「エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな」

ミスにつけ込んだ中国の勝利

欧州“敗北”が映す排出量取引「G2」の台頭

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2009年12月24日(木)

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 19日深夜2時から開かれた、欧州連合(EU)首脳の記者会見。壇上に揃って登った欧州理事会議長を務めるスウェーデンのフレドリック・ラインフェルト首相と、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長は、交渉結果に不満をぶちまけた。

深夜2時、会見に挑む欧州理事会議長のスウェーデンのラインフェルト首相(左)と欧州委員会のバローゾ委員長
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 「正直、パーフェクトな合意とは言い難い」(ラインフェルト首相)
 「ないよりはましだが、熱望していたものとはかけ離れている」(バローゾ委員長)

 それは、見方を変えればEUの敗北宣言ともとれる会見だった。ポスト京都の新たな枠組み作りを目指したCOP15(第15回気候変動枠組み条約締結国会議)で、EUは思惑通りの指導力を発揮できなかったことを、自ら認めたのである。

「2050年までに排出量半減」も削除される想定外

 EUは、京都議定書の下で、温暖化ガスの削減目標を定めた国内法を整備している唯一の国・地域である。

 2005年にEU域内に導入した排出量取引は急成長を遂げ、バローゾ委員長も当初は、「EUの排出量取引制度は世界の炭素市場のバックボーンになっている」と発言するなど、温暖化対策の先駆者として交渉をリードすることに自信を表明していた。

 だが、結果はEUが望んだ合意とはほど遠い内容となった。

 法的拘束力のある合意に達しないのは開催前から確実視されていた。とはいえ、削減目標が全く明記されず、しかも、合意書の草案段階にあった2050年まで世界全体の排出量を半減するという文言まで削除される事態は、明らかに想定外だったと言ってよい。

 COP15の開催地であるデンマークは、EU加盟国の中でも特に環境意識の高いことでも知られる。電力の約2割を風力発電で賄い、世界最大の風力発電機メーカーもある。

 デンマークがCOP15を成功させ、京都議定書に代わる新たな枠組み作りを主導したという実績を残せれば、温暖化対策のリーダーとしてのEUの地位はさらに高まったかもしれない。

首脳級会合の直前に議長を辞任する異常事態

 だが、中国をはじめとする発展途上国は、議長国デンマークの議事進行の不手際に付け込み、EUを中心とする先進国側の主張に激しく反発。議論は停滞し、デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相が首脳級会合の直前に議長を辞任するという事態に発展した。

 後を引き継いだラスムセン首相も事態を収拾できず、結局、膠着状態を打開するきっかけを作ったのは米オバマ大統領を中心とする主要国首脳会談だった。

デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相(中央)がCOP15議長を辞任する直前に開催した全体会議
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 「議長は額に汗するほど、会議の混乱に動揺していた。京都議定書でEUが果たした役割とは大違いだ」。EUの首脳会見に出席していた、あるデンマークのベテラン記者は、吐き捨てるように悔しがった。

京都議定書ではEUが議論をリード

 確かに、京都議定書を採択した1997年当時、EUは交渉をリードした。交渉は事実上、日米欧の3極を軸に進み、その中でもEUの存在感は突出していた。

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著者プロフィール

大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年、デジタルカメラやDVDなどの黎明期に月刊誌「日経マルチメディア」の記者となる。同誌はインターネット・ブームを追い風に「日経ネットビジネス」へと雑誌名を変更し、ネット関連企業の取材に重点をシフトするも、ITバブル崩壊であえなく“休刊”。その後は「日経ビジネス」の記者として、主に家電業界を担当しながら企業経営を中心に取材。2008年9月から、ロンドン支局特派員として欧州・アフリカ・中東・ロシアを活動範囲に業種・業界を問わず取材中。日経ビジネスオンラインでコラム「ロンドン万華鏡」を執筆している。



このコラムについて

エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな

鳩山由紀夫首相は就任直後の国連演説で「CO2排出量の1990年比25%削減」を明言、その達成目標を2020年とした。環境技術のリーダーとして、世界のトップを走り続けることは日本にとって悪いことではない。しかし、省エネが進んだ日本が破格のコストをかけることに経済、政治、技術的な合理性はあるのか。目標達成のため“削減後進国”に支払うことになりそうな排出権の対価を含む国民負担に日本経済は耐えられるのか。多面的な議論を通じて「エコロジー=正義」という単純な構図を検証する。

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