2月2日に掲載した「郵政民営化見直しを凍結せよ――元郵便局長からの提言」。この記事には40件近いコメントが寄せられるなど、郵政民営化見直しに対する読者の関心の高さを伺わせた。
政府は今国会中に「郵政改革法案」(仮称)を提出する方針だ。金融や郵便などのサービスをあまねく提供する「ユニバーサルサービス」を義務づける一方、預入限度額の引き上げなど、日本郵政に民間とほぼ同等の経営の自由度を与える方向で議論が進んでいる。さらには、税制優遇や国が3分の1以上の出資比率を維持するかどうかも重要な焦点。いずれにせよ、郵政民営化が後退することは必至である。
この方向性に危惧を抱く元郵便局長がいた。今西宏。兵庫県内の郵便局の局長を務めた人物だ。局長時代は改革派として郵政事業の改革を叫び続けた。再び彼の叫びを聞こう。
前回、「郵政民営化見直しを凍結せよ」と題して、元郵便局長の立場から現場を見ながらの意見を書いた。だが、報道されている政府の郵政改革の素案を見る限り、より一層、国のコントロール下に置かれた郵政事業になろうとしている。
政府が常に一定の株式を持ち続ければ、政府関与(圧力)が残り、政治に利用され続ける企業体になるだろう。これでは、郵政事業は国営に近い企業に逆戻りとなり、実に中途半端なものになる。今一度、元郵便局長として、郵政事業のあり方を提言したいと思う。
世の中には社会的なルールがある
“ゆうちょ”に関しては、現行の預入限度額1000万円を3000万円に引き上げ、3年後には限度額を撤廃する案も検討されている。3000万円に引き上げることだけでも驚いたのに、撤廃となるとあまりにもヒドイ話だ。かつての国営公社でもここまでではなかった。“かんぽ”についても同様に、3年後の加入限度額の撤廃が叫ばれている。住宅ローンやガン保険などへの事業拡大も検討されているというから驚きだ。
本当にこれだけ自由にやろうとするなら、完全民営化の方向に進めていかないと整合性が取れない。行政職の強い国営に近い形に戻しながらも、民間金融機関と同じ方向への業務拡大や限度額の撤廃を断行するのはあまりにも節度がなさ過ぎる。
最終的にどこに落ち着くにせよ、こういう発想、発言自体が国家をになう政権としてあまりにも無責任だ。巨大化した力を背景に好き勝手なことをすることは慎まなければならない。物事には社会的ルールというものがある。
巨大化した恐竜はなぜ絶滅したのか。その原因は諸説あるが、明治時代の生物学者、丘浅次郎氏は「自らを繁栄させようと体やキバを過度に大きく発達させた、まさにそのことがかえってマイナスに作用して、自らを滅ぼすことになった」と指摘している。それが恐竜の絶滅の理由かどうかはともかく、郵政見直しの現状を示唆している気がしてならない。
我が国の国債は年々増え続け、今年度末には637兆円になる見通しという。国民1人あたりにすると約500万円の借金になる。ゆうちょ、かんぽの限度額を拡大、撤廃していく裏には増大する国債を消化させるという狙いがあるのだろう。だが、巨額のゆうちょ、かんぽマネーは運用が難しい。規模拡大を目指した結果、自らを滅ぼすという皮肉な結果をもたらすのではないか。
損が出たら国が穴埋めするとは何事か
「公益性」という観点から、三事業の全国一律サービスは常に議論に上がってきた。私自身も全国一律サービスを維持していくことは大切なことだと考えている。この「全国一律」を考える際に考えるべきことは全体の事業コストをどう減少させていくか、という点だ。
ところが、今回の改革素案を見ると、全国一律サービスの義務づけにより生じたコストを、法人税の減額や固定資産税、事業所得税、消費税の減免措置で政府が負担するという。いとも簡単に言ってのけているが、この優遇措置は「損が出た場合はその分を国が埋める」と言っているのと同じことだ。
まず、どうやってコストを減らすかを考え抜き、可能な施策を実行した後、最後の手段として政府負担に頼る――というのが筋。前回はコスト削減の1つの方法として、「局長と社員1人」という郡部地の郵便局を順次、簡易局化していってはどうか、と提言した。今回は都市部の郵便局改革について考えてみたい。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




