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コメに「ユートピアの枠」はあるか?

イネゲノムと「中部125号」「浮きイネ」(その3)

2009年11月20日(金)

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 浮きイネを栽培している地域は、それが唯一の食糧になっているケースも少なくない。というのも、ほかの穀物は洪水に耐えられず、浮きイネだけが雨期にも生き残るからだ。

 しかし問題は収量だ。一般的なイネは1ヘクタールで4~5トン取れるが、浮きイネは2トンしか取れないという。であるならば、浮きイネしか食べるものがない地域で、その収量を増やせれば生活を飢餓から守れないか。

 そこで浮きイネの研究は、名古屋大学生物機能開発利用研究センター生命農学研究科の芦苅基行教授のもう1つの研究テーマである収量とつながる。

 「2005年にイネの収量性を支配する遺伝子の単離に、私は世界で初めて成功しています。これでイネの収量をコントロールできるのではないかと思った。それがこのプロジェクトを始めた理由だった」

「緑の革命」の落とし穴

 ちなみに野生のイネの遺伝子を調べてみると、スノーケル1とスノーケル2の遺伝子を保持している。つまり、イネはもともと洪水に対応できる植物だったのだ。

 しかし、今や洪水が多発する場所で栽培されているイネだけが浮イネ性を保持し、多くの栽培品種はこれらの遺伝子を保持していない。スノーケル遺伝子を保持したイネは通常の栽培条件でも収穫時に背が高くなりがちで、風雨で倒伏しやすくなる。

 つまり扱いにくい。結果として通常の栽培条件ではその形質を示す品種は選ばれない傾向があり、やがてその遺伝子は地域の農業史の中で失われてゆく。そして収量を増やす方向で品種改良が重ねられてきた。

 これに対して、芦苅教授は収量と浮きイネ性を制御して、洪水に強く、しかし収量も多い品種が作れないかと考えている。それができれば、浮きイネしか食糧がない地域を飢餓から救えるかもしれないのだ。

 イネの多収量化については、1つエピソードがある。

 第2次世界大戦中にメキシコ政府の協力の下、ロックフェラー財団の手で推し進められた「緑の革命」というプロジェクトがあった。交雑して生まれた雑種(ハイブリッド)1代目(=F1)は多収量化する特性を利用し、中でも高収量のF1ができた時にその両親を継代培養し、掛け合わせて種子を作り続ける。

 こうして小麦とトウモロコシの多収量品種を作り出し、そのF1種子を第三世界に普及させたのが、いわゆる「緑の革命」と呼ばれる事業で、第三世界の農業を劇的に変えた。

 こうしたハイブリッド化は、イネの世界でも手掛けられている。田中角栄・元首相が日中国交回復を実現した後、中国から来日した友好視察団は、琉球大学農学部の新城長有助教授(当時)がインド野生種から開発した自家不稔性(自分自身の雄しべからは受粉しない)の種籾が欲しいと申し出た。彼らは新城助教授が東京まで持参した60粒の籾を入手して帰国した。

 中国の研究者はこの種籾と、やはり日本で開発されていた耐寒性多収品種である「レイメイ」を交配させて多収性のハイブリッドライス「黎優57号」を作り出し、中国北部に普及させた。一般のイネの場合、自分で受粉してしまうので、自家不稔性を持たせることがハイブリッドライスを作るうえで必要。そのため、中国は新城助教授の研究を必要としたのだ。

 こうして中国で作られたハイブリッドライスはやがてアメリカに渡り、種子会社リングアラウンドがその種子を扱うようになる。1983年にリングアラウンドは日本にハイブリッドライスの種子を売り込みたいと打診し、その経緯はNHKによって「謎のコメが日本を襲う」という題で放映されたが、それはもとを正せば日本の技術を応用したものだった。

 しかしハイブリッド化には落とし穴がある。雑種交配による多収性は、いわゆる「雑種強勢」を利用するものである以上、F1世代にしか受け継がれず、そこで実った種籾から生えたF2世代は多収性を失う。

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