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検察の「暴発」はあるのか(下)

郷原信郎が検察と政治の関係を考える

  • 郷原 信郎

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2010年2月3日(水)

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 検察庁法14条但書による法務大臣の検事総長に対する指揮権は、行政権に属する検察の権限行使に対する唯一の民主的コントロールの手段として規定されたものだが、造船疑獄での犬養法務大臣の指揮権発動が、国民の多くに、「政治の圧力」が「検察の正義」の行く手を阻んだ事例のように認識されたことで、それ以降、検察の正義は、政治が介入してはならない「神聖不可侵なもの」のように扱われることとなり、指揮権は、事実上、「封印」された形になった。

 しかし、「『法務大臣の指揮権』を巡る思考停止からの脱却を」で詳しく述べたように、実は、この事件における指揮権発動は、捜査に行き詰まった検察側が「名誉ある撤退」をするために、自ら吉田茂首相に指揮権発動を持ちかけた「策略」だった。そのことは、元共同通信記者の渡邉文幸氏の著書『指揮権発動―造船疑獄と戦後検察の確立』(信山社出版)で、事件当時法務省刑事局長だった井本台吉氏の証言などを基に明らかにされているほか、新聞等でも関係者の同様の証言が取り上げられており、ほぼ定説となっている。

 今回の事件で、検察が、小沢民主党幹事長の刑事責任追及の動きを見せた場合には、造船疑獄事件における当時の佐藤自由党幹事長の逮捕をめぐる法務大臣指揮権と同様の構図が再現されることになる。

 両者に共通するのは、検察捜査に無理があること、そして、一方で、政治状況にも不安定な面があり、検察の権限行使によって政権自体が壊滅的なダメージを受けかねないことである。造船疑獄事件での指揮権発動は、吉田内閣に対する国民の厳しい批判を巻き起こし、吉田首相は退陣に追い込まれ、それが保守合同の実現、「55年体制」の確立につながった。

指揮権発動という選択肢はあるか

 今回の事件についても、これまで述べてきたように、石川議員の逮捕事実自体にも問題があり、小沢幹事長に対する刑事責任追及は常識的にはあり得ないが、もし、検察が、あえて、それを行おうとしてきた場合、民主党政権の側には法務大臣の指揮権発動が一つの選択肢となる。しかし、その発動の仕方を誤れば、吉田内閣と同様に、鳩山首相は退陣に追い込まれ、民主党の分裂など、政治の枠組みが大きく変わることになりかねない。

 このような場合の法務大臣の指揮権発動に関しては、造船疑獄の教訓が最大限に活用されなければならない。そこで、最も重要なことは、事件の事実関係、証拠関係の十分な検討の上で法務大臣としての判断を下すことである。造船疑獄事件においては、「重要法案の審議」への「政治的配慮」だけが指揮権発動の理由とされ、佐藤幹事長に対する容疑事実の内容には言及されなかった。それが、政治的圧力が検察の正義の行く手を阻んだように誤解される原因になった。

 法務大臣が指揮権の発動を検討するに当たって、その前提となる事実関係、証拠関係について検察当局から報告を求めるのは当然のことである。検察の権限行使を差し止めるのであれば、まず、事実関係、証拠関係が権限行使の十分な根拠となり得るものか否かを判断する必要がある。

コメント54件コメント/レビュー

企業のコンプライアンス問題について、郷原氏の本質を突いた発言にいつも「なるほど」と、納得をしていたのですが、鳩山・小沢問題についての発言には、違和感を覚えておりました。問題が、「検察の捜査と起訴」という氏の専門分野であったことが、「これは無理筋では?」との基本論調となり、それを民主党やマスコミ側が「待ってました」と積極的に取り上げ、深入りせざるのを得なかったのでは、と私は見ていました。先日のTV番組で、宗像氏から、「あなたの発言にはバイアスがあるから」と、以後の論議を拒否されてしまったのも、当然に思えました。小沢氏が「不起訴」となったのですから、「検察論議」は終わりにして、郷原氏の神髄である本質を切る姿勢(と信じています)を取り戻し、鳩山・小沢氏が、政治家として、コンプライアンスを果たしているかどうかを論じていただきたいと思います。国会議員は、ある意味一部上場企業の社長です。社長が会社の経理の根幹に関わる部分を誰かに任せっきりで、「知らなかった」ですむのでしょうか? また、経理担当が実態とかけ離れた決算報告書を作成し、公表して糾弾されると、「本来は、訂正ですむこと」と社長が公言して良いのでしょうか? 社長がそう言うなら、経理担当はそう言うつもりで決算報告書を作りますよね。鳩山商会は、国民に幸福を売ってその売り上げで成り立っている(政治家はそういうものだと思います)と公表されていたのに、実はお母さんのお金を食いつぶしていただけだった。民間企業なら、どちらも当然「上場廃止」となるべきことがらだと思います。(2010/02/05)

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企業のコンプライアンス問題について、郷原氏の本質を突いた発言にいつも「なるほど」と、納得をしていたのですが、鳩山・小沢問題についての発言には、違和感を覚えておりました。問題が、「検察の捜査と起訴」という氏の専門分野であったことが、「これは無理筋では?」との基本論調となり、それを民主党やマスコミ側が「待ってました」と積極的に取り上げ、深入りせざるのを得なかったのでは、と私は見ていました。先日のTV番組で、宗像氏から、「あなたの発言にはバイアスがあるから」と、以後の論議を拒否されてしまったのも、当然に思えました。小沢氏が「不起訴」となったのですから、「検察論議」は終わりにして、郷原氏の神髄である本質を切る姿勢(と信じています)を取り戻し、鳩山・小沢氏が、政治家として、コンプライアンスを果たしているかどうかを論じていただきたいと思います。国会議員は、ある意味一部上場企業の社長です。社長が会社の経理の根幹に関わる部分を誰かに任せっきりで、「知らなかった」ですむのでしょうか? また、経理担当が実態とかけ離れた決算報告書を作成し、公表して糾弾されると、「本来は、訂正ですむこと」と社長が公言して良いのでしょうか? 社長がそう言うなら、経理担当はそう言うつもりで決算報告書を作りますよね。鳩山商会は、国民に幸福を売ってその売り上げで成り立っている(政治家はそういうものだと思います)と公表されていたのに、実はお母さんのお金を食いつぶしていただけだった。民間企業なら、どちらも当然「上場廃止」となるべきことがらだと思います。(2010/02/05)

▽郷原氏の主張の根幹は「検察権力は不当に政治に介入してはならない」というものであろう。まさに正論であり、同意するものである。しかし、私は、郷原氏の陸山会をめぐる論説には違和感を覚えてきた。▽郷原氏は、「事務的ミスによる不記載・誤記載」で「悪質性は低い」にもかかわらず政治家を逮捕することは不当であり、検察の政治介入であるという主張をしている。▽しかし、融資の担保となった定期預金の名義を小沢氏とせずに陸山会としたことを事務的ミスとして挙げざるを得ないところに郷原氏の論の限界がある。何故に小沢氏名義の預金としなかったか(できなかったか)ということが虚偽記載の本質であり、郷原氏は本質をはぐらかし事後的に弁護しているにすぎないのである。▽郷原氏は政治資金規正法違反を頑なに形式犯とみているが、私は、同法の改正経緯等から考えて実質犯であると考える。同法の目的は「政治資金の収支の公開により…政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与すること」と規定されている。虚偽記載は、国民による政治活動の監視を困難にし、内容によっては民主政治をゆがめるものである。であるならば、ある金の流れを隠蔽するような虚偽記載は悪質と言わざるをえないであろう。(2010/02/05)

結局不起訴になりましたね。ただテレビ報道では起訴事実の悪徳性についてはほとんど報道されないばかりか、起訴=有罪、不起訴=有罪とはいえないだけで怪しい。という論調が気になります。日本では起訴後の有罪率が非常に高いからだろうとは思いますが次はこのあたりを掘り下げてほしいです。どちらの味方ということはありませんが、裁判は公正であるべきで、推定有罪ということはあってはならないと思います。(2010/02/04)

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