「ニュースを斬る」

不振企業の不動産現物出資は“謎の錬金術”

「不公正ファイナンス」への監視は強まるが・・・

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2010年3月1日(月)

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 不振企業の間で不動産の現物出資による第三者割当増資が相次いでいる。ジャスダック上場でゲーム専門店チェーンのNESTAGEに続いて、同じく不動産関連のセイクレストが発表。いずれも大規模なダイリューション(株式価値の希薄化)が発生する大型増資だ。ただ、不動産評価額などを巡って不透明感が漂っているのも事実である。

 セイクレストが2月18日に発表した第三者割当増資は福島県内の合同会社を割当先とするもの。合同会社は元グリーンシート銘柄の不動産関連会社と、大阪市内の福祉施設関連会社が共同で出資したとされる。払い込み金額は21億2000万円。セイクレストの前期売上高は44億円だから、企業規模に比べてかなりの金額の増資と言える。

 ただし、3月25日を予定とする払い込みのうち、現金でなされるのは1億2000万円だけで、残り20億円はリゾート分譲地による現物払い込みだ。会社発表によると、現物出資される不動産は第三者による鑑定評価額が約31億円。これを出資時に20億円相当とみなして受け入れる。

「マネーの虎」出演者が所有していた物件も

 現物出資される不動産は、一体どんな物件なのか。場所は和歌山県西牟婁郡白浜町。紀伊半島のほぼ南端だ。面積は約8万4000平方メートル。全部で11筆に分かれており、そのうち最大面積のものについて登記簿を見ると、来歴は次のようになっていた。

 まず、1992年にこの土地を買収したのは「朝日住建」だった。バブル期に住宅金融専門会社(住専)の大口融資先として知られ、2003年に破産した会社だ。大阪市などによる差押登記を経て、土地は2004年8月に大阪府内の住宅建て売り会社に売却、さらに4年後の2008年9月に「全管連」という大阪市内の会社に転売された。

 全管連は全国でリゾート分譲地の販売・管理を手掛ける会社。代表の上野健一氏はかつて人気テレビ番組「マネーの虎」に出演していた。信用調査会社によると、上野氏は以前、「セゾングループ」なる企業群を率いていたが、1995年頃にグループ会社のいくつかは事実上倒産している。全管連は直近で多額の債務超過に陥っている模様だ。

 全管連は今年2月9日に焦点の土地を手放した。大阪市内の不動産関連会社を経て同日付で転売された先が前出の合同会社だった。さらに今回、セイクレストに現物出資されることとなったわけである。地目は「山林」のままだから、土地はほぼ20年にわたって開発途上だったということになる。これをセイクレストは2年以内に完売する方針だというが、そう簡単にいくものなのか。

 かたや、NESTAGEが2月10日に発表した第三者割当増資も同様の疑問が生じるものだ。同社の第三者割当増資は総額12億7500万円。割当先は東京都中央区の「クロスビズ」なるコンサルタント会社だ。払い込みのうち現金は普通株増資7500万円だけ。残りのA種優先株12億円は保養施設3物件による現物での払い込みである。優先株とは言うものの、発行から1カ月後には普通株に転換できるので、大規模なダイリューションは必至だ。

 こちらの不動産も、これまでの経緯が実に興味深い。3物件はいずれもかつては公的機関が所有していた。北海道上川町の旧「層雲峡簡易保険保養センター」と山形県米沢市の旧「米沢簡易保険保養センター」は旧日本郵政公社の持ち物だったもので、いわゆる「かんぽの宿」。残りの岡山県倉敷市の旧「ホールサムインせとうち」は独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の持ち物だった。

 これら3物件は2007年までに民間に払い下げられた。取得したのはキョウデンの創業者らの出資により東京・台場で大規模日帰り温泉施設を運営する「大江戸温泉物語」。層雲峡物件は1億6700万円、米沢物件は5600万円、倉敷物件は1億2000万円だった。大江戸温泉物語は付加価値アップを目指して購入したが、計画を断念。今年1月27日に3物件をまとめてクロスビズに転売した。クロスビズはそれをそのままNESTAGEに対する現物出資に充てる形だ。

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著者プロフィール

高橋 篤史(たかはし・あつし)

ジャーナリスト。1968年愛知県生まれ。93年早稲田大学教育学部卒業。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て、2009年よりフリーランスのジャーナリスト。著書に『ドキュメント ゼネコン自壊』『粉飾の論理』(いずれも東洋経済新報社)がある。



このコラムについて

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