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「角」から見る日本・その2
「持たざる国」日本が、いま角栄から学べること

  • 山岡 淳一郎,山中 浩之

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2009年12月22日(火)

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田中角栄 封じられた資源戦略
山岡淳一郎 草思社

 歴史のひとつの転回点は、田中角栄の登場した73年前後にあったのではないか。その時代の課題は、いまだに引き継がれ、角栄の愛弟子、小沢一郎が民主党政権のプロデューサーとなった今、新たな解決策を求められている。短期連載「歴史を見る目のつくりかた」前編は、「角」の視点でニッポンの現代史を学ぼうという企画でお送りしています。

「『角』の視点で歴史を見る」参考図書が書店に並んでます

 参考図書満載ですすめていく本企画は、書店さんにもご協力を戴き、首都圏で「歴史を見る目のつくりかた」フェアが開催されています。有隣堂ヨドバシAkiba店を中心に、有隣堂主要店さん、フタバ図書TERA南砂町店さんなど、多くのお店が参加してくださいました。店舗によって開催期間や本の品揃えが異なります。書籍と店舗の一覧は、こちらからごらんください。

――「日本型」の利益再分配・福利厚生システムが始まった時期を担った首相、田中角栄にスポットを当てた『田中角栄 封じられた資源戦略』を上梓した山岡淳一郎さんに、お話をうかがっています。

山岡 独立国としての日本の急所は、エネルギー資源のほぼすべてを海外からの輸入に頼っていることです。石油、天然ガスにしろ、原子力燃料のウランにしろ、日本は「商社にまかせておけばなんとかなるだろう」という空気が蔓延しています。

 でも、エネルギー資源は「価格次第でどこからでも買える」単なる経済商品ではない。戦略商品であり、政治商品です。中国、ロシア、インドはもちろん、アフリカ、中南米、中東諸国、北朝鮮も含めて首脳外交で、エネルギー資源の争奪、上流開発にかかわる生臭い話を展開しています。

 たとえば、欧米先進国を中心とするIEA(国際エネルギー機関)は、この秋、中国、インド、ロシアの代表を閣僚理事会に招いて、エネルギー安全保障や気候変動問題への対応で彼らを陣営に引っ張り込もうとしましたが、中国をコントロールするのは至難の業ですね。コペンハーゲンでの「COP15」で、中国の影響力の強さを見せつけられましたね。スーダンが先進国批判を猛烈にくり広げましたが、背景には中国の存在があるとみて間違いない。かつてスーダンに拠点を置いていた欧米の石油企業は、この国にアルカイダの基地が90年代半ばまであった事実が判明して、撤退しました。その真空地帯に入ったのが中国、インド、マレーシアで、原油採掘権を継続しました。

 スーダンのダルフール地方では2003年から政府軍が支えるアラブ系民兵組織と、非アラブ系反乱軍が戦闘状態に入り、大量虐殺が行なわれています。石油利権と引き換えに中国はスーダン政府に大量の武器援助を行い、ダルフール紛争を解決する鍵を握っている、ともいわれています。

 エネルギー資源の獲得と地球温暖化問題への対応、そして軍事戦略は明らかに連携しています。

――日本同様「持たざる国」のフランスは、核・原子力開発を「国策」として官民混合システムで原子力技術を世界中に売り込んできました。「原子力は二酸化炭素を出さない」と、追い風を吹かせています。いまや核・原子力大国です。

山岡 青森県六ヶ所村には核燃サイクル施設がありますが、ここのフランスやスペイン出身の外国人研究者の子ども7人の授業を受け持つ民間団体に、年間約1億円が払われているんですが、ご存じですか?

――ほほう。

山岡 もちろん、授業料はタダです。来年3月完成予定の2階建て1260平米の校舎の建設費には約4億円が投じられるようです。これらは電源立地地域対策交付金でまかなわれます。で、これらの交付金は、もちろん事業仕分けでも減額されていません。ちなみに青森県の小中学生一人当たりの教育費は年間100万円前後だそうです。いかに日本がフランスを中心とする核燃サイクル技術に依存しているか、わかりますよね。

―― 国家と巨大企業が一体となって、エネルギー資源戦略を展開しているわけですね。

山岡 で、日本はどうなのでしょうか。「エネルギー資源の安定供給」のためには「供給源の多角化」と「自主開発」が不可欠です。しかし、先ほど申し上げたように、資源には経済だけでなく政治も軍事も絡んで、なかなか手を出せない。だからついつい商社におまかせになる。最近、外務省は三井物産、伊藤忠商事、三菱商事などのOBを中東やアフリカ、東ヨーロッパの国々の大使に起用していますが、ベースは「商売」ですよね。

―― その状況に戦後、初めて挑んだのが・・・ということですね。

山岡 ええ。総理大臣として資源の「川上を攻めろ」と突っ込んでいったのが、田中角栄です。

―― 川上というのは、資源国そのもののことですか。

山岡 資源国の「トップ」を攻めろ、ということですね。

 田中の発想は単純明快です。供給源を多くし、自主的に資源開発するには、首相の自分が相手の川上である首脳に直接交渉する、というものでした。英国の北海油田、ソ連のチュメニ油田、インドネシアの油田、そしてフランスの濃縮ウラン、オーストラリアとのウラン資源開発、ブラジルのアマゾン開発……すべて、自ら相手国のトップに交渉しました。

――当然、日本を「核の傘」のなかに入れているアメリカが面白いはずはありませんね。

山岡 アメリカは日米同盟で日本を「核の傘」の下に入れていますね。この現実は、原子力の産業利用にも大きな影響力を持っています。

 資源戦略は、「持つ国」から見た場合、自らの資源供給網の中にいかに他国を取り込むか、の争いになります。拙著『田中角栄 封じられた資源戦略―石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い』では、その熾烈な争いの中、「核の傘」の縛りから、経済的自立を求めて、一歩踏み出そうとした田中の動きを軸にして、世界のエネルギー資源を牛耳る「資源帝国」が、どのような力学で争奪戦をくり広げたかを再現しました。

―― それは現在も続いているんですか。

山岡 といいますか、現代の世界のエネルギー資源相関図は、この時代にほぼできあがったといえるでしょう。その後、冷戦崩壊で世界マーケットが爆発的に拡大し、エネルギー資源メジャーの再編・統合が進み、中国、ロシア、インド、ブラジルなど新興国の国営企業の台頭が著しいのですが、やはり大きな力を握っているのは欧米の多国籍企業でしょう。

 米国で言えば、たとえばオバマ大統領の「核兵器廃絶」演説。あれをありがたがるのは自由ですが、原子力に関しては、先進的動燃炉やユッカマウンテン処分場計画などの予算はカットしているものの、全体的には推進のアクセルを踏むだろう、とみられています。

 政治や外交の専門家は、あまり指摘しませんが、核廃絶を訴えたプラハ演説で、オバマは「各国が核の平和利用の権利を享受できるように『国際核燃料銀行(an international nuclear fuel bank))といった民生分野の原子力協力の新しい枠組みを構築すべき」と語りました。国際核燃料銀行は、IAEA(国際原子力機関)の管理下で、各国に濃縮や再処理技術を移転させない代わりに供給を保証するシステム。ウラン資源や濃縮、再処理技術を一元的にコントロールするしくみです。

――それはもろに「傘」ですね。

山岡 そうです。つまり、核不拡散の大義の裏で、濃縮ウランや再処理技術を先進国に集中する。その中心には、もちろんアメリカが座ろう、というわけです。

 だからイランは、オバマがいかに甘い言葉で囁きかけてこようが、ウラン濃縮施設を手放そうとはしない。じつは、アメリカの国際核燃料銀行構想は、オバマの専売特許ではありません。 

 1977年に発足したカーター政権で、国際核燃銀行の構想は示されています。言い出したのはロックフェラー財団の理事だといわれています。ロックフェラー財閥は世界最大のエネルギー企業エクソンモービルを持っていますね。国際核燃料銀行は、ロックフェラー財閥の宿願なのでしょう。

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