「若きキャリア官僚たちの秋2009」

2009年、政権交代と脱官僚の現実

「政治主導」のお題目に、翻弄される現場

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2009年12月28日(月)

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 政権交代から100日経った。2009年9月にスタートした民主党政権は「脱官僚」「政治主導」を大きく掲げ、国家戦略室や行政刷新会議を新設、特に事業仕分け風景は注目を浴びた。

 新政権が「脱官僚、政治主導」とあえて声高に言うのは、それまでがいかに官僚主導だったかということの裏返しにほかならない。簡単に言うと、政権交代前は官僚が企画してできあがった法案を国会で通すのが政治家の仕事であり、政治家は実務も責任も負わなかった、ということだ。

 さて、現状はどうなったのか――。政府を国家の経営陣に例えると、企業で言う経営資源である従業員(ヒト)、商品(モノ)、資本(カネ)とは、政治行政では官僚(ヒト)、政策/行政サービス(モノ)、予算(カネ)に当たる。すなわち政権が「脱官僚」「官僚はバカ」というのは、企業の経営者が「脱従業員」「従業員はバカ」と言っているのに等しい。ある総務官僚は「経営陣として入ってきて、経営方針が『従業員との戦いです』と言っているのがおかしいですね。委縮してる役人は多いです」と苦笑した。

 役人から見て「脱官僚」「政治主導」になったのか数人に聞いたところ、全員が「脱官僚はしていないが、政治主導にはなった」と言う。国会での質疑も「事務方である官僚が、最後まで野党の矢面に立っていたが、今は一番の責任が政治家にあるから、その辺りは楽になった」「政治家が政策の中身に興味を持ってきて、口出しが多くなったが、責任も取るというのが政治主導の現れ」という。

 つまり、政治主導とは、政治家の裁量と責任が重くなったことである。この場合の政治家とは、政務三役(大臣・副大臣・政務官)を指す。

官僚から見た政治主導

 政治主導に関して、官僚の意見は様々だ。法案の作成に関しては、「政治家は内容が分かっていないから説明をするのが面倒だが、下の役職でも早めに彼ら(政務三役)を巻き込めば、これまで横の調整(省庁間の調整)に相当な時間がかかった法案がトップダウンという強力な力で進めやすくなる」「真面目にやりたい役人にとっては可能性がある」と言う肯定的な若手官僚もいれば、「政治家は仕事の経緯も何も分かっていない。官僚上がりをたくさん入れて、法案作成のための官僚の業務を知っている民主党議員が相当いないと、難しいでしょうね」「政治主導なんて長続きするわけがない。脱官僚と言うからには、次の国会で審議官・次官クラスの答弁を使えなくなるだろう。官僚の答弁なしに国会の質疑応答が進むわけがない」と懐疑的な官僚もいる。

 確かに、国会答弁の作成業務を官僚にさせないわけにはいかないだろう。法案の質疑応答については、質問する側の当時の野党側も質問内容の作成をほとんど官僚に任せていたし、質疑応答の応答も多くを局次長以上の官僚が担っていた。

 結論を言うと、「脱官僚」は無理であるというのが筆者の認識である。その象徴は、過日、ニュースになった平野博文官房長官の首相答弁の話だ。鳩山由紀夫総理や平野官房長官らの質疑について、各省庁に「答弁メモ」を作成するよう官邸が指示していたことが内部文書で分かった。

 これに対して、翌日、平野官房長官は官僚が悪しき慣行に従って勝手にしたもので、「指示はしていない」と断言した。

 ところが、その翌日の夜、官邸関係の官僚たちとたまたま会食の機会があって、平野官房長官の話題になった。その席では「あれは指示があった。ニュースを見て、みんながお前か? と言い合っていた」とはっきり言っていた。指示は首相がそのまま読んでもいいように答弁を作成するよう要求し、「模範回答」作りを官僚に丸投げする内容となったという。

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著者プロフィール

佐藤 ゆみ(さとう・ゆみ)

佐藤 ゆみ政治アナリスト、マナー・礼法講師。札幌市出身。米国ルイス&クラーク大学留学、政治学・国際関係を学ぶ。帰国後、総合広告代理店にプランナーとして勤務。その後、衆議院選に出馬。政策担当秘書として国会議員の各種政策立案に携わる。現在、INTEGRACE(インテグレース)代表。企業・個人を対象に印象マネジメント、営業・接遇マナー、時事研修を実施中。ハリウッドビューティサロン「美人講座」講師。政治を切り口にしたコンサルティング・研修には定評がある。ウェブサイト「人を動かすマナーの法則」連載。



このコラムについて

若きキャリア官僚たちの秋2009

税金のムダ遣い、縦割り行政の弊害、天下りの横行・・・。様々な批判が浴びせられる官僚たち。政権を担う民主党はマニフェストで「国家公務員の総人件費を2割削減する」と掲げた。日本の高度成長を支えた官僚の後輩たちは、どんな現状認識を抱いているのか。そして、国家運営に対する志は残っているのか。生の声から探っていく。

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