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“離散消滅”の「年越し派遣村」が救ったモノは?

貧困ブームに乗じたモラルハザード、疲弊するセーフティーネット

  • 小林 美希

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2009年11月30日(月)

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 クリスマスムードの銀座からほどない日比谷公園(東京都千代田区)。日中は学生やサラリーマンの憩いの場となっている。

 ほんの1年前、この場にテントが張られ、失業者やホームレスが集まった悲壮な光景があったとは思えないほど、穏やかな時間が流れている。見上げれば厚生労働省のビルがある。まるで何事もなかったかのようだ。

自立できた人数は不明

 昨年末から今年初めにかけて行われた「年越し派遣村」。寒空の下、炊き出しに長蛇の列ができた光景は、誰しも鮮明に残っているのではないか。あの中で499人が「村民登録」した。うち、「“派遣切り”で住居も仕事もなくなった」が20.6%、「派遣切りではないが不況によって失業」が19.8%を占め、派遣村を訪れる前日に「野宿していた」が57.9%だった。280人が生活保護の申請を行い、住まいを確保。就職に向けた準備を開始した。

 今年6月に実行委員会は解散したが、「村民」のその後の行方はどうなったのか。派遣村の実行委員だった、全国コミュニティ・ユニオン連合会の鴨桃代会長は「就職状況など、自立できた人数は、把握していない」としており、実態は明らかにはなっていない。派遣村を訪れたものの、ホームレス生活に戻った者もいたという。

 鴨会長によれば、「住居を得て職業訓練を受けても、容易に就職はできない状況。派遣村から行政支援を受け公営住宅に入居できた人の中には、夏に退去を命じられ、私たちユニオンが自治体に交渉して退去を免れた例もある」と、危機感を募らせる。

 派遣村では寄付金が約5700万円集まった。鴨会長によれば、当初、実行委員では寄付金を原資に、企業や行政にも参加してもらい就労支援基金を立ち上げようかと計画していたが、実現はしなかったという。この間、住宅斡旋支援活動や労働者派遣法のリーフレット作成などに寄付金を利用。残った約3000万円は、派遣村の名誉村長だった宇都宮健児弁護士や朝日新聞社の竹信三恵子氏ら5人が第三者機関として使途を含め資金管理をしているというが、方向性は定まっていない。

 派遣村の村長だったNPO法人(特定非営利活動法人)自立生活サポートセンター・もやい、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠事務局長が内閣府の非常勤参与になったことで、派遣村を開村しなくても済むよう行政による支援体制を要請しており、今年の派遣村実施については「今のところ、どちらとも言えない状況」(鴨会長)としている。

 製造業の派遣切りは、年度末を過ぎると事務系派遣の契約打ち切りにシフトし、正社員の雇用をも脅かすようになった。厚労省の「非正規労働者の雇い止め等の状況」(10月報告:速報)によれば、派遣や請負契約、有期契約労働者の期間満了、中途解除による雇用調整は、2008年10月から2009年12月までで累計24万4308人となっている。正社員については、10月21日の時点で大量解雇ともいえる100人以上の離職事例が5万1445人となっている。

 リーマンショックが起こった2008年9月の完全失業率は4.3%。2009年9月には5.7%に上昇した。年齢階級別に見ると、若年層が全体平均を上回っている。同期比で、15~24歳で8.4%から9.8%へ、25~34歳で5.4%から7.3%に悪化した。これでも、雇用調整助成金で失業が抑制されている状況だ。雇用調整助成金などの支給額は、2008年度は67億7940万円だったが、2009年4~9月の半期でも3311億9011万円にも上る。この状態をいつまでも継続はできない。

 超就職氷河期を迎えた2000年3月卒の大卒就職率は統計上、初の6割を下回る55.8%を記録。その結果、正社員として就職できれば組織に組み込まれることでキャリア形成ができた。一方、非正社員となった若者は、スキルアップの機会を失った。雇用格差は固定化したというわけだ。

 少数精鋭の正社員には仕事の量や責任が増しただけでなく、次第に賃金など労働条件が非正規並みの「名ばかり正社員」の存在が顕在化した。2007年8月の厚労省が行った日雇い派遣の調査では、日雇い派遣で働く中に正社員・自営業が25.5%を占めており、4人に1人は正社員・自営業でも十分な収入が得られていないことを意味する。リーマンショック後、その状況は悪化しているはずだ。

家計を支えられない男性の「寿退社」

 不況と労働市場の規制緩和などの構造問題が重なる中で、個人の頑張りではどうしようもなく、制度に翻弄された若者は少なくない。

 特に若年層の間で急速に広がった雇用の劣化は、マクロ経済にも大きな影響を与える。総合研究開発機構(NIRA)によれば、就職氷河期世代の非正社員や無業者の増加により、潜在的な生活保護受給者を77万4000人と試算。そこから生じる追加的な予算を17兆7000億円から19兆3000億円と見込んでいる。

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