「デザインの領域」

1社で50億より50社で50億の利益を

ワイス・ワイス 佐藤岳利社長に聞く(上)

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2010年2月23日(火)

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 モノが売れない――。消費を取り巻く状況は、誰もが売れない理由を探してさまよっているようにも見える。そんな中、大量生産、大量消費によって回転してきた社会は、価値観の転換を求められている。

 ここでキーワードになるのが「デザイン」だ。

 「デザインでモノは売れる?」

 そんな疑問をとっくに通り越して、デザインの領域は、美しさや快適さを提供するという範囲から、荒廃した環境や消滅の縁にある文化、消耗を続ける都市生活へと広がっている。

 まずは2回のシリーズで、デザインの領域を持続的な社会の構築と、本当の豊かさを見つめ直すための“内需の拡大”に広げている企業、ワイス・ワイスを紹介する。

 東京、渋谷区。表参道から少し入った路地にワイス・ワイスの本社はある。ガラス扉を押して中に入ると、そこはなんとチェコ料理のカフェ・レストラン。

佐藤岳利社長

 ワイス・ワイスのオリジナル家具でコーディネートされた空間にはコーヒーの香りが漂い、東欧の文化を紹介する本や雑貨の置かれたコーナーもある。

 「去年の10月からこういうスタイルにしました。1階がカフェで、地下階は雑誌の編集部(経済&環境情報誌『オルタナ』)、僕たちのショールーム、オフィスは2階から上。ちょっと珍しいでしょう」と佐藤岳利社長は笑う。

社内ベンチャーとして起業

 ワイス・ワイスの設立は1996年。佐藤氏が、それまで勤めていた大手設計施工会社、乃村工藝社の社内ベンチャーとして起業した。

 空間プロデュース、設計施工、オリジナル家具の製作・販売事業を主体に事業展開し、2007年からは東京ミッドタウン(六本木)内のライフスタイルショップ「ワイス・ワイス トゥールス」で伝統工芸に根ざした日用品の販売、プロデュースも手掛けている。

 「僕は、日本のバブル期の真っ最中に乃村工藝社に入社し、すぐに海外事業部に配属になり、足かけ6年を海外で過ごしました」。佐藤氏は当時を振り返って語る。

 「シンガポール支社にいた4年間はマレーシア、インドネシア、タイなどアジア各地で日本の百貨店設計やホテル建設などの仕事をする一方、旅行で見るのとは違うローカルな生活というものを知りました」

 「例えばインドネシアには貨幣経済すらない少数部族があちこちの島々、山間部に暮らしています。彼らと知り合いそうした暮らしに親しむと、一体何が真っ当なのか、自分の生活を基準にした既存の価値観が揺れる」

 「僕は子供の頃から、人はなんで生きるのか、とか、生きる意味ってなんだろう、といつもどこかで考えていました。学生時代、休学してアメリカ大陸横断したり(笑)、見つからない答を探していた。月並みですが、転機は94年、30歳になった時。6年の海外勤務を経てバブルの弾けた日本にいて、本当の意味での豊かな暮らしを追求しようと思ったのです」

バブル崩壊、耐震偽装、世界不況…

 96年に乃村工藝社から資本の22.2%の出資を得て船出したワイス・ワイスは、以来10年間は緩やかに増益を継続してきたという。

 「創業が建築・インテリア業界的には最悪の時期でしたから、それよりも悪くなるということはありませんでした」

 それはむしろ質の高い仕事をする小さな企業にとっては運びやすい時期だったのかも知れない。大企業では請け負えないような仕事でも小さい会社であれば利益を出せる。

 しかし、2005年末に耐震偽装問題(構造計算書偽装事件)が起きると、国内の建築業界の状況は一変した。

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著者プロフィール

若井 浩子(わかい・ひろこ)

若井 浩子

1967年東京生まれ。白百合女子大学文学部卒業。『商店建築』『wind』(商店建築社)編集部、『リビングデザイン』(東京ガス リビングデザインセンター)副編集長、『セブンシーズ』(アルク)編集部を経てフリーランスに。伝統工芸、現代アート&デザイン、ライフスタイル、社会制度について国内、ヨーロッパ、北欧諸国に取材し企画編集を手掛ける。著書に『リテリング──フェルトアートの世界』(青幻舎)。



このコラムについて

デザインの領域

 現在の不況は、消費が上向けば好転するというような単純なものではない。戦後60余年間、大量生産、大量消費によって回転してきた社会は、価値観の転換を求められる局面に立っている。ここでキーワードになるのが「デザイン」だ。
 「デザインでものは売れる?」。そんな疑問をとっくに通り越して、デザインの領域は、美しさや快適さを提供するという範囲から、荒廃した環境や消滅の縁にある文化、消耗を続ける都市生活へと広がっている。
 「デザインとは製品の意匠だけを指すのではない」「デザインとは機能」「デザインの本質は地域性、社会性にある」──言葉を連ねるよりも、それを実践している企業を見てみよう。

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