日本航空(JAL)がついに会社更生法の適用を申請して事実上、経営破綻した。運航を停止させることなく手続きを進める日本初の本格的な事前調整(プレパッケージ)型法的整理は、専門家が「法律的に画期的」(片山英二管財人)と呼ぶ大胆かつ柔軟な試み。従来の「倒産」イメージを払拭することにもなりそうだ。
しかし、その分、事業再生に不確実性が伴う恐れもある。当面の大きな課題は、大幅な人員整理が実行できるかだ。
「債権者平等原則」が外れた意味
「東京地裁民事8部に柔軟な運用を理解してもらえた」
企業再生支援機構のお目付役である企業再生支援委員長を務める瀬戸英雄弁護士(管財人・職務執行者にも就任)は1月19日の記者会見で、まずは今回の法律的意義を強調した。瀬戸弁護士は過去にマイカルの管財人を務め、2009年2月に起きたSFCG(旧商工ファンド)の倒産では創業者の悪質な資産隠しを暴き、民事再生から破産手続きへの移行を主導した。いまや「倒産弁護士」の世界では事業再生ADR(裁判外紛争解決)の第一人者である松嶋英機弁護士とともにスター的存在だ。
その瀬戸弁護士が手放しで高く自己評価するJALの会社更生手続きで最大の特徴は、「債権者平等原則」が外れた点にある。通例、法的整理においては、労働債権や少額債権を除けば、一般商取引債権も金融債権も一律に債権放棄を求められる。債権者が平等に扱われることは、法的整理の公平・公正・透明性の大きな拠り所でもあった。裁判所の強力な権限の下、徹底的な財務リストラが実行されることで更生会社の再建確実性も大きく高められていたのである。
「飛行機を飛ばし続けながら再生する」(前原誠司国土交通大臣)ことが大前提となった今回の法的整理では、4761億円に上る一般商取引債権が全額保護される。それにより、取引先が損失を被ることを避け、機内食の仕入れといった取引を従前通り行うことが可能になるというわけだ。
企業再生支援機構の説明によれば、保護される債権のうちには代理店とのキックバック契約まで含まれるという。また、マイレージも保護することで、顧客離れを食い止めようとの狙いもある。
そうした中、注目すべきは同じ金融債権の中でも「債権者平等原則」が外れたことだ。
企業再生支援機構の資産査定により、JALは8676億円の実質債務超過にあるとされた(2010年3月末見込み)。これを解消するため必要とされる債権放棄額は7300億円にも上る。
筆者が入手した企業再生支援機構の事業再生計画書によれば、債権放棄の内訳は金融機関32社からの借入金3585億円、社債557億円、年金基金(解散による掛け金請求権)2119億円、貨物撤退に伴うリース解約違約金389億円、燃油ヘッジなどデリバティブ債務648億円となっている。担保で保全されていない非カバー債権について一律83%がカットされる計算だ。ただし、年金については、任意交渉で現役・OBから減額改定の同意が得られる方向にあるため、8月までに裁判所から認可を受ける予定の最終的な更生計画では変更される可能性が高い。
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