「時事深層」

ようやく「普通の不況」

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2010年2月10日(水)

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日本経済は新興国向けの輸出に支えられ、3・四半期連続のプラス成長が確実になった。しかし生産は2002年の景気の「谷」とほぼ同水準。デフレ・賃金減と不安要因はまだ多い。政権は経済政策の「出口論」には及び腰。追加の経済対策も現実味を帯びてくる。

 2009年10〜12月期は事実上、約3年ぶりの高成長となったようだ。1月29日に経済産業省が2009年12月の鉱工業生産指数を発表したことを受け、内閣府が2月15日に発表する2009年10〜12月期のGDP(国内総生産)を民間エコノミストが試算したところ、昨年末にかけての日本経済は近年まれに見るほど高い数字になり得るという。

 試算には幅があるが、前期比年率で見た2009年10〜12月期の実質GDPはやや低めに見積もった農林中金総合研究所でも2.3%増。高く予測したBNPパリバ証券は5.5%増。うるう年による日数増があった2008年1〜3月期を除けば、2007年1〜3月期(6.8%増)以来の高成長となる。

ほとんど輸出の伸びだけ

鉱工業生産指数の推移(2005年=100)

 マネックス証券の村上尚己チーフ・エコノミストによると、この高成長は「輸出の伸びだけでほとんど説明できる」。しかもアジア向けに依存した輸出増だ。財務省の貿易統計によると、地域別に見た2009年12月の輸出額は、中国向けの前年同月比42.8%増などが目立ち、アジア向け全体で31.1%増。米国向けが7.6%減り、西欧向けも3.9%増にとどまったのとは対照的だ。

 こうした輸出増を背景に、エコノミストの間でほぼ一致した見方になっているのが、「輸出増の恩恵が製造業の一部に及び、設備投資が底入れしてきた」(シティグループ証券の村嶋帰一エコノミスト)との見立てだ。GDPベースの設備投資は2009年7〜9月期まで6・四半期続けて前期比マイナスとなり、直近の5・四半期は年率で2ケタの減少という悲惨な状態にあったが、さすがに10〜12月期はプラスに転じたという見方が有力だ。

 しかし、企業経営者や消費者の実感とはかなりズレがある。

デフレ再来、企業収益蝕む

 「構造改革をもう一度やらないといけないだろう」

 1月29日。2009年10〜12月期の連結業績を発表した東芝の村岡富美雄副社長は厳しい表情でこう語った。その対象はパソコン事業だ。

 パソコン市場は昨年秋に米マイクロソフトが発売した新型OS(基本ソフト)「ウィンドウズ7」が需要の起爆剤となったが、「ネットブック」と呼ばれる低価格パソコンの普及で価格下落のスピードは増した。電子情報技術産業協会がまとめた2009年のパソコン国内出荷台数は前年比6.2%減だが、金額ベースでは21.4%も減っている。

 東芝のパソコン事業は昨年10〜12月期の営業損益が35億円の赤字(前年同期は5億円の黒字)に転落。2010年3月期通期の見通しも従来の150億円の黒字から、100億円の赤字に修正せざるを得なくなった。

 東芝は日本経済がデフレに陥った2003年にもパソコン事業の赤字に苦しんだ。当時は「プラットフォーム」と呼ぶ製品の基本設計の統合を進め、組み立ての外部委託も加速。黒字体質に戻すことに成功した。

 その強くなったはずのパソコン事業が再びデフレの波に洗われている。当時のような構造改革を再び実施する必要に迫られているのだ。

 新興国需要は確かに日本経済を押し上げている。それが「二番底」の回避につながるとの見方も増えつつある。しかし、新興国の恩恵を直接受けるのは輸出依存度の高い一部の企業にとどまり、回復の実感は伝わりにくい。輸出増が企業業績を幅広く好転させ、賃金の増加を通じて個人消費が回復するという通常の景気回復期と比べると、まだ入り口にたどり着いた程度だ。

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著者プロフィール

加藤 修平(かとう・しゅうへい)

日経ビジネス記者。日本経済新聞社に入社後、大阪経済部、東京産業部、東京経済部を経て2009年4月より日経ビジネス記者。



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