「トヨタの危機」

伸び切っていた兵站線

「急成長」と「自前主義」がその事態を招いた

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2010年2月15日(月)

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※日経ビジネス2月15日号緊急特集「トヨタの危機」の記事の一部です。

 トヨタ自動車が品質問題で大きく揺れている。米欧中でのリコール(回収・無償修理)や自主回収で、延べ1000万台もの改修を余儀なくされたばかりか、米工場では一時、主力車種の生産を停止する事態となった。さらに昨年発売したハイブリッド車「プリウス」でも、リコールに追い込まれている。

 トヨタの対応は後手に回り、国内外で批判の声が広がるばかり。米国では議会がトヨタ幹部を公聴会に召喚するまで騒動は拡大した。「品質」大国ニッポンの代表、トヨタはなぜつまずいたのか。

 「展示車を見て『これが“あの”プリウスね』と言う来店客もいる。販売は非常に難しくなった」

 首都圏にあるトヨタ自動車系販売会社の幹部は顔を歪める。エコカーの先駆けとして称賛を浴びてきたハイブリッド車「プリウス」。昨年5月に発売した新型車は、制御ソフトの問題から、ある特定の条件になるとブレーキが瞬間的に利かなくなることが明らかになり、2月9日にはリコール(回収・無償修理)を余儀なくされた。

 昨年8月、米国で高級車「レクサスES350」のアクセルペダルがフロアマットに引っかかったことが原因と見られる死亡事故が発生。それをきっかけに注目が集まった一連の品質問題は、ついにトヨタの象徴であるプリウスに及んだ。販社幹部は続ける。「(トヨタの)豊田章男社長にはもっと早く解決策を発表してほしかった」。

 米国から欧州、中国に拡大し、日本にも波及した品質問題に対して、豊田社長が初めて公式にメッセージを発したのは2月5日金曜日のこと。

 午後9時という異例の時刻に始まった記者会見は国内はもちろん、海外でも注目を集めた。「英語でメッセージを」という海外メディアの注文に、「Please believe me(私を信じてください)」と答えた様子が欧米の主要メディアで繰り返し伝えられた。

 だが、プリウスのブレーキ問題への具体的な対処方法は、その会見では示されないまま。トヨタの問題対応は、会見で社長が繰り返したような「お客様第一」とは距離がある印象を消費者に与え、リコールの決断は4日後の2月9日に持ち越された。

 品質への疑念を払拭するため社長が頭を下げる。似た光景は実は4年ほど前にもあった。

 2006年7月20日、前任の渡辺捷昭社長(現副会長)が品質問題について記者会見で陳謝している。「ハイラックスサーフ」の欠陥を認識しながらリコールなどの改善措置を怠り、5人が負傷する事故が発生した件についてだ。

 ハンドル操作をタイヤに伝える部品の強度不足が判明したのに、改善措置を取らなかったことが問われた。幹部3人が業務上過失傷害の疑いで書類送検され(後に不起訴)、会社も国土交通省から行政処分を受けている。

品質管理体制を強化したが…

 その反省を踏まえ、トヨタは品質改善・リコールの体制を強化してきた。リコール検討会の開催基準を明文化したほか、関連部署の人員を増やした。さらに「TQ-NET」と呼ぶ品質管理の情報システムを改良している。当時、2人いた品質管理担当副社長の1人はほかならぬ豊田章男氏だった。

 不祥事を受けて改善したはずの対策が、なぜ後手に回ったのか。品質問題を手がけてきた元役員は話す。

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著者プロフィール

細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)

日経BP社入社後、経済誌「日経ビジネス」を振り出しに、建築誌「日経アーキテクチュア」、日本経済新聞証券部(株式相場担当)で記者活動に従事。「日経ビジネス」では主に自動車、流通、商社などの各業界を担当し、現在、米国特派員として、ニューヨークに駐在している。



このコラムについて

トヨタの危機

 トヨタ自動車が品質問題で大きく揺れている。米欧中でのリコール(回収・無償修理)や自主回収で、延べ1000万台もの改修を余儀なくされたばかりか、米工場では一時、主力車種の生産を停止する事態となった。さらに昨年発売したハイブリッド車「プリウス」でも、リコールに追い込まれている。
 トヨタの対応は後手に回り、国内外で批判の声が広がるばかり。米国では議会がトヨタ幹部を公聴会に召喚するまで騒動は拡大した。「品質」大国ニッポンの代表、トヨタはなぜつまずいたのか。

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