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漁師への“甘言”が、漁業をダメにした

大量効率化の誘惑と蹉跌を知る魚市場《前編》

  • 中西 未紀

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2009年12月2日(水)

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 明治維新をやったような男が相馬にいる――。

 そんな噂を聞きつけて、足を伸ばした。相馬とは、福島県にある相馬原釜漁港のことだ。寒流と暖流がぶつかっており、漁場としては絶好の条件を備えている。生産地市場のために、一般的な知名度は高くないが、魚介類の活きの良さには定評がある。例えば、ここで獲れる天然ヒラメ。脂が乗っており、築地の消費者市場では「常磐モノ」として高値で取引される極上品だ。

 この漁港の年間水揚げ高は約60億円。約400人いる地元の漁師による成果だ。

国に平気で物申す

 新幹線の福島駅から、クルマで秋の紅葉が美しい山を越えて2時間。到着した漁港で出会った男は、国への憤りを抱えていた。

 「民間企業で言ったら、全くナンセンスな話ですよ」

 こう語気を強めるのが、相馬双葉漁業協同組合(漁協)の本所部長を務める寺島英明である。漁協の運営を担当する寺島は、何で怒っているのか。

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 相馬漁協は2003年10月1日、「相馬原釜」「新地」「松川浦」「磯部」「鹿島」「請戸」「富熊」という近隣7漁協が合併して誕生した。所属する漁師の数は1385人、漁船数は867隻。福島県で最大規模を誇る。

 水揚げ高は約80億円。つまり、75%は相馬原釜が稼いでいる計算になる。

 「でも、国が進める方針は、どんな状況であろうと“対等合併”なのです」

 国は「一県一漁協」の方針を推し進めている。「とりあえず規模を大きくすれば生き残れる」。そう受け取れる“安易”な発想が、寺島は我慢できない。

 対等合併の原則があるために、それぞれの独立権が残ったまま。市場や事業所の統廃合もままならない。寺島が「年間1500万円もの赤字を抱えているのだから、役員報酬は50%カットしろ」といったアドバイスを送っても、現場責任者にしてみれば、それは自分の将来の報酬が減ることを意味する。だから、おいそれとは手をつけない。

 抜本的な解決策が打てない。結局、対等合併とは、黒字の漁協に赤字の漁協が“おんぶに抱っこ”する格好となる。マイナスとマイナスを足して、プラスになるはずもない。

 「北海道から沖縄県まで、全国で合併が進められています。でも、良くなっている漁協なんて1つもない」

机上の空論では漁師は食えない

 寺島にとって、国が頼りにならないのは今に始まったことではない。10年以上前のことだ。当時、寺島は、相馬原釜漁協の一職員として、資源管理を担当していた。

 ある時、水産庁から講演の依頼を受ける。対象は、静岡県以西の資源管理に関わる県職員。現場を知る人材として、指名を受けたのだ。寺島はプレゼンテーション資料をまとめて事前に送付するなど、準備は万全だった。そして迎えた当日――。

 講演を開始した寺島の口から出たのは、こんな一言だった。

 「用意した題材は止めます」

 会場では、出席者の4分の1が寝ていた。少なくとも寺島には、そう見えた。プレゼン資料には目もくれず、普段から思っていることを話し始めた。

コメント11件コメント/レビュー

全国の多くの現地市場が似たような状況だったのです。寡占業者はかつては一時期大量の魚を扱い、地元に貢献した。だいたい80年前後まで。それから魚価が下がった。現地仲買は漁港で買って氷詰めして消費地市場へ送るが、それは委託販売。逆ざやが多発した。赤字を埋めようと量を扱ったり、無理して高値で競り落としたり、で、寡占業者は見る間に負債を抱え込む結果となった。漁協は取引量が多いので(手数料も多い)、売掛金の支払いが遅れても多めに見た。しかし、魚価は上がらず、仲買人らへの売掛金という不良資産が毎年積み上がっていった。右肩上がりの時代しかしらないイナカの漁協職員・組合長らの失敗とも言える。国の無策とも言える。そして合併でごまかそうというのが現在の漁協合併だ。この情況に勇気を持って自己改革をした1漁協があった、というのがこの話だ。悲惨な漁協が大多数で、漁業者自身がは消えつつあり、農業よりも漁業対策が急務だと思う。(2009/12/12)

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いただいたコメント

全国の多くの現地市場が似たような状況だったのです。寡占業者はかつては一時期大量の魚を扱い、地元に貢献した。だいたい80年前後まで。それから魚価が下がった。現地仲買は漁港で買って氷詰めして消費地市場へ送るが、それは委託販売。逆ざやが多発した。赤字を埋めようと量を扱ったり、無理して高値で競り落としたり、で、寡占業者は見る間に負債を抱え込む結果となった。漁協は取引量が多いので(手数料も多い)、売掛金の支払いが遅れても多めに見た。しかし、魚価は上がらず、仲買人らへの売掛金という不良資産が毎年積み上がっていった。右肩上がりの時代しかしらないイナカの漁協職員・組合長らの失敗とも言える。国の無策とも言える。そして合併でごまかそうというのが現在の漁協合併だ。この情況に勇気を持って自己改革をした1漁協があった、というのがこの話だ。悲惨な漁協が大多数で、漁業者自身がは消えつつあり、農業よりも漁業対策が急務だと思う。(2009/12/12)

途中から腑に落ちない感じだったのですが、投票してから判りました。TVで報道され、倒産した企業なのに匿名報道だからです。秘匿する理由がないのに情報を隠蔽するのは、官僚の常套手段ですよ。(2009/12/07)

茶飲みを投げつけるってところで笑いました。どこでもこんなものなんでしょうね。私も昔、製造業で改革プロジェクトをはじめた時に会議に出ない者の襟首を掴んで議場まで引きずって行った事があるので(実際は10メートル引きずった時点で観念して付いてきましたが。あ、走って逃げたやつを追いかけて強制連行したこともあったな)。その後、出席率が高い状態があたりまえになると欠席裁判制に切り替えました。出席しないとどんな不利な事を決められても従うしかないという状態に。不利ではあっても無理なことは決めなかったので誰も逆らえない状態を作りました。その後は仕事そのものの合理化を進めて負荷を減らしていった(これがそもそもの目的)ので、だいたい納得されて定着しました。改革と並行して転勤希望を出していたので改革が完成した時点で転勤して離れました。これは中々面白い仕事でした。(2009/12/03)

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