北海道経済は逆風の中にある。道開発予算は往年の半分以下まで減らされ、公共事業は激減。国の財政が悪化する中で、もはや切り捨てられようとしているようにも見える。
もしそんな地域が「独立」したら――。
本企画では、北海道を独立した「国」と見立てている。一見、荒唐無稽なその夢想から、北海道という地域に埋れた「潜在力」と、それを生かす可能性が見えてくる。
(前回から読む)
2025年。熱狂と混乱に満ちたあの「独立騒ぎ」から10年が経った。
首都・札幌の書店では、「独立」の意味を振り返る書籍がベストセラーとして棚に並んでいる。そのうちの1冊を手に取ってみた。表題は『北海道国の歴史』。序文は、こう始まっていた。
面積およそ8万平方キロメートル、人口500万人余り。日本列島の北辺に位置するこの島嶼は、古くは石炭の産地として栄えたが、国のエネルギー政策が転換する中で衰退を余儀なくされた。
「役割が終わった地域」であるこの地域に対して、日本国は長年、北海道開発庁という出先機関を設置し、多額の開発予算をつぎ込んで救済して来た。ところが国家財政が逼迫する中で予算は年々、縮小。小泉純一郎首相率いる自民党政権による新自由主義の色彩が強い「弱者切り捨て」とも取られる政策によって、さらに疲弊した。
2010年、政権交代を果たした鳩山由紀夫党首率いる民主党は、マニフェスト(政権公約)に基づいて、大胆な地方分権改革を断行。従来の東京一極集中の中央集権を改め、北海道を初めとする「地域」に「主権」を置く制度改革を実施。地域内の内政に関する権限を大幅に移譲し、それまで用途・目的を拘束して支給されていた交付金(いわゆる「紐付き補助・助成金」を「一括」で交付してその用途を地域に委ねるかたちに改めた。
以後、北海道政府は、一括交付金を財源として、北海道の実情に即した政策を次々に打ち出し、北海道議会はそれを立法化した。例えば「教育先進国」を目指すべく、大学の授業料を無償化した。「医療先進国」として、高齢者の医療費も無償になった。風力や太陽光など再生可能エネルギー源の豊富さを生かし、日本政府の掲げた目標よりも遥かに野心的な温暖化ガス削減目標を掲げて「環境先進国」も目指し始めた。
外交や防衛といった外政は日本政府に委ねるが、内政分野に関しては、自ら決め、自ら実行することを始めたのだ。――事実上、内政の「独立」と言っていい。
* * *
どんな感想をお持ちだろう。前段の歴史的経緯はともかく、2010年以降の話は実現していない未来の話。言ってみれば、夢想に過ぎない。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










