社会起業という言葉が、日本でも頻繁に聞かれるようになった。日本でも、しばしば名前が登場する社会起業家が何人かいる。
例えば、2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行創業者、ムハマド・ユヌス氏。同じくバングラデシュのNGO(非政府組織)BRACを創設した、ファザル・アベド氏。米マイクロファイナンス・インターナショナル(MFIC)の枋迫篤昌(とちさこ・あつまさ)社長。
非政府組織(NGO)あり営利企業ありと形は違えど、いずれも世界で活動の確かさを認められた社会起業家である。
「社会起業の父」ビル・ドレイトン氏
日本で最初にこの「社会起業家」に注目して世に出したのは、米ニューヨークに拠点を置く写真家の渡邊奈々さんである。社会起業の実態が広い意味で正しく伝わっているかといえば、必ずしもそうではない、と渡邊さんは言う。
東京生まれ。慶応義塾大学文学部英文科卒業。米シートンホール大学院修士課程修了。1977年、リゼット・モデル氏より写真を学び、80年、ニューヨークで独立。87年、アメリカン・フォトグラファー誌より年度賞受賞。2008年、世界経済フォーラム(ダボス会議)社会起業家サミットでモデレーターを務める。2009年からアショカ上級アドバイザーに就任。
渡邊さんは、2000年から雑誌「Pen」(現在は阪急コミュニケーションズ刊)で、世界の社会起業家を紹介する企画を実現し、数回10ページ程度の特集を執筆した。その後、企画は「フィガロジャポン」(同)に場を移し、1ページの連載として続いた。
辛抱強く社会起業家を探してインタビューを繰り返して手がけた渡邊さんの連載の一部は2005年、『社会起業家が世の中を変える チェンジメーカー』(日経BP社)として出版された。
ここでは、18人の国内外の社会起業家を、渡邊さんが撮影した写真と共に紹介している。そしてその冒頭に登場する非営利組織「アショカ」CEO(最高経営責任者)のビル・ドレイトン氏こそが、「社会起業の父」と呼ばれる社会起業家の世界のリーダーであり、渡邊さんの同志なのである。
最終的に渡邊さんが紹介した国内外の社会起業家は実に130人に上る。
連載はじわじわと反響を呼び、渡邊さんは徐々に手ごたえを感じるようになった。読者から、「社会的起業の存在を知って会社を辞めました」などといった声が直接、間接に届くようになったからだ。「私は決して社会起業家ではないですが、チェンジメーカーではあります」と渡邊さんは言う。
チェンジメーカーとは、どういう意味だろうか。
社会起業家はチェンジメーカー
社会起業家は、社会に構造的な変革を起こす強力な「チェンジメーカー」である。ドレイトン氏が設立したアショカは、米国に拠点を置き、世界中の社会起業家を物心両面で支援し、社会変革を手助けする非営利組織だ。
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