけに今は、息子である社長の増田剛と一緒に、レストランを中心に魚介類の産地直送販売に取り組んでいる。現在、その顧客リストには、フランス料理の「シェ・松尾」や「霧笛楼」、イタリア料理の「アクアパッツァ」、中華料理の「赤坂四川飯店」など、日本を代表するような名店がずらりと並ぶ。

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著者プロフィール

中西 未紀(なかにし・みき)

フリーライター。1979年神奈川県生まれ。お茶の水女子大学卒業後、出版社、編集プロダクションなどを経て現職。映画を中心としたエンターテインメント、ライフスタイル全般を手がける。


このコラムについて

先細る魚大国ニッポン

日本の漁業が先細っている。漁業総生産量はピーク時の半分以下となり、漁師の数も減少傾向にある。魚は獲れず、後継者も不在――。それでも、スーパーマーケットには毎日パック詰めの魚がずらりと並び、回転寿司で当たり前のようにメニュー通りのネタが回る。こんな光景は、いつまで続くのだろうか。

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