猛烈な人口減少と高齢化、流通業の寡占とデフレーションの進行、脆弱なモノ作り産業基盤――。日本が抱える「課題」を先取りするかのように、北海道経済は逆風の中にある。道開発予算は往年の半分以下まで減らされ、公共事業は激減。国の財政が悪化する中で、もはや切り捨てられようとしているようにも見える。
もしそんな地域が「独立」したら――。
本企画では、北海道を独立した「国」と見立ててみたい。一見、荒唐無稽なその夢想から、北海道という地域に埋れた「潜在力」と、それを生かす可能性が見えてくる。
この企画のための取材として最初に訪れたのは、日本最北に位置する公立大学である名寄市立大学。米週刊誌「ニューズウィーク」も着目した北海道独立論の第一人者がそこにいた。=文中敬称略
66歳、北海道大学卒。旭川工業高等専門学校教授を経て2006年より名寄市立大学教授。道内情報誌「北方ジャーナル」に「北海道独立論」を長期連載している。
(撮影:池田信太朗、以下同)
2002年夏、米週刊誌「ニューズウィーク」の記者が北海道を訪れた。
迎えたのは、白井暢明(当時、旭川工業高等専門学校教授)。ニューズウィーク記者は白井にこう告げた。「日本にも独立論があり、北海道にその支持者がいることに驚きました」。
海外誌から見れば排他的な単一民族国家に見える日本にも諸外国のように分離独立を目指す勢力がある、ということが珍しかったのだろう。
2時間ほどのインタビューで、白井は長年の持論である「北海道独立論」を説いた。9月16日号に「Rebel Rich(裕福なる反乱者)」と題して掲載された記事を、日本語版「ニューズウィーク」に翻訳転載されたものから引用する。
「北海道は日本の成長に寄与してきた。しかしそれは我々(北海道人)に利益をもたらしただろうか?」と、独立支持の著書『北海道論』の著者、白井暢明は問う。
さらに「日本の財閥は我々の島を天然資源の供給地として搾取してきた。そしてその後も長い間にわたって北海道は中央政府と東京の企業によって管理されている。北海道は利用される対象になってしまった」と。
白井は機が熟した時に北海道民党を立ち上げることによって、独立の理念のために闘うことを望んでいる。
雪に埋もれた温度計は氷点下14度を表示
極寒という言葉がふさわしい。駅前にある、雪に埋もれた温度計は氷点下14度と表示している。吹雪が顔に当たると、寒いというよりも痛い。
旭川から1両編成のディーゼル駆動車で1時間30分ほど北上してたどり着いた北海道名寄市は、日本で最も寒い市とも言われる。

夏場であれば10分も歩けば着くであろう道のりを、除雪で見上げるばかりに積み上げられた雪の壁の間を慣れない足取りで30分近くかけて歩いて名寄市立大学にようやくたどり着いた。
日本で最も北に位置する公立大学だ。「寒かったでしょう」。白井暢明教授は、ハチミツを加えた温かな紅茶で迎えてくれた。
北海道民としてのアイデンティティーを取り戻すべき
七三にきれいに分けられたロマンスグレーの髪と口元に整えられた髭が温和な印象を与える。数十年来、ほぼ1人で異説を叫び続けた孤高の論者にはとても見えない。
しかしその主張はなかなかに過激だ。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。











