「時事深層」

【隠れた世界企業】手作りで「生音」を再現

スタックス(埼玉県三芳町、ヘッドホンの製造・販売)

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2010年1月21日(木)

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世界のオーディオマニアが惚れたヘッドホンがある。静電気で膜を振動させる技術でオーケストラの生音を再現する。倒産を乗り越え、総勢12人の会社が世界唯一の手作りの技を守っている。

 ジャズやクラシック界のピアニストの巨匠として知られるキース・ジャレットはある雑誌の取材で、自慢のオーディオコレクションとして「ヘッドホンはスタックス」と答えている。

 オーディオマニアたちを唸らせる音響機器は、米マッキントッシュなど欧米メーカーが主流の業界だ。強豪がひしめく中にあって、世界のトップアーティストが惚れ込み、音のプロたちがこぞって使うヘッドホン。その生みの親は、埼玉県三芳町にあるスタックスという零細企業だ。

 価格は売れ筋製品でも、専用のアンプとセットで10万円近くする。高級品であれば、ヘッドホンだけで21万円もする代物だ。月間の販売台数は1000台で推移している。

独特の四角いフォルムのイヤースピーカーを持つ目黒陽造社長(本社工場にて) (写真:古浦 敏行)

 スタックスの何が優れているのか。オーディオ評論家の角田郁雄氏は「極めて生音に近い音を再現できる点にある」と話す。それを支えるのは、世界で1社と言われる、コンデンサー型ヘッドホンを作る技術だ。

 四角い特徴的なフォルムを持つスタックスのヘッドホン。同社は「イヤースピーカー」と呼んでいる。一般的に流通しているダイナミック型と呼ばれるヘッドホンと、スタックスが製造するコンデンサー型と呼ばれるものでは、そもそもの構造が違う。ダイナミック型ヘッドフォンは、音を出す振動膜を磁石やコイルで震わせる。

静電気で音を発生

 一方、スタックスの発音体は穴が開いた2枚の固定電極板の間に振動膜を張った、3層の構造になっている。振動膜は厚さ1.35マイクロメートル(マイクロは100万分の1)という極めて薄いフィルムを使用。振動膜を挟んで固定電極板に高い電圧をかける。電気信号によって電圧が変化することで静電気が発生し、振動膜が一方の電極版へと引っ張られる。この原理を用いて振動膜を震わせて、音を出す。

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著者プロフィール

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に配属。翌年日経ビジネスアソシエ編集部へ移り、若手ビジネスパーソン向け経済情報を取材・執筆する。2007年から再び日経ビジネス編集部へ。重工、中堅・中小企業を担当。近年は第一次産業や人材業界に関する取材にも注力する。趣味は幼少期から続く宝塚歌劇鑑賞(月2回の観劇はマスト)と、ハマってから6年目になる阿波踊り。今年も徳島と東京・高円寺で踊る予定。



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