2009年2月17日、このコラムで中国の大卒生の就職難に関して「中国の就職難、農村からの出稼ぎ向け求人に大学卒が殺到――『農民工』と『大卒生』の不満が合体すれば社会不安が」というタイトルで記事を書かせて頂いたが、いまその就職できない大卒生に異変が起きている。
なんと、中国人民解放軍に入隊しようと、徴兵弁公室に殺到し始めたのである。
中国政府、人民解放軍での大卒生優遇策を発動
それもそのはず。大卒生の就職難が臨界点を超えそうなのを見て、中国政府は「国家教育部、国家財政部および中国人民解放軍総参謀部」の名において、大卒生(在学生を含む)が人民解放軍に入隊したときの優遇策を講じて全国に発令したのだ。
中国には古くから「良鉄釘を打たず、良男兵にならず」という諺があるように、兵隊になるなど恥ずかしいと思っている者が多かった。しかし、高い学費を払って大学を出ても就職先がなく、あったとしてもブルーカラーの農民工よりも低い給料で働くしかない現状に遭い、もうどんな職業でも収入がありさえすればいいとばかりに、大卒生や大学院進学生までが、人民解放軍の戸を叩き始めたのだ。
2009年10月22日の「銭江晩報」は四川省の入隊応募者の数はすでに20万人に達していると報じている。「騰訊・大成網」はその記事を転載しているが、ネットにある下の写真は、入隊相談に駆け付けた大学生たちの真剣さを物語っている。


2009年10月28日の東北新聞網によれば、瀋陽市の和平区政府徴兵弁公室に申請した入隊応募者の92%が、卒業を控えている大学生であるとのこと。その他、安徽省や河南省あるいは北京、上海と、全国津々浦々の徴兵弁公室は、まるで就職説明会場になったかのごとき熱気を帯びている。
中でも私の目を奪ったのは、2009年11月6日の「南方都市報」の記事を転載した「新浪網」の写真だった。そこには入隊応募用紙を奪い合う女子大学生の姿が映し出されていたのだ。
親も付き添い、女子大生たちが応募
また2009年11月6日の「新華網」は、「蝶よ花よ」とだいじに育てられた「80后(バーリンホウ)」(1980年以降に生まれた一人っ子たち)の「小皇女」たちが、やはり徴兵に応募しようとして徴兵弁公室で相談をしている姿を紹介している。「小皇女」の後ろには彼女を育ててきた両親が、これまた戸惑いと慈しみを込めた目でピタリと付き添っている。

女性の人民解放軍を、このような形で公募するのは初めてのことでもあり、ネットはもっぱら「女兵」募集と応募に関する話題で持ちきりだ。右に示す写真は、新華網北京11月6日電 (黎雲、張彦中)が10月30日における江蘇省泰州市軍区教導隊での相談の模様を伝えたものである(元記事のリンクはこちら)。
こういった動きが全国レベルで突如現れたのは、中国政府が大学生の就職難問題を、国家存亡の危機としてとらえ、国策として動き始めたからである。
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