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これはアフガン放棄の戦略だ

ベトナム戦争と酷似する大統領の政策判断

  • 鍛冶 俊樹

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2009年12月4日(金)

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 12月1日、バラク・オバマ米大統領がアフガニスタン戦争の新戦略を発表した。日本の一部報道では「アフガン撤退へ」との見出しが躍ったが、この場合、撤退という日本語は適切でない。

 というのも撤退には退却や敗退と同じように、任務を完遂できずに引き上げる意味があるからだ。オバマは演説の中では“come home”と言っており、米軍を帰国させると述べているのだ。

 自衛隊ではこうした場合、撤収と言う。これだと任務を終了して帰還する意味合いが含まれる。米大統領が米軍敗退のための戦略を発表するはずはないから、「アフガンからの米軍撤収への道筋を示した」と表現すべきだろう。

 ことほど左様に軍事用語の翻訳には難しいものがある。だが戦略の中味の評価となるともっと難しい。確かにオバマは撤収もしくは任務完遂の道筋を示したつもりでいる。

 だが中味を吟味すると、この道筋では任務を完遂することにならないことが明らかになる。任務の完遂どころではない。これはまさにアフガニスタン放棄の道筋としか思えない。「アフガン戦争敗退へ」と見出しを掲げるしかないような中味なのだ。

微妙な3万人の追加派兵

 米大統領は米軍の最高指揮官である。どこの国の最高指揮官だろうと自国の軍隊の勝利を願わないはずはない。その意味では戦略はすべて勝利のための戦略であり、軍隊の帰還は敗退ではなく凱旋でなくてはならない。当然、米国民もこの新戦略でそれが示されるものと期待した。だが、演説の中にそれはなかった。勝利という言葉さえなかったのだ。

 新戦略の骨子はアフガニスタンに3万人を追加派兵し、2011年7月には米軍の撤収を開始するというものだ。しかしそこには明確な目標が示されていない。アルカイダを追い込みタリバンの勢いを削ぐというだけで、ウサマ・ビン・ラーディンを逮捕すれば任務が終了なのか、タリバンを全滅させなければ任務が完結しないというのかが明確でない。

 3万人という数字も実に微妙な計算だ。そもそも現地駐留のマクリスタル司令官が求めたのは4万人増派だった。これは中規模程度の増派であり、小規模だと1万人、大規模なら8万人という3つのオプションが用意されていた。小規模ならウサマ逮捕に目標は限定されるし、大規模ならタリバン全滅を目指せる。中規模案は折衷案であり、大規模にも小規模にも変更可能な臨機応変の派兵案である。

 米軍中枢はオバマが大規模案を選択することを望んでいた。大は小を兼ねるの例え通り、大規模な兵力があれば、ウサマ逮捕もより容易になるからだ。しかしオバマの決断力のなさを見越して取り敢えず中規模案を勧め、しかる後に大規模案への変更を迫る腹積もりだったようだ。

 ところがオバマの選択は中規模案4万人マイナス1万人の3万人派兵だった。これは大規模案への変更を明確に拒否して見せた数字である。しかも小規模案への変更はあり得ることを示してもいる。事実ホワイトハウスでは3万人を3000人ずつ細切れにして順次派兵し、状況次第ではいつでも中止できるように計画しているという。小規模派兵で留まってしまう可能性はあるのだ。

 さらに言うなら、もともと中規模案はタリバンを全滅には追い込めない中途半端な兵員数だ。これで大規模案への変更がないとなれば、事実上小規模案を選択しているのとそれほど違わないのである。

 小規模案では精々ウサマ・ビン・ラーディンを逮捕できるくらいが関の山。ウサマを逮捕すればイスラム過激派への衝撃は確かにあるだろうが、限定的なものだろう。もはやウサマはテロの司令塔ではない。その権力はナンバー2やナンバー3に分散されており、仮に逮捕されても、それでアルカイダ全体が壊滅するかどうかも疑わしい。

 ましてタリバンが健在なままアフガンから米軍が去れば、カルザイ政権の崩壊はほぼ確実だ。1990年代にアフガン全土をタリバンが制圧したが、その時代に戻り、再びテロの巣窟となることは目に見えている。

判断材料は世論の動向?

 オバマ大統領は演説の中で、アフガン戦争がベトナム戦争とは違うと強調している。多数の国がアフガン派兵を合法と認めているとか、そもそも米国は直接攻撃を受けたのだとか違いを列挙して、増派の正当性を担保しようとしている。しかしこれはいわば法律論争であって、増派の正当性を証明できたとしても増派の成功を確保できることにはならない。

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