「ニュースを斬る」

大規模捕鯨の担い手は、もう民間にはいない

「小型沿岸」への現実路線が迫られる捕鯨外交

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2010年2月17日(水)

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 日本の捕鯨外交が転機を迎えようとしている。2月6日に行われた定例記者会見の場で赤松広隆・農林水産大臣が調査捕鯨について見直すことを示唆したのだ。2年ほど前から国際議論においては、日本を筆頭とする持続的利用支持国とオーストラリアなど反捕鯨国の間で、歩み寄りの兆しが出ていた。クジラを巡って今、何が起こっているのか――。

 「調査捕鯨 縮小提案へ」「商業捕獲再開の条件に」。赤松大臣の発言を受けて、翌日の一部新聞はそんな見出しを掲げた。もっとも、会見では大臣からそこまで踏み込んだ発言はなされていない。

 正確には、6月にモロッコで開催される国際捕鯨委員会(IWC)に触れたくだりで、「新たな提案」や「今の調査捕鯨のあり方をもう少し見直すとかいうような妥協案」に言及しただけである。

日本が目論む“追加の果実”

 ただ、このところのIWCを取り巻く動きからすると、一部新聞の報じ方は正鵠を射たものと言える。捕鯨については、環境保護団体「シー・シェパード」による派手な妨害パフォーマンスが2年前からたびたび報じられている。2月15日にもシー・シェパードのメンバー1人が日本の調査捕鯨船に侵入する“事件”が起きたばかりだ。

 そのため、捕鯨を巡っては、どちらかというと賛否両陣営の対立が先鋭化しているとの印象を持たれがち。しかし、外交の場では必ずしもそうではない。

 現在、捕鯨外交において焦点になっている検討事項は、どれも日本の振る舞いにかかっている。1つは調査捕鯨、もう1つは小型沿岸捕鯨である。前者は反捕鯨国からの猛烈な反対に遭いながらも日本が20年余り単独で強行してきたもの。後者はそうした中、日本が追加的に拡大を要求してきたものだ。

 かつてアメリカやソ連など世界の主要国がこぞって乱獲してきたクジラだが、資源量の激減や環境意識の高まりを受け、IWCが商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を採択したのは1982年。日本は戦後の食料不足を補うため本格参入した後発国だったが、捕鯨の継続を主張し続けていた。そこでモラトリアム採択後に始めたのが調査捕鯨である。

 国際捕鯨取締条約はIWC加盟国が資源量や生態を調査する目的でクジラを捕獲することを認めている。そのため、調査捕鯨は国際的に合法行為だ。IWCの投票を経ることも必要なく、加盟国の判断だけで行える。日本はそこに目をつけ、過去に例のない大掛かりな「調査」を始めたわけである。

 調査捕鯨は1987年に南極海で始まった。当時設定された1シーズン当たりのミンククジラの捕獲枠は270〜330頭。乱獲の末、最後に残された漁場が南極海。シロナガスクジラなど食用に向くとされるヒゲクジラの種類中、最後まで乱獲を免れたのが最も小型のミンククジラだった。日本の調査捕鯨は表向き科学調査を目的としてはいるが、将来の商業捕鯨再開を視野に捕鯨技術の伝承などを目指して始まったものといえる。大型母船を中心とした船団方式による捕獲方法は商業捕鯨時代と何ら変わらない。

 最初はそろりと始まった調査捕鯨だったが、その後、規模は大きく拡大した。1994年には北西太平洋でもスタート。南極海での捕獲枠も増加した。現行計画の捕獲枠は、ミンククジラが最大1155頭、さらにナガスクジラ50頭、ザトウクジラ50頭、ニタリクジラ50頭、イワシクジラ100頭、マッコウクジラ5頭にまで拡大している(ただし、これまでザトウクジラの捕獲実績はゼロ、ナガスクジラも計14頭にとどまっている)。

 調査捕鯨は捕獲したクジラの肉などを「副産物」と称して販売し、実施費用に充てている。商業捕鯨の禁止後もクジラの肉が流通市場で見られるのはそのためだ。それら副産物の量は最初の年に1137トンだったものが、2006年には5482トンにまで達した。2007年以降はシー・シェパードの妨害などで捕獲実績が減ったが、それでも毎年4000トン前後の副産物が市場に放出されている。

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著者プロフィール

高橋 篤史(たかはし・あつし)

ジャーナリスト。1968年愛知県生まれ。93年早稲田大学教育学部卒業。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て、2009年よりフリーランスのジャーナリスト。著書に『ドキュメント ゼネコン自壊』『粉飾の論理』(いずれも東洋経済新報社)がある。



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