脳神経外科手術用の顕微鏡で世界の5割以上のシェアを握る。陰で支えるのが天体観測で培った高度な光学技術。宇宙から医療、さらには太陽熱のエネルギー利用まで。新規分野の開拓は止まらない。
「この機械で何十万人もの命を救う手伝いができた」。三鷹光器の中村勝重社長は、機械を操作しながらこう語る。同社は医療用機器や天体機器を開発・販売する。脳神経外科手術用顕微鏡は世界で半分以上のシェアを持つ。
脳外科手術は一歩間違えれば患者の体に麻痺などが残る難易度の高い手術だ。命を取り留めて病気部分を取り除くだけでも手術としては成功とされる。だが中村社長はそれでは満足しない。「手術を受けた患者が麻痺で動けない状態ではなく、日常生活に戻れるかが大事」とさらに高い目標を掲げる。
ガンを光らせ残さず摘出
それを実現するのが三鷹光器が開発した、腫瘍部分がモニター上で光って見える外科手術用顕微鏡だ。取り残すと転移の可能性があるガンの位置を目で確認できる。

ガンの中には、周囲にしみ込むように広がり、境界が不鮮明なやっかいなタイプがある。こうしたガンの摘出は非常に難しい。取り残しによる転移を防ぐには大きめに摘出するしかないため患者に負担がかかる。ガンが視認できればこの問題を解消できる。
ガンが光って見えるのは腫瘍に集まる性質を持つタラポルフィンナトリウムという物質を利用しているため。664ナノメートル(ナノは10億分の1)の波長の光を当てると、672ナノメートルの波長で蛍光する性質を持つ。664ナノの波長の光をカットするフィルターを開発して顕微鏡カメラに取りつけることで腫瘍だけが光って見えるようにした。
原理は単純だが技術は高度だ。タラポルフィンナトリウムが発する蛍光量は照射した光の1000分の1というわずかなもの。8ナノメートルという微小な差の波長の光を正確に遮断しなければ、照射した光の中で蛍光が紛れてしまい認知は不可能だ。
昨年4月に開発した最新機はさらに進化を遂げた。従来は光ったガンはモニターでなければ見られなかったが、医者がレンズを覗いたままで確認できる。レンズは両眼それぞれに対応したものが用意されているので、3D(3次元)の鮮明な映像を使って手術ができるのだ。最大拡大倍率は従来の12倍から50倍に高めており、細胞レベルで光っているかが判別できるという。
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