「経済学っぽく行こう!」

08 うちの妻は「元手ナシにお札を刷る」に納得できません

『日本経済復活』その3

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2010年3月5日(金)

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 さて『日本経済復活 一番かんたんな方法 』を読んで、ぱっとひっかかりそうなところを伺ってきましたが、改めてここまでをまとめてみたいと思います。

 
景気対策と日本のシステム(財政、年金、人事など)改革は平行して進めるべき課題。
 
ただし、成果を出すまでの時間軸がそれぞれ異なる。もっとも目先の効果が得やすいのが、デフレ不況からの脱出。
 
デフレは「将来が不安だから、お金の方が物よりも大事だ」という心理状態であり、解消するにはお金の気楽に使えるようにしてしまえばいい、それには、お金を潤沢にすればよい。よって、一定水準までの金融緩和を政府・中央銀行が責任を持って遂行する、リフレーション政策が有効。(この辺までは前々回「デフレの正体は「思い出より、おカネ」と思う心にあり 」。リフレ政策についてのよりくわしい内容、有効性についての議論は『日本経済復活 一番かんたんな方法 』を参照)
 
リフレ政策はシステムの問題先送りにはつながらない。改革、産業構造の再構築をやるならば、好況下で行うほうが進む。同じ頑張るなら成果が出やすい状況の方がいい。
 
財政、年金問題の改善にはリフレだけでは対応できない。それぞれに施策を打つべき。好況に転じ、将来への不安が和らぐなかでその痛みは最小化できる。
 
あらゆる問題に有効な「抜本的な対策」「100%の裏付けがある方法」というものは存在しない。それを求めていると泥沼の水掛け論になる(どんな方策にも、かならず反論は出せる)ので、個別に問題を切り分け、時系列を整理して、ひとつひとつ対策を講じていこう。(ここまで前回「経済成長すれば、財政も年金も心配なくなるの?」)
 

と、いうことになるかと思います。しかしコメント欄がすべての読者さんの意見を代表するものではもちろんないのですが、書き込みを見る限り、まだまだ「お金の価値」を恣意的に動かす「不自然な」ことをするより、デフレに耐えよう、あるいは、もうあきらめよう(笑)という雰囲気の方が強いように見えるんですよね。

―― インフレ・デフレの問題、そして経済成長は「意図的に」手を突っ込んでいいことなのか、できることなのか、必要なのか、私たちにとってはやはり難しいテーマのようです。

飯田 第1回からの内容と、『経済成長って何で必要なんだろう?』を見て頂ければそういった疑問は氷解すると思います。直に聞いていただく(直近では大阪で開催予定。飯田泰之「経済センスを身につける!速習経済学の基礎理論」)のもいいかもしれません(笑)。

日本経済復活 一番かんたんな方法 』(光文社新書 勝間和代、宮崎哲弥、飯田泰之著、シノドス企画・編集)

 そうそう、あとこの話は『日本経済復活』にも書きましたけれども、中小企業などの業界団体にこの「経済成長」のお話をするとすんなりと理解してもらえる事が多い。「デフレは困るでしょう、円高は困るでしょう?」だけでもう説明不要なんですよね。「じゃあ、それをどうするか」という話にすっと行けるんです。

荻上 特に、輸出に関わる下請け企業などを経営されている方は、為替や物価、今の円高やデフレの影響を強烈に体感していますからね。

――なるほど。しかし「耐えよう」「諦めよう」という方は、その手前で躓いている印象が強いです。なぜでしょうか。

ピンと来にくい背景に、自営業との温度差がないか?

飯田 日本の場合、幸か不幸か、ホワイトカラーのかなりの人数がいわゆる経営・営業サイドから遠い仕事に従事しています。マスメディア、出版社も、編集に携わる部署は営業から切れてしまっています。僕も含めた学校の先生なんかもっとですよ。こうなると、ピンとこないんですよね。デフレのどこがまずいとか、円高のなにがまずいというのが。

―― そもそも読者の多くの方は、私と同じく勤め人ですね。

飯田 自営業種だと、デフレがいいと思っている人はまずいないんですよ。直に景気の風にあたっているから。勤めている方は組織の仕組み上、「お金をもらう相手」が「世の中」や「お客さん」ではなく、「会社」だ、と思いがちなので、景気への切実さにワンクッションあるんですよね。

荻上 それでも、いよいよメディアの反応が従来変わってきている感じがするのは、メディアの広告収入の落ち方が半端じゃないからではないかと。各企業、各産業の出稿意欲の影響をモロに受ける広告は、景気との連動性の高さが指摘されていますからね。

―― な、なるほど(笑)。

荻上 僕からも、飯田さんにちょっと投げてみたい話題があります。「財政政策だけでは、景気刺激効果が海外へと逃げる」ということは、よく指摘されますよね。で、最近、それとは真逆の、「金融緩和政策を日本でやっても、その効果は海外に流れる」という、非常にユニークな意見を目にしたんです。

―― なぜそうお考えになるのでしょうか。

荻上 その方は、「日本に投資先なんてないから」という認識でいるようでした。そのロジックはさておき、こうふうに考えている人は確かにいそうだな、と思ったんですね。つまり、「投資」というのを、ちょっと大げさに言えば「100入れたら300になって返ってくるもの」「何かすごい発明を期待して行われるもの」みたいな思いこみで捉えているのではないかな、と。だから、「イノベーションが起きるわけでもない日本に、いくらお金をばらまいてもダメだろう」という風に捉えるのかな、という。

賃金を下げるか、円安に振るか?

飯田 1つ言えるのは、例えば金融緩和・インフレ政策によって為替が円安になったとしましょう。円安がある程度までいったら、日本って海外にとって非常に魅力的な投資先になるんですね。なぜならば、労働者の価格が質で見ると安くなるからです。

 いま、なぜ日本に投資機会がないかと言ったら、あまりに円高で、人も高い、土地も高い、生活費も高い、何もかも高いんですよ。投資先という視点では、まさにチキさんが言ったように、誤解されているところがあって、ぐいぐい育つ、成長するというイメージなんですけれどもね。

荻上 金の成る木、みたいな感じですね。

飯田 そう。でも結局、お金って相対的なもので、安く買って高く売れば儲かるのですよ。売る場、買う場がどんな未開社会だろうが、どんな停滞している社会だろうが、安く買って高く売れば儲かるんです。ということはどうすればいいかといったら、いま国際的に見て、日本の労働力が高いと。そのときに2つやり方があるんですね。日本の労働者の賃金をがっつり下げる方法です。

―― なるほど。

飯田 もう1つは円安にするという方法です。どっちがいいですかと言ったら、円安の方がよくないですかというのが僕の意見なんですよね。例えばそれでいうと、城繁幸さんなんかの、1%の賃下げが99%の人を救うという意見がありますよね。

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著者プロフィール

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら

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