「ニュースを斬る」

事業仕分けで廃止になった「若者支援」

事業の恩恵を受けていたのは誰だったのか?

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2009年12月7日(月)

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 内閣府の行政刷新会議が行った「事業仕分け」には賛否両論あるが、仕分けの現場に足を運べば、今まで隠れていた問題が議論された1時間があった。予算編成に向け、仕分けの結論を巡って官僚や関連団体の攻防戦が始まっている。“劇場型”とも揶揄された事業仕分けだったが、それは報道の“見せ方”が劇場型だっただけではないのか。

 例えば、若者の雇用対策として合宿型のニート就労支援「若者自立塾」(若者職業的自立支援推進事業)がいったん廃止と判定されると、「若者を見捨てるのか」というような廃止に対する反発の声も上がったが、それは議論の中身が冷静に伝わっていないからだ。

 「鯛焼きで例えるなら、頭と尾っぽだけをとらえて、肝心のあんこの部分を伝えていない」と振り返るのは、第2ワーキング・グループ(WG)の仕分け人、海東英和・滋賀県高島市前市長だ。第2WGでは仕分けの前半戦、厚生労働省の事業をメーンに、就労支援関係や医療関係の事業について議論された。その中で、若者自立塾はなぜ廃止となったのか。

入塾者は定員の半分以下

 若者自立塾とは、教育訓練も受けず、就労することもできないニートなどの就労や進学などを支援する事業で、2005年度からスタートした。ニートは全国で60万人強と言われる。自立塾は合宿形式で集団生活を行い、生活訓練、就労体験などを通して社会人としての基本的能力を身につけ就労に結びつける。期間は原則、3カ月。

 厚生労働省から委託を受けた日本生産性本部(旧・社会経済生産性本部)が「若者自立支援中央センター」として、民間に事業を委託。2次委託先となるNPO法人(特定非営利活動法人)などの監査、業務指導、研修などを行っている。2次委託先は入塾実績に応じて「訓練等奨励金」を受け取る。

 2006年度、若者自立塾の実施団体は25カ所、入塾者は704人だったが、2008年度は実施団体は30カ所に増加したものの、入塾見込み(定員)1200人に対して、実際の入塾者は半分にも満たないわずか490人。入塾者1人当たりにかかった費用は2006年度の34万4000円から2008年度は44万6000円に増えた。それにもかかわらず、「卒塾後6カ月後の就労率」は2006年度の65.4%から2008年度は55.1%に低下した。

 財務省では、約64万人のニートの中で若者自立塾に参加した率が0.1%を対象とした事業となっていることや、ほかに通所型のニート支援事業となる「地域若者サポートステーション」(延べ来所者数20万2000人)もあるため、若者自立塾を別途行う必要性を疑問視した。

 仕分け人らがとりわけ疑問視したのは、国費を投入するだけの効果があったかということと、委託先やコストの合理性についてだった。

議論が繰り広げられた事業仕分けの会場(写真:小林 美希)

 菊田真紀子・衆議院議員の「若者の支援であるのに、なぜそのノウハウがない生産性本部が委託を受けているのか」との疑問に対し、厚労省は「入札で毎年募集している。日本生産性本部はキャリアコンサルタントの資格試験を実施しているのでノウハウがある」と答えた。それに対し、仕分け人は「ニートの環境とキャリアコンサルティングの関係に合理性がない。何も日本生産性本部を通さなくても、直接にNPO法人などに補助すればいいのではないか」と言及し、「利用者が少なすぎて、生産性本部にマネジメント能力があるとはいえない」と畳み掛けた。

 尾立源幸・参議院議員は「研修生1人当たり50万円ものコストをかけて就労率が55%では効果が薄いのではないか。1次委託の3億7500万円のうち業務管理費はいくらか」と、日本生産性本部が得ている間接費用について問いただすと、「3300万円が間接コスト」(厚労省)と答えた。さらに、公立病院改革懇談会座長だった東日本税理士法人の長隆氏は「管理費の中身はどうなっているのか。生産性本部の職員は何人分を日当いくらで計上しているのか、年に何日どんな仕事をしているのか」と経費計上の詳細について激しく追及した。

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著者プロフィール

小林 美希(こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト。1975年茨城県生まれ。明治学院大学中退、神戸大学法学部卒業。株式新聞社、毎日新聞社エコノミスト編集部で記者として働く。2007年2月よりフリーになり、若者の雇用、出産・育児と就業継続などのテーマに取り組む。主な著書に『ルポ 正社員になりたい ――娘・息子の悲惨な職場』(影書房)、『ルポ “正社員”の若者たち 就職氷河期世代を追う』(岩波書店)



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