中国、インドなど新興国向けを中心に輸出が急回復し、日本経済を下支えし始めた。しかし、好調の陰に見えるのは「バブル」という新たな火種。急回復は続くのかどうか。新興国経済が減速すれば、日本経済は再び牽引力を失う。景気の先行きは心もとない。
「アジアではいわゆる『中間層』が増えている。冷蔵庫とか洗濯機の材料になる鋼板の引き合いが強い」
ある鉄鋼大手の幹部は中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)での販売動向についてこう語る。日本鉄鋼連盟のまとめによると、2009年12月の鉄鋼輸出は前年同月比46.5%増の385万トン。中国向け(37.2%増)や、東南アジア向け(50.5%増)が大きく伸びた。財務省の貿易統計でも12月は輸出総額が前年同月比12.0%増だったのに対し、中国向けは42.8%増、台湾向けが48.0%増えている。
中国は2009年10~12月期の実質GDP(国内総生産)が前年同期比10.7%増と、6・四半期ぶりの2ケタ成長だった。第一生命経済研究所の西ハマ徹副主任エコノミストによると「主要都市に住む人の平均賃金は2009年も前年比で12%ぐらい増えている」。
世界同時不況の大波をかぶっても高い成長を続ける中国。実際、日本企業の中国事業はいわゆる「リーマンショック」による危機を乗り越える勢いだ。
中国で注文が殺到
工作機械に組み込む接触式センサーを製造するメトロール(東京都立川市)。今年に入り中国・上海の営業拠点には「300台欲しい」といった大型の注文が殺到している。松橋卓司社長は「EMS(電子機器の受託製造サービス)各社が、家電、携帯メーカーからの生産依頼に応じるために設備投資を急いでいるようだ。ケタ違いの注文で、驚いている」と話す。
昨年1月にピーク時の30%に落ち込んだメトロールの売上高は今年1月には前年同月比3倍となり、ピーク時の90%まで戻った。生産はすべて国内で月間500台程度とフル稼働だ。
中国は自動車販売も好調。政府の販売促進策もあり、市場規模は2009年に米国を抜いた。日産自動車は2009年の販売台数が75万5500台と前年に比べ4割近く伸びた。「今年1月は(前年同月比で)8~9割増」。志賀俊之・COO(最高執行責任者)は顔をほころばせる。
人口が世界第2位のインド経済も好調だ。スズキは2月5日、2010年3月期の連結営業利益を500億円と、従来予想より100億円上方修正した。インド子会社の2009年4~12月の販売台数が前年同期比32%増の73万台となり、税引き前純利益が同70%増の520億円となった。
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