私は内定を受けて入社する予定だった企業から大学卒業間際に呼び出され、内定を辞退するよう暗に迫られました。
応接室で役員と二人きりになり、何時間も面談を受けました。そして、次のようなことを言われました。
「君はウチの会社には向いていない。どうせ鬱になって辞めるよ」
「同期の中で一番レベルが低い。総合職だけど電話番すら任せられるかどうか」
「会社にとって新人や内定者は価値を生み出さないからみんなクズみたいなものだけど、とりわけ君はクズの中のクズだ」
これは脚色したり誇張したりしているのではありません。私は面談で言われたことを手帳にメモしていました。本当にその役員から面談で言われたことなのです。
役員からは、「内定を取り消す」とはっきり言われたわけではありません。しかし、何時間も怒鳴られ、「辞めたほうが身のためだ」というようなこと言われ続けたため、これは内定辞退を強要されているのだ、と思いました。
後になって、100人以上いた内定者のうち、数十人がこのような面談を受けていることがわかりました。しかも、みんな同じように「君は同期で一番レベルが低い。うちには向いていないから、どうせ辞める。」と怒鳴られたのです。
面談中は、怒鳴られることで、初めは悔しい、なんとか挽回したいといった感情がありました。でもそれが何時間も続くと、感覚が麻痺したように、頭がぼうっとしてきます。次第に、早くこの面談を終わらせてこの部屋から出たい、と思うようになるのです。
おそらく、それは個別に面談を受けたほかの内定者も同じだったのでしょう。多くの学生が面談の中で誘導されるように、内定を辞退してしまいました。
耐えきれずに「内定を辞退します」と言ってしまった学生の目の前には、即座に「内定辞退書」が差し出されました。学生が「今日はこの用紙を持って帰って、親や大学と相談したい」と言っても、「自分の人生なんだから、今すぐここで決めろ。社会人になるんだろ」と聞く耳を持ってもらえなかったそうです。
その企業は、実は同じようなやり方で、社員の退職勧奨も行っていました。私がインターネットの就活関連の掲示板などで、面談を受けて内定辞退を迫られている学生がいないか情報提供を呼びかけていたとき、その企業で働いていたという複数の方からメールをいただきました。それによると、内定者に対してだけではなく、中堅社員や、入社間もない新入社員に対しても退職勧奨が行われていたというのです。
中堅社員の退職勧奨でも、私たち学生との面談と同じように、役員が面談を行って、怒鳴り散らし、辞めるよう迫ります。それに従わなかった社員は、理不尽な業務命令を出され「命令どおりにしないならクビだ」と言われ、本来の業務とはまったく関係のない仕事を与えられた人もいました。例えば、一日中役員の靴磨きを命じられたり、壁の汚れを消しゴムで消す、など。真偽のほどはわかりませんが、複数の方からこういった情報の提供を受けたのです。
こうして内定辞退に追い込まれる
内定者の学生に対しても、新卒社員や中堅社員に対しても、退職勧奨はまず「孤立させる」ことから始まります。
例えば「同期で一番レベルが低い。クズの中のクズだ」「君だけレベルが低いから面談を行っている」と言えば、周囲の人に相談しにくくなります。そうやって孤立させて、精神的に追い詰めるのです。
それから、はっきりと「辞めろ」とは言わずに、自主的に辞めるよう仕向けます。「ここにいても幸せにはなれない」「自分に合ったキャリアを築くために、早く決断するべきだ」といった具合。会社都合ではなく自己都合で退職させるために、こうした発言を繰り返します。
退職勧奨を行う場合には“マニュアル”があって、その中には「面談が録音されていることを想定して話をすること」と書いてあるのだと聞いたことがあります。こういった話は社会人の方のほうが詳しいかもしれませんが、会社側が不利になるような証拠が残らないようにするためだそうです。
もちろん、このようなことがすべての企業で行われているわけではありません。ただ、一部の企業では確実に行われていて、外部から見ているだけではその実態がなかなかわからないのです。
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