「ニュースを斬る」

政界再編への期待感と軌を同じくする「自衛隊活用」の議論

民主党の奇妙な沈黙と柔軟な対応を読み解く

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2010年1月25日(月)

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 「自衛隊はなかなか良くやっていますね」。ある国際機関の職員から、こんな声をかけられた。

 中米カリブ海で起きたハイチ大地震への緊急支援のことだ。折しも航空自衛隊が日米共同訓練で米アリゾナ州に展開中だった。そのC-130輸送機を急遽、米フロリダ州に回し日本の医療チームと日本政府があらかじめ保管していた救援物資を積みハイチに輸送、また米国人の被災者を米国に輸送した。

 各国がいち早く軍隊をハイチに派遣したのに対し、日本政府の初動の遅れは明らかだった。が、航空自衛隊がアリゾナにいなかったら、対応はさらに遅れていただろう。

 連立政権の一角を自衛隊の活用に消極的な社民党や民主党左派が占めている。そんな政権に対し、自衛隊の実力を見せつけた意味は大きなものがあろう。

発言がブレない防衛大臣

 北澤俊美防衛大臣の防衛省内での評判は悪くない。就任当初、この人事を不安視する向きは確かにあった。参議院の防衛族なのだが、ほとんど無名の存在と言ってよく、防衛省はもちろん防衛記者会ですらどんな人物か把握していなかった。民主党の掲げる脱官僚、政治主導の方針の下、防衛省叩き、自衛隊苛めの風潮に与するのではないかと危惧されたのも当然だろう。

 だが最初のブリーフィングから背広組も制服組も評価を改め始めている。無口ながら部下の説明に謙虚に耳を傾け、記者会見でも軽率な発言をしない。防衛省・自衛隊の立場をよく理解しており、部下の努力を無にするような発言は極力慎んでいる様子がうかがえる。当たり前のことのようだが、官僚叩きが恒常化している民主党政権下では有り難い閣僚である。

 当然、連立パートナーの社民党内での評判は芳しくない。沖縄の米軍普天間基地移設問題では社民党はグアムへの全面移設を主張しているが、北澤防衛大臣はグアムを視察して否定的な見解を表明した。社民党の抗議を受けて発言を修正したが、北澤防衛大臣が防衛省の従来の立場を貫こうとしているのは明らかだ。この問題で発言が二転三転した鳩山由紀夫首相、岡田克也外務大臣に比べるとブレがないのである。

 1月12日、この北澤防衛大臣がまたしても社民党を刺激する発言をした。防衛産業の関係者の集まる新年会で、武器輸出3原則の見直しについて言及したのである。首相は「(防衛大臣は)口が軽すぎた」とたしなめ、社民党は「理解不能」と反発してみせた。が、この発言は改めて北澤防衛大臣が防衛問題に対して確固とした意見を持っていることを明確に示したと言える。

 というのも、武器輸出3原則の見直しの必要性はもはや防衛関係者にとっては常識であり、急務でもあるからだ。

 なぜ武器輸出3原則の見直しが必要なのか? 実は3原則なるものが既に崩壊してしまっているからだ。

 1967年、佐藤栄作内閣が表明した武器輸出3原則は3つの地域に武器を輸出しないとするものだった。1つ目は共産国、2つ目は国連により武器輸出を禁じられている国、3つ目は紛争当事国または紛争の恐れのある国である。

 だがこの3原則が米ソ冷戦真っ盛りの頃、表明された事を思い起こしてもらいたい。当時、共産国の中心といえば、ソ連だった。だが現在、ソ連はない。この3原則の言う「共産国」に旧ソ連のロシアをはじめとする国々は該当するのだろうか? 旧ソ連が該当するかどうか不明の原則など、その意義の大半を喪失してしまっていると言ってよかろう。

 3番目の紛争当事国というのも問題だ。米国は現在アフガン・イラク戦争を遂行している以上、紛争当事国ということになる。大体、米国は常に戦争の一端を担っているような国だが、日本が最大の同盟国に武器輸出できないとなれば同盟関係は危機に陥るだろう。

 現に米国向けについては1980年代、対米技術供与に始まって2000年代のミサイル防衛の共同開発・生産に至るまで武器輸出3原則の例外化が繰り返し図られている。同盟国である以上、当然の措置だが、同時にそれは紛争当事国を支援しないという原則を維持できない事を示している。

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著者プロフィール

鍛冶 俊樹(かじ・としき)

軍事ジャーナリスト。1957年、広島県生まれ。83年に埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊。11年間の勤務を経て一等空尉にて退職。95年「日本の安全保障の現在と未来」で第1回読売論壇新人賞佳作に入選。主な著書に『エシュロンと情報戦争』『戦争の常識』(いずれも文藝春秋)



このコラムについて

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