「ニュースを斬る」

民主党「質問王」のカネに処分、金融庁の“掃討作戦”

金融自由化で横行する悪質業者に監視を強める

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2010年2月3日(水)

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 とうとう現職国会議員が代表を務める会社まで処分対象に――。このところ、金融商品取引業者に対する登録取り消しなど厳しい行政処分が相次いでいる。一方で、行政訴訟を起こして当局に徹底抗戦を挑む業者まで出現。金融自由化の副作用とも言える現象だが、金融庁は悪質業者に対する破産申し立てという強権まで導入する構えだ。

 1月15日、「エル・エヌ・シー」なる東京都中央区の金融商品取引業者が関東財務局から業務停止3カ月の処分を受けた。資格もないのに、中国の未公開株などへの投資を謳って、顧客に対して取引を勧誘し、資金を預かっていたのだ。旧投資顧問業法(現金融商品取引法)に明らかに違反する行為だった。

 一般には全く無名の業者だが、驚くことに同社の代表取締役は現職の民主党国会議員である糸川正晃氏だ。糸川議員と言えば、弱冠35歳ながら少し前まで論客で知られた若手議員のホープ格。2005年9月の「郵政選挙」として話題になった衆議院選で国民新党比例代表北陸信越ブロックから立候補して初当選。昨年8月の総選挙では民主党に移り、2回目の当選を果たした。

 糸川議員は国会における最多質問回数記録を打ち立て、「国会の質問王」との異名もとる。2006年2月には東京・南青山の権利関係が複雑なことで有名な土地に関して衆院予算委員会で質問。このことが利害関係者の怒りを誘い、糸川議員は地元・福井市内の飲食店で脅迫行為を受けるなどした。これについては翌年2月になって刑事事件化、警視庁組織犯罪対策4課が中堅ゼネコン、平和奥田の関係者を名乗る人物らを逮捕している。

複数の顧客がクレーム、裁判沙汰に

 今回、処分を受けたエル・エヌ・シーは糸川氏が慶應義塾大学卒業翌年の2001年2月に26歳の若さで設立した会社。目的は「フィナンシャルプランニング業務」などとされ、金融商品取引業者に登録。関東財務局への直近の報告では約20人の顧客を相手に投資助言業務などを行っていたとされる。

 実は、関東財務局が処分の端緒としたのは、同社の顧客だった横浜市内の男性が起こした民事訴訟だった。

 裁判記録によると、エル・エヌ・シーは2004年当時、中国・上海のカラオケクラブ「蝶恋花(ディーレンファー)」への投資を顧客に対して勧誘していた。募集要項を見ると、社債は1年もので年利が12%、募集金額は1300万円。同じく株式は毎月2%の最低配当が保証されるとし、1株100万円で28株、計2800万円が募集された。どういうわけか、払込金は会社名義ではなく、新生銀行本店に開設された糸川氏名義の口座に入金する形だった。

 この話はしばらくしてトラブルとなる。元利金や社債券が交付されていないとして、複数の顧客がエル・エヌ・シーにクレームを入れたのだ。これを受け、2005年2月には「投資家会議」が持たれた。その議事録を読むと、糸川氏は弁明に終始したようだ。「外貨持ち出しの許可が出なかった」「『私がそこまで理解していなかった』のも事実です」「次に許可なく外貨持ち出しが発覚すれば、ディーレンファー自体も営業停止となる」など、言い訳めいた言葉が並んでいる。

 国会議員当選直後、糸川氏は顧客宛てに通知文を送っている。そこでは、「今回衆議院議員になりましたが、エル・エヌ・シーの社長は今後も辞めません。これは党も了解していることです。また、田村先生(筆者注・故田村秀昭参議院議員)にも中国でトラブルになっている事がある旨を伝えてあり、早急に解決しろと言われております」とされ、「今年中には解決するためにあらゆる手立てを使って解決します」との約束で結ばれている。

 こうした弁明にも関わらず、顧客の不満が解消されることはその後もなかった。そこで昨年10月、業を煮やした横浜市内の男性が裁判に訴えたわけである。これに対して糸川氏側は、配当金を支払っており、社債や株式の取得に関する書類も交付している、と反論している。裁判は現在も東京地裁で係争中であり、どちらの言い分がどれだけ正しいかは司法判断を待つしかない。

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著者プロフィール

高橋 篤史(たかはし・あつし)

ジャーナリスト。1968年愛知県生まれ。93年早稲田大学教育学部卒業。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て、2009年よりフリーランスのジャーナリスト。著書に『ドキュメント ゼネコン自壊』『粉飾の論理』(いずれも東洋経済新報社)がある。



このコラムについて

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