「ニュースを斬る」

元会長逮捕のニイウスコー、架空取引のからくり

問われる「監査法人」の責任と抑止力

バックナンバー

2010年2月15日(月)

1/3ページ

印刷ページ

 2008年4月に倒産したIT(情報技術)関連企業、ニイウスコーを舞台とする粉飾決算が長きにわたった内偵捜査の末、ようやく刑事事件化した。2月11日、証券取引法(現金融商品取引法)違反の容疑で、横浜地検特別刑事部は同社の末貞郁夫元会長ら旧経営陣2人を逮捕した。

 ここ数年、メディア・リンクス、アイ・エックス・アイ(IXI)とIT関連業界で次々に起きてきた大規模な粉飾決算。今回の事件を巡っては、監査法人だったトーマツに対する風当たりが強まりそうだ。

 ニイウスコーは不正会計に手を染めていたのではないか――。

 筆者がそんな疑念を持ったのは今から2年半ほどさかのぼる2007年9月のことだった。ニイウスコーは日本IBMと野村総合研究所を母体として1992年に設立。三菱東京UFJ銀行のシステム統合作業に関わるなど、業界ではまさに堂々たるメーンストリームの会社と言えた。ところが、2007年6月期決算で、同社は突如として巨額の特別損失を計上、約300億円もの最終赤字に転落したのである。明らかに異常な決算だった。

 しかも、日本IBM出身者が大半を占める経営陣にはなぜか都内の高級マンションが社宅としてあてがわれていた。中でもワンマン経営者で知られた末貞元会長は横浜市内に自宅を保有していたにもかかわらず、会社から別宅が用意されていた形だった。否が応にも乱脈経営の臭いがプンプンと漂っていたのである。

医療関連システムを金融関連部署に発注

 疑念が確信に変わったのは、ある内部告発がきっかけだった。「巨額の特別損失となった在庫には実体がない」――。そう打ち明ける内部告発者は大量の社内文書を提供してくれた。特別損失となった在庫の品名や取得価格などが記載された一覧表や取締役会資料、商品を仕入れた際の稟議書――。それらを検証するうち、ある取引が目に止まった。

 手元にその内部資料がある。2006年6月30日付で作成されたニイウスメディカルシステム(ニイウスコーの医療システム子会社)の臨時取締役会資料がそれだ。グループ内のニイウス(同じく金融システム子会社)から「医療機関向けソリューションパッケージ」を購入することが第1号議案として示され、その取引内容とともに、以前にニイウスがその商品をグループ外部から仕入れた際の稟議書が添付されていた。

 最も大きな金額の「統合医療データベース」は2004年10月に日立情報システムズから2万ベッド分が24億円で購入されたもので、うち1万5800ベッド分が18億9600万円でニイウスメディカルに転売されるというものだった。いかにも大型の取引だが、稟議書では「ロットで購入することによる価格メリット(50%Discount)を享受」などとそれらしき理由付けがなされていた。

 ところが、日立情報システムズに取引実績を尋ねたところ、「そのような取引記録はない」との驚くべき回答が返ってきたのである。そこでニイウスコーに確認を求めると、取材に応じた吉兼晴雄取締役(当時)らは当該取引に関する銀行振込伝票を示しながら自社の潔白を懸命に主張した。

 だが、その伝票を子細に眺めると、記載された日立情報システムズ側の担当部署は「金融情報サービス事業第1営業部」となっている。医療関連のシステムを金融関連の部署に発注するのはあまりに不自然だ。疑念は解消されるどころか、逆に膨らむばかりだった。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

高橋 篤史(たかはし・あつし)

ジャーナリスト。1968年愛知県生まれ。93年早稲田大学教育学部卒業。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て、2009年よりフリーランスのジャーナリスト。著書に『ドキュメント ゼネコン自壊』『粉飾の論理』(いずれも東洋経済新報社)がある。



このコラムについて

ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内