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正社員より派遣、派遣より独立

非正規雇用の29歳男性のケース

  • 小林 美希

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2010年1月18日(月)

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 「資金を貯めていつか独立する」

 社会に出て以来、非正規雇用が続いた石田健司さん(仮名、29歳)の結論だ。

 都内在住の健司さんは、高校2年生で中途退学。2年ほどフリーター生活を送った。コンビニエンスストアや飲食店のアルバイトをかけもちして、月30万円の収入を得ていた。

高校中退でも道は開けたが・・・

 20歳から即配サービス会社で、自転車で配達をするメッセンジャーとして働いていた。メッセンジャーを選んだのは、「フリーター時代には、狭い店舗の中で働いていたため、屋根のない外に出て働きたいという思いが募ったから」という。都内や近郊を毎日100キロメートルは走行した。時にはバイクで青森県や長野県に行くこともあったが、配達先の人との出会いが面白く、健司さんはメッセンジャーの仕事が天職と感じていた。

 運営会社とは業務請負契約が結ばれていた。日々、仕事の依頼が携帯電話のメールに入り、荷物の内容と預かり先や届け先などが送られてくる。その仕事ができる場合にメールで返事をして仕事を得るのだが、「断ることが多いと、『当てにならない』となってしまい、良い仕事が回されなくなる」と、健司さんはどんな仕事も引き受けていった。

 運搬距離によって料金(売り上げ)が変わり、そこに歩合がつくため、健司さんは午前9時から午後6時までをコアタイムに、入れられるだけ仕事を入れた。常時、月50万円を売り上げ、その中から約20万円が健司さんの収入となった。

 雨の日にタイヤがスリップして転倒し、血まみれになりながら配達したこともあった。傷が治らないうちにまた自転車に乗って膝を曲げるため、かさぶたが剥がれて、いつまでも完治しないこともあった。長時間自転車に乗っていると、首の筋も痛めた。

 気力が必要な仕事だと感じたが、雨の日こそ稼ぎ時と思い、積極的に仕事を入れた。辛いことばかりではない。テレビ局にニュースの素材を運んだりすると、自分も報道機関の一部になった気がして、やりがいを感じた。

 走行距離が多いほど歩合が高くなり、月100万円以上を売り上げたこともあった。高校を中退しても、頑張れば道は開けると感じた。

 2004年の夏、24歳で知人とバイク便会社を立ち上げた。銀行や消費者金融など、借りられるところすべてを当たって100万円を調達し、都内に営業所を借り、求人誌に広告を出しライダーを集め、集まった人材の研修も行った。節約のため、家賃5万1000円の東京・池袋のシェアハウスで暮らしたが、家に帰る間も惜しんで、営業所で寝泊りしながら働いた。しかし、思うように売り上げは伸びず、2年で営業所は畳んだ。

 2006年の夏、健司さんは知人を介して大手コンピューターメーカーで仕事をすることになった。その会社は、バイク便ライダーをプリンターの修理にも活用しようと「カスタマーエンジニア」を養成するため、ライダーを集めていた。

 プリンターの修理は急を要することが多く、部品を持ったバイク便ライダーに修理の知識があれば、ビジネスチャンスが広がるというわけだ。健司さんは、大手コンピューターメーカーの社員IDカードを持たされ、社内では非正社員を指す「サービスパートナー」と呼ばれ、本社でプリンターのネットワークについて研修を2カ月受けた。時給は1300~1500円で「新しい技術も身につくし、悪くはない条件だ」と期待を膨らませた。

3重派遣の立場で働く

 もっとも健司さん自身の所属は、大手コンピューターメーカーとは資本関係のない企業との業務請負で、間に何社も経由した3重派遣だったため、大元のコンピューター会社からは、「ちょっとA社の人」とか「B社の人だよね」と、いろいろな社名で呼ばれた。「これって、違法なんじゃないだろうか。“偽装請負”なんじゃないか」と思いながら健司さんは働いた。

 健司さんは業務請負契約を結びながら、実際には相手企業の社員から指揮命令を受けて働いていたため、偽装請負に当たり、企業は違法行為をしていたことになる。

 実際にはA社と業務請負契約をしながら、書類上はB社、C社を経由して大手コンピューターメーカーに“派遣”されていたのだ。労働者を派遣する場合、派遣元と派遣先の間にさらに業者が仲介することは違法で、2重の違法状態の中で健司さんは働かされていたことになる。健司さんが上司に問うと「IT(情報技術)業界でこうしたことは日常茶飯事」とつき返された。

 その後、交際していた女性との結婚が視野に入り、恋人からの要望もあって健司さんは、正社員への道を探った。友人の紹介で、都内の従業員8人程度の製本会社に2008年9月に採用された。3カ月の試用期間が過ぎれば正社員になれる。

コメント2件コメント/レビュー

日本はもともと被雇用者より、零細事業者や自営業者が圧倒的に多く、「独立」という選択肢に新しさはありません。しかし、その零細事業者や自営業者は、結局、小泉・竹中路線の規制緩和による大規模事業者の地方進出で、壊滅的な打撃を受け、地域共同体の互助システムも破壊されたわけです。ミクロレベルの議論だけで、「独立」という自助努力が解決策であるかのような当コラムの論旨は、このような経緯をふまえておらず、自己矛盾をきたしているように感じます。(2010/01/18)

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日本はもともと被雇用者より、零細事業者や自営業者が圧倒的に多く、「独立」という選択肢に新しさはありません。しかし、その零細事業者や自営業者は、結局、小泉・竹中路線の規制緩和による大規模事業者の地方進出で、壊滅的な打撃を受け、地域共同体の互助システムも破壊されたわけです。ミクロレベルの議論だけで、「独立」という自助努力が解決策であるかのような当コラムの論旨は、このような経緯をふまえておらず、自己矛盾をきたしているように感じます。(2010/01/18)

これだけ出来る人なら独立して、個人で業務請負した方が良い値段になるでしょう。プラス何人か業務請負契約をしておいて、大きな仕事を請けると言うことも出来るでしょう。残念ながら人から仕事を回してもらうというのは正社員でも日正社員でも仕事が無くなっていくものです。正社員なら、窓際で給与を確保できますが、派遣は窓際がありません。それなら自ら仕事を取りにいく請負会社を作ったほうがいいでしょうね。こういう前向きな人が若者に多ければ、ちょっとうれしくなりますね。(2010/01/18)

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