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都市住民の力を巻き込んで農地を守る

ニュータウンに生まれた障がい者の農園(その3)

2009年12月28日(月)

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 横浜市港北区と緑区を対象にした港北ニュータウン計画は、1点、全国のほかの計画と大きな違いを持っていた。経済成長真っただ中の1960年代にあったことが奇跡のようだが、スタート当初からそこでは対象地域内の農業再編をニュータウン開発の目的として数えていたのだ。

 『計画的都市農業への挑戦』(田代洋一編)によれば市農政局は当時、農業総合研究所に所属していた渡辺兵力氏をはじめ、多くの研究者を集め、都市農業問題研究会を1968年に結成させた。これは多摩ニュータウンの「酪農ビレッジ研究会」が酪農家からの働きかけで結成されたことと対照的だ。そうした研究会の報告書『都市農業の計画』は、横浜市が施策の対象として追求する「都市農業」の概念を整理体系づけ、具体的な自治体政策を提言していた。

 都市のスプロールが進むにつれ、市街地と農業地域は同心円状、つまり都市圏の外側に農業地帯が広がるという配置ではなくなり、農地は住宅地に囲まれて島状に点在することになる。都市農業問題研究会の委員たちは、こうして陸の孤島化された農地は補給路を断たれた孤島の軍隊のように、徐々に弱って消えてゆくだろうと考えた。

横浜市は努力が実を結ぶ

 『都市農業の計画』ではこうした滅びる運命にある都市内の農業を「経過的都市農業」と定義し、一方で計画的に都市利用をゾーニングし、積極的な行政投資をすることで都市開発と共存して持続し得る「計画的都市農業」と対置させた。そして計画的都市農業を実現するために、「農業専用地区」をニュータウン内に作り、一定のまとまりを持たせた農地に対して計画的な農地利用への誘導や消費地の中にある立地条件を生かした経営の指針作りなどの可能性を検討した。

 こうした報告書に基づいて横浜市では国政主導の農業振興地域制度に先駆けて農業専用地区制を敷き、港北ニュータウン計画の中でその実施を進めた。1968年に「港北ニュータウン農業対策要綱」が制定され、翌年には最初の農業専用地区が合計6地区、230ヘクタール制定された。農業専用地区内では開発区域との土地の交換分合・整備、農道や用排水路の整備など、公共性が高く、個別農家の力では実現不可能な基盤整備に関しては事業費全額を市が助成することにした。

 しかし、その直後年に国政レベルで都市計画法が施行され、1970年には横浜市でも区域区分がなされたため、ニュータウン内の開発区域と農業区域の中にそれぞれ市街化区域と市街化調整区域の線引きがなされることになる。

 その結果、両者の地価格差が急激に膨らみ、等価・等面積で開発区域と農業専用地区の土地交換を行い、まとまった農地を作ってゆく横浜市の計画は実現が極めて困難になった。実際、1970年に山林を含む20ヘクタールの丘陵地を切り拓いて集団的農地を成立させた新羽・大熊地区が等価・等面積で開発区域と土地交換ができた最初で最後の例となってしまった。

 こうして国の農業「振興」政策によって、自前の農業振興策が減速を強いられる結果になったが、それでも横浜市は健闘している。先の市街地区域と市街地調整区域の線引きでも、ほかの大都市に比べると調整区域に指定された面積の比率が非常に大きく、大規模開発の波にさらされていた山林やまとまった農地部分も調整区域に組み込むなど細かな配慮を示している。

 そして1971年には「ニュータウン農業対策要綱」を港北ニュータウン地域に限定せず、横浜市全域を対象とする「横浜市農業専用地区設定要項」に拡大する。ちなみに現在では市内27カ所、1033ヘクタールが農業専用地区に指定されている。横浜市の農業総生産額は約99億円で神奈川県内でトップクラス。野菜の自給率も約18%もあり、1960年代末から農業振興に力を入れてきた市政は確かな実を結んでいる。

*     *     *

 そんな横浜市では、渋沢の田園都市構想の直系として東急グループが手掛けた「多摩田園都市」もまた、変容を遂げていた。そこにも農地が多くある。農作業を主な活動とする社会福祉法人グリーンが作業所として成り立つのは、こうして農業振興に入れてきた横浜市ならでは、という面がある。

 そんな地の利を生かす形で、もう1つ、グリーン常務理事で施設長である石田周一氏は、3年前から新しい試みを始めた。

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