「シアワセのものさし」

高知の成功を全国各地に伝えたい

【外伝その2】地域再生のヒント溢れる「四万十ドラマ」のいま

バックナンバー

2010年1月20日(水)

1/5ページ

印刷ページ

 「外伝 シアワセのものさし」。2回目の今回は高知県在住のデザイナー、梅原真が魂を入れた四万十ドラマの今を描く。「コミュニティビジネスの成功例」として取り上げられることが増えた四万十ドラマ。その成長の背景には、同社のアイデンティティを構築した梅原の存在が大きかった。

 昨年10月に15周年を迎えた四万十ドラマは自身の経験をほかの地域に伝えるプロジェクトを始めている。産業育成や雇用創出、地域活性化など似たような課題を抱えている地域は少なくない。そういった地域に、四万十ドラマのノウハウを移転することが目的だ。全国に飛び出した四万十ドラマの今を追う。

(日経ビジネス オンライン、篠原匡)

 四万十川から北に約1600キロ、本州最北端の町に2人の男がいた。畦地履正と迫田司。四万十川流域でコミュニティビジネスを手がける四万十ドラマの2人である。訪れた先は「大間のマグロ」で名高い大間町。下北半島の北の端にある漁師町である。四万十流域から大間までの所要時間は約12時間。それでも足を運んだのは、過去15年、四万十ドラマが営々と培ったノウハウをかの地に伝えるためだ。

本州最北の地、大間崎からは遠く北海道の大地が望める(著者撮影)
画像のクリックで拡大表示

マグロの町、大間に降り立った2人の男

 四万十川の中流域、旧十和村(現四万十町)を拠点とする四万十ドラマ。道の駅「四万十とおわ」の運営、オリジナル商品の開発、物品販売、観光交流事業など、四万十川の素材を活かしつつ、四万十川に負担をかけないモノ作りを展開している。

 これまでに、風呂場の芳香剤、「四万十ひのき風呂」や地元の栗を使った「四万十栗の渋皮煮」、「かおり米 十和錦」、「しまんと緑茶」、「四万十の地紅茶」など、独自商品を数多く送りだした。売上高は2億8000万円(2009年3月期)。地元の素材を使った商品開発や地域の産業創造などで高い評価を受けている。

四万十ドラマはコミュニティビジネスで日本を代表する存在になった(著者撮影)
画像のクリックで拡大表示

 第6話で書いたように、四万十ドラマが成長するきっかけを与えたのは高知県在住のデザイナー、梅原真である。創業間もない頃に、四万十ドラマの存在意義を明確に定義づけたこと。そして、梅原が商品開発に深く関与したこと。それが、ぶれることなく成長した一番の要因だった。

 もっとも、梅原が植え付けたアイデンティティを育てたのは畦地と迫田の2人である。代表取締役として全国を飛び回る畦地、デザイナーとして商品企画やパッケージデザインを受け持つ迫田。この2人がいなければ、ここまでの飛躍はなかっただろう。梅原をエンジンとすれば、この2人は車の両輪である。

畦地履正は梅原真が植えつけたアイデンティティを育てた(写真:宮嶋康彦)
画像のクリックで拡大表示

 梅原の薫陶を受けた2人は現在、四万十ドラマの日々の経営だけでなく、自分たちが培ったノウハウをほかの地域に伝承するというプロジェクトを進めている。その対象は、青森県大間町、石川県七尾市、三重県熊野市。経済産業省が2008年度から始めている「地域新事業移転促進事業(ノウハウ移転・支援事業)」の一環である。

 産業育成や雇用創出、地域活性化など課題を抱えている地域は数多い。その中でも、四万十ドラマのように、知恵を絞って地域の活力を生み出している企業は全国に存在している。そういった企業や団体のノウハウをほかの地域に移転していく――。それが、プロジェクトの目的だ。

 確かに、地域資源の発掘や商品開発、販路開拓、ファンクラブの組織化など、四万十ドラマには豊かな経験がある。その経験をほかの地域に伝えていくのは無駄ではない。四万十ドラマは今、四万十流域を飛び出して、地域の中核となりうる企業や団体とワークショップを重ねている。

ハイテンションな「まちおこしゲリラ」

 12月2日、大間町で開かれたワークショップもその1つだった。

 2008年10月以降、四万十ドラマは大間町の「LLPあおぞらB組」と6回にわたってワークショップを開いている。「四万十−大間のバクダン商品開発プロジェクト」と銘打たれたワークショップ。これまでに、オリジナル商品の開発や販路開拓、マーケティング体制の構築を議論してきた。

 「大間のマグロ」と言えば、高級マグロの代名詞。強烈なブランドが既にある。ただ、マグロ丼や切り身のように、素材そのものを活用したものが大半で、全国ブランドのポテンシャルを生かし切っているとは言えない。気づかずに埋もれているだけで、マグロのほかにも特産品となりうる素材はあるだろう。

200キロを超えるマグロがボンボン上がる(著者撮影)
画像のクリックで拡大表示

 地域の産業育成や雇用創出を考えれば、「大間のマグロ」以外の商品が必要ではないか――。そんな問題意識を持った地元の団体、あおぞらB組は2年前、四万十ドラマのノウハウ移転事業に手を挙げた。四万十ドラマの畦地とあおぞら組の組長、島康子が顔見知りだったことも理由の1つだった。

 それ以来、四万十ドラマとあおぞら組は大間の新しい特産品を作るべく、議論を重ねてきた。その過程では、新しい商品も生まれつつある。四万十ドラマは何を伝えたのか。これから、それを明らかにしていくが、その前にあおぞらB組について語らねばなるまい。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント2 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内