「先細る魚大国ニッポン」

闘いを忘れた漁業に、未来はない

大量効率化の誘惑と蹉跌を知る魚市場《後編》

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2009年12月9日(水)

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 福島県にある相馬双葉漁業協同組合(漁協)の本所部長、寺島英明。御年62歳。市場独占業者に荒らされて市場として機能しなくなっていた相馬原釜漁港を再興した立役者である(前編を参照)。

 寺島を訪ねたのは、10月下旬、金曜日の朝だった。この日、寺島はサンドバッグを30分間打ち、腕立てと鉄アレイをこなしてからシャワーを浴びて漁港に来たという。

 道理でテンションが高い。午前8時頃からずっと話し続けて、2時間を経過しても、まだまだ終わらない。寺島の漁業に対する思いの熱さが伝わってくる。

 「明日は土曜日でしょう。漁はお休みです。だから、仲買人は今日(金曜日)に競り落とした魚を止めるんです。見ていると、半分以上は、冷蔵庫に入れてしまうんです」

 魚を止める――。いったい、どういうことなのだろうか。

魚を安売りされるワケ

 「相馬原釜は、トロール船が日曜日に出て、月曜日に戻ってきます。いくら頑張ったって、月曜日に魚を築地市場には持っていけないわけです」

 トロール船とは、相馬原釜で30隻ほど稼働している大型の沖合底曳漁船のことだ。底曳き網で、ヒラメやカレイ、タコ、タラ、穴子、ズワイガニなどを大量に獲り、最終入港時間である午前11時を目指して漁港へ戻ってくる。それから競りが始まるのだから、月曜日の築地市場には届かない。

相馬原釜漁港の市場には、様々な種類の魚介類が揚がる
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 トロール船よりも近海を魚場とする漁船もある。約140隻ある7トン未満の小型漁船だ。とはいえ、深夜0時に漁港を出て、戻ってくるのは明け方。こちらも当然、月曜日の築地市場に間に合うはずがない。

 結局、金曜日の魚で対応することになる。「土曜日も出さず、日曜日も出さず、月曜日になってようやく仲買人は出してくる。その魚がスーパーマーケットに並ぶのは火曜日になります。結果的に、4日も5日も経った魚が一般消費者に届くわけです」。寺島は言う。

 これは何も相馬双葉だけの特異な話ではなく、当たり前のように全国の漁協で起こっていることだという。土日はほとんどの漁港が休みだ。その間は止められていた魚が、月曜日の築地市場で競られることになる。

市場に隣接する建物で、仲買人は競り落とした魚を発泡スチロールの箱に梱包している
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 「この辺りの消費者は、みんな事情を知っている。スーパーなんかは火曜日に、『火曜市! すべて99円!!』なんてやっているよね。でも、消費者に対していったん値段を下げたら、それで終わりです。そういうものだと思ってしまうから。だから、価格を維持していくための努力が非常に大切なんです」。寺島は、みんな努力をしていないと憤りを隠さない。

 日本人の魚離れは、こんなところにも問題がありそうだ。人間の舌は正直だ。グルメ評論家のように違いを詳細に解説できなくても、味は分かる。

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著者プロフィール

中西 未紀(なかにし・みき)

フリーライター。1979年神奈川県生まれ。お茶の水女子大学卒業後、出版社、編集プロダクションを経て現職。日経ビジネスオンラインのほか、雑誌など各媒体にてインタビュー記事を中心に活動。



このコラムについて

先細る魚大国ニッポン

日本の漁業が先細っている。漁業総生産量はピーク時の半分以下となり、漁師の数も減少傾向にある。魚は獲れず、後継者も不在――。それでも、スーパーマーケットには毎日パック詰めの魚がずらりと並び、回転寿司で当たり前のようにメニュー通りのネタが回る。こんな光景は、いつまで続くのだろうか。

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