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検察の「暴発」はあるのか(上)

郷原信郎が読み解く陸山会政治資金問題の本質

  • 郷原 信郎

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2010年2月2日(火)

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 昨年10月以降、新聞等でたびたび報道されてきた小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の不動産取得をめぐる政治資金問題は、1月13日に同会の事務所の捜索等の強制捜査、15日には、小沢氏の元秘書で同会の会計担当者だった石川知裕衆議院議員ら3名が逮捕されるなど、年明けから東京地検特捜部の捜査の動きがにわかに本格化し、23日には、小沢氏本人の事情聴取が行われた。

 昨年9月の政権交代後初めての通常国会をめぐる政局を大きく揺るがしてきたこの問題も、2月4日の石川議員らの勾留満期という大きな節目を迎える。報道されているように、検察が小沢氏の再聴取を見送る方針だとすれば、捜査は最終局面に入ったと言えよう。

 しかし、検察の捜査が順調に進んでいるとは言い難い。通常国会の3日前の夜に突然逮捕された石川氏の逮捕容疑の政治資金規正法違反事件は果たして現職の国会議員を起訴できるだけの事実なのか。小沢氏自身の逮捕または在宅起訴はあり得るのか。今回の捜査と処分が今後の政権にどのような影響を与えるのか。一方で、極めて重大な政治的影響を与えた検察捜査の結果が予想に反するものとなった場合に、検察の組織は今後どうなるのか。現時点までに報道等で明らかになっている事実を基に考えてみることとしたい。

未成熟な政治資金の会計処理

 まず、今回の問題を考える上で認識すべき根本的問題として、政治資金の収支の公開に関する会計処理が、企業会計や税会計などとは異なり、その基本原則すら確立されておらず会計処理の実務が未成熟で、資金管理団体の銀行口座の膨大な数の入出金のうち、どの範囲のものを政治資金収支報告書に記載すべきかについて明確なルールができていないという実情がある。

 政治資金収支報告書に記載が求められているのは、政治団体の銀行口座、現金の入出金すべてではない。例えば、総務省のQ&Aでも述べられているように、政治団体の職員が経費の立替え払いを行って後日精算したような場合は、職員と政治団体との入出金を記載する必要はなく、政治団体が直接支払ったような処理を行うことになる。

 政治資金規正法が「政治資金の収支の公開」を求める趣旨・目的は、政治活動の資金が、どのような個人、企業・団体から提供されているのか、政治資金がどのような用途に支出されているのか、について国民に正確な情報を開示し、その情報に基づいて国民が有権者として主体的な政治選択を行うことであり、収支報告書の作成・提出はそのために行われるものだ。

 今回、問題とされている不動産購入をめぐる政治資金収支報告書の記載について、マスコミ報道は、陸山会の口座のすべての入出金が収支報告書に記載されるべきで、それが一つでも異なっていると、すべて不記載ないし虚偽記入になるとの考え方を前提にしているように思われるが、それは政治資金規正法についての基本的理解を欠くものだ。

 通常国会の3日前に逮捕された石川議員の逮捕・勾留事実は、陸山会の平成16年分の政治資金収支報告書の「収入総額」を4億円過少に、「支出総額」を3億5200万円過少に記入した虚偽記入の事実である。

 本来であれば、政治資金規正法で政治家を逮捕するのであれば、記載されるべきであったのに記載されていなかった収入・支出を具体的に特定するのが当然であろう。ところが、石川議員の逮捕事実は、全体として収入総額・支出総額が過少だったという虚偽記入の事実であり、政治資金収支報告書にどのような事項を記載しなかったのか、どのように記載すべきであったのかは、逮捕事実で特定されておらず、逮捕時の検察側の説明でも明確にされなかった。脱税で言えば、どのような収入を隠したのか、どのような支出を架空に計上したのかが明らかにされないまま、収入の合計金額を少なく申告した、ということだけで逮捕されたようなものだ。

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