デンマーク・コペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は、参加192カ国がそれぞれの国益を激しくぶつけ合う戦場と化した。
あえて勝ち負けを判定するなら「バラク・オバマ米大統領」あるいは「米国」の優勢勝ちだったと言える。少なくとも米国の視点からはそうだ。
場違いな笑みが漏れる米国代表団の会見場
振り返ってみると、米国には「ポスト京都議定書」と呼べるような拘束力のある世界合意を目指そうという強い意思は初めからなかった。米国内の政治・経済が、新たな義務を負うことになる国際合意の締結を許す状況にないからだ。
12月17日木曜日。会議終了前日だというのに何ひとつ成果が得られず、会場には焦りと苛立ちに満ちた重苦しい空気が漂う。
ところが米国の民主党下院議員が開いた記者会見では、悲壮感がないどころか、時折、笑みさえ漏れる余裕の雰囲気。一種異様な光景である。関係者を紹介し始めたナンシー・ペロシ下院議長の無邪気な笑顔は、どう見ても場違いだ。
ところが、その作り笑顔をさっと消し去るとペロシ議長は真顔でこう言った。
「我々は気候変動問題を、輸入原油への依存度を下げる国家安全保障の観点と経済的利益の問題として考えている。一言で言えば、“ジョブ(雇用創出)”だ。新しい雇用を生むグリーン革命を起こさなければならない。我々米国代表団はそのためにここに来た」
つまり、地球を温暖化から救うことも大切だが、米国内の雇用創出が期待できるからこそ米国議会はこの問題に取り組んでいるのだと本音で言い切ったのだ。
少し本論から外れるが、我が国代表の鳩山由紀夫首相は会議最終日の12月18日(実際には19日まで延長される)の首脳級会合における演説で、「美しい地球を守るためには、何とか交渉を成功に導かなければならない、我々の子孫のために、それぞれの国のエゴを捨てて協力するという姿勢が非常に大事だと思って、コペンハーゲンに参りました」と各国代表に“思い”を込めて語りかけた。
だが、そうした友愛精神はどぎつい利害を隠すカモフラージュとしてならともかく、何百回唱えたとしても国際交渉で実を取る戦略としては全く役にも立たない。国家は友愛精神(だけ)では動かないのだ。米国の政治家は綺麗事も言うが、核心のところでは率直、実利的で、分かりやすい。
米国の気候変動・エネルギー法案は可決の見込みなし
本論に戻ろう。ペロシ会見に流れていたマッタリとした、まるで他人事のような冷めた空気が流れるのも無理はなかった。途上国への資金援助であろうと排出規制や排出権取引制度の導入であろうと国内の法制度整備が不可欠だが、米議会は関連法案をいまだに成立させられていないのである。
米下院は今年6月、気候変動・エネルギー法案(通称、ワックスマン・マーキー法案)を通過させている。地球温暖化ガスの中長期の排出量削減目標を掲げ、キャップ&トレード型の排出量取引制度を導入する方針も盛り込まれている。
だが、この法案が上院をすんなり通過する可能性はかなり低い。
米代表団に加わったジョン・ケリー上院外交委員会委員長(民主党)は、12月16日の記者会見で「コペンハーゲンでの成功が、2010年の米議会での法案審議に極めて重要な意味を持つ」と他人事のような言葉を残して帰国した。焦眉の急の医療保険改革法案の審議に戻るためだ。
12月18日に会見した下院共和党議員団は、あからさまにワックスマン・マーキー法案の上院通過の見込みはないと断言し、ヒラリー・クリントン国務長官が提示した途上国への1000億ドル規模の資金援助案に対しても否定的な見方を示した。
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