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第3回 無理を承知の訳し方

なぜ公式通りに訳すと意味不明の文章になるのか

  • 山岡 洋一

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2009年12月17日(木)

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前回から読む)

 前回は「訳語の統一」、「原語と訳語の一対一対応」について触れた。今回はもうひとつの大きな問題として、後から前に訳す方法を取り上げたい。はじめに、簡単な例をあげる。英語を読まされるのはかなわないと思われるのであれば、英語の部分は飛ばして読んでいただきたい。まずは、中学1年の初めに学ぶ英語だ。

 I am a boy. わたしは少年です。

 ここでも後から前に訳す方法が使われている。英語では主語のつぎに動詞がくるのが普通だが、日本語では動詞は文の最後に置かれるのが普通だから、「わたしは・です・少年」の順番に書かれているものをひっくりかえして、「わたしは少年です」にしている。このセンテンスが少し複雑になるとどうなるだろう。

 I am a boy who lives in Yokohama. わたしは横浜に住む少年です。

 後から前に訳すというときに通常すぐに思い出すのは、このように関係代名詞が使われている場合だろう。これがもう一段複雑になるとどうなるか。

 I am a boy who lives in Yokohama, the second largest city in Japan.
 わたしは日本で2番目に大きな都市、横浜に住む少年です。

学校英語で教えられる「正しい」訳し方とは

 一番後から前に前にと訳していく。これが学校英語で教えられる「正しい」訳し方である。こう訳せば、満点がとれる。この方法を翻訳に使うとどうなるかをみてみよう。アメリカ独立宣言のうち、英国王の罪状を列挙した部分のひとつである。

 彼は、最も野蛮な時代にも殆んど比類のない全く文明国民の支配者に価しない残虐と不実との限りを尽くして既に始められた殺戮・荒廃及び暴政の諸行為の仕上げをするために、今、外国傭兵の大部隊を輸送中である。(宮田豊訳「アメリカ独立宣言」、大石義雄編『世界各国の憲法典』有信堂、昭和31年、1956年、25ページ)

 この訳文で意味を理解するのは絶望的だと思える。たとえば「殆んど比類のない」は、どこに続いているのだろう。「比類のない支配者」なのだろうか。「比類のない残虐と不実」なのだろうか。「比類のない殺戮・荒廃及び暴政」なのだろうか。「比類のない諸行為」なのだろうか。「比類のない外国傭兵」なのだろうか。

 原文は1776年に書かれており、230年以上前の文章なので、読むのに少し苦労する。しかし、前から順番に読んでいけば、それほど難しいわけではない。明快な文章なのだから。「アメリカ独立宣言」は、世界最強だったイギリス軍と戦うよう植民地の住民に訴える文書なので、意味不明のことが書かれているはずはないのだ。それを翻訳すると、意味不明に近い文章ができあがる。前から順番に理解していくように書かれた文章を後から前に訳していったからだ。原文はこうだ(18世紀後半の文章なので、いまの英語とは少し違うことがある。たとえば、compleatはcompleteの古い綴りだ)。

He is at this time transporting large Armies of foreign Mercenaries to compleat the works of death, desolation and tyranny, already begun with circumstances of Cruelty & perfidy scarcely paralleled in the most barbarous ages, and totally unworthy the Head of a civilized nation.

コメント8件コメント/レビュー

面白いコラムですよね。これから取り上げられる古典とはどのあたりなのでしょうか。読もうとして放り出した本がたくさんあるので、今後の連載に興味があります。ただ・・・ちゃんと文章を読まず、一部分だけ取り上げて鬼の首を取ったように文句言ってるコメントに「ハァ?」という印象を抱きました。(2009/12/21)

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いただいたコメント

面白いコラムですよね。これから取り上げられる古典とはどのあたりなのでしょうか。読もうとして放り出した本がたくさんあるので、今後の連載に興味があります。ただ・・・ちゃんと文章を読まず、一部分だけ取り上げて鬼の首を取ったように文句言ってるコメントに「ハァ?」という印象を抱きました。(2009/12/21)

例文で,後ろから訳す,のが難しさの理由だったとよくわかりました。私自身は,英語は英語,古文は古文,そのまま読んでしまいます。実は中国語もできるのですが,全部,頭のスイッチ切替なので翻訳の必要がありません。日本人の皆さんにはこういう考え方も参考にしてほしい。(2009/12/17)

彼は、今この瞬間にも、外国傭兵の大部隊を輸送中である、殺戮・荒廃及び暴政の諸行為の仕上げをするためである、残虐と不実との限りを尽くして既に始められた行為をである、その残虐と不実は、最も野蛮な時代にも殆んど比類がなく、全く文明国民の支配者に価しない。漢文と同様に、原文と、書き下し文(機械直訳)、解釈(それぞれの解釈者による相違を許す)の3つが要りますよね。後修飾は、適当に区切って、主語動詞補っちゃいますけど。(2009/12/17)

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