「エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな」

細かいデータも切実感もなかった

鳩山国連演説「25%削減」の舞台裏(下)

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2009年11月25日(水)

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 ―― 国民の側から見ると、確かに選挙で勝った民主党のマニフェストにCO2削減が書いてある。しかし、国会での所信表明演説も、国民への説明もなしに、いきなり国連で国際公約をなさるのは、ちょっとどうかな、という気もなきにしもあらずなのです。
 杉山さん。この25%もしくは30%削減のアイデアそのものが、世界の平均から言うと、一体どれほど大きいか、削減可能だと言うなら、どういう道筋が考えられるのでしょうか。

 杉山 削減可能だと言っている方たちはいます。そういうモデル計算もありまして、IPCCの報告書にも載っています。

電力中央研究所社会経済研究所上席研究員、杉山大志氏

 ただ、もちろん前提がたくさんあって、IPCCは「技術的に可能です」という言い方をしています。技術的には何でも可能なのです。例えば、電力を全部、原子力発電でまかなって、クルマは全部電気自動車にすればいいのですから。

 「技術的に可能」ということの裏返しは、「政治的、経済的には、また別の話」ということです。IPCCの中でも色々なシナリオがレビューされています。

 例えばCCS(二酸化炭素貯留)という技術があります。発電所などから出てくるCO2を地中に押し込める。これを世界中の火力発電所でやろうとすれば「うちのところでは埋めるな」とか、「埋めるための金は誰が払うんだ」という話になる。

 中には、2050年に世界全体で8割減なんて、非常に低い排出量になるのもシナリオもあります。ただその前提条件のところをよく見てみると、相当難しいということが分かるわけです。

2100年のCO2排出量削減を語るのはほとんど“SFの世界”

 だから、2050年や2100年になったら、特に2100年はほとんど“SFの世界”ですね。何だって言えてしまう。その点、2020年の話はずっと具体的です。今、見えている技術でシナリオを書かざるを得ない。となると、25%削減は、私の理解では非常に厳しいです。

 先ほど前田さんがおっしゃったようなすばらしいアイデアはあります。太陽電池はものすごくコストがかかる。1キロワット時の発電コストが普通の発電所で6円くらいで済むところが、太陽だと47円から百数十円。そんなことよりは、住宅の断熱などやれることをやったほうが良い。省エネルギーのほうがずっと効果が上がるものは多い。

 ただ私から申し上げたいのは、結果がどうなるかというのは、一生懸命にやってみなければ分からない部分がある。できなかったらペナルティを払うとか、失政扱いされるということになるのは、あまり良くないのではないかと思います。

 ―― 産業界から坂根さんのご意見はいかがでしょう。これはもろに色々な影響が出てくるわけですよね。

 坂根 国際的な目標作りはトップダウンで政治的アプローチになっています。もうそれしか方法はないんだと思うんですね。交渉する人は政治家か官僚ですから。

 ですが、実際に本当に、真面目に世界のCO2を削減しようとした場合、どんな行動を起こさなければいけないかは明らかでしょう。

セクター別アプローチで世界を引っ張ってきたが…

日本経団連環境安全委員会委員長(コマツ会長)、坂根正弘氏

 坂根 世界中の業界が全部情報開示をして、建設機械業界の中でコマツが1番でなかったら、勝っているところにアイデアを教えてくれ、と行きますね。「効率でベンチマークをして、何年で世界最高水準にするか」を考える。各国が謙虚にそれをやったら、多分世界のCO2はあっという間に削減されるでしょう。それしか方法がないはずなんです。

 ですけど、国際目標作りは上から来る。本当は各産業ごとに、1番進んでいるモデルを出して、「ここまでは行けるはず」「情報開示しようじゃないか」というような国際の枠組み作りができればベストなんですが、難しいことなんでしょうね。

 ある時期まで日本がそういう「セクター別アプローチ」で、真面目に効率の良い目標作りをしようと世界を引っ張ってきました。しかし、ここに来て、またトップダウンに完全に移っちゃっているのは、私は非常に気になるところであります。

 ―― 前田さん。麻生さんのときには「日本だけが損をするようなことは絶対にしない」という国民向けのメッセージがありました。そのための仕組みを作るべきだと思います。何故ならば、坂根さんがおっしゃるように、日本は恐らくどの分野でも世界のトップ水準に到達した国だからです。
 民主党は「日本が損をしない仕組み作り」をやっているのでしょうか。私が聞いたところ、25%の案を発表する前に、党内で「40%で行こう」という声もあったと聞きますが、それは事実でしょうか。

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著者プロフィール

谷口 徹也(たにぐち・てつや)

日経エコロジー編集長。日経ビジネス、日経情報ストラテジーの記者などを経て、2002年1月〜2007年8月日経ビジネス香港支局、2007年9月〜2009年5月日経ビジネス副編集長、2009年6月日経ビジネスオンライン副編集長。2012年1月から現職。



このコラムについて

エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな

鳩山由紀夫首相は就任直後の国連演説で「CO2排出量の1990年比25%削減」を明言、その達成目標を2020年とした。環境技術のリーダーとして、世界のトップを走り続けることは日本にとって悪いことではない。しかし、省エネが進んだ日本が破格のコストをかけることに経済、政治、技術的な合理性はあるのか。目標達成のため“削減後進国”に支払うことになりそうな排出権の対価を含む国民負担に日本経済は耐えられるのか。多面的な議論を通じて「エコロジー=正義」という単純な構図を検証する。

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