「ニュースを斬る」

静かに始まっていた? レナウンvsネオラインの第2幕

見えぬ「虎の子の子会社」売却の勝算

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2010年3月12日(金)

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 2009年12月28日、レナウンがひっそりと取締役の辞任を伝えるリリースをウェブサイトに掲載した。

 上場会社は代表者の退任に関しては開示義務があるため、東京証券取引所が運営する適時開示情報システム「TD-NET」にプレスリリースを掲載するが、代表以外の取締役の開示義務はない。

 取締役人事をこまめにTD-NETで公表する上場会社は多いが、これはあくまで自主的にやっているに過ぎない。

 昨年12月25日付で退任したのは社外取締役の藤澤信義氏。

 藤澤氏率いるネオラインキャピタル系のファンドが、レナウンの発行済み株式総数の19%を取得し、筆頭株主となったのは2008年9月。エクイティファンド運営のカレイド・ホールディングス(東京都港区)が2005年11月に総額100億円を投じ、第三者割当増資で引き受けた1029万株全株を、26億円で取得した。その後ネオライン系ファンドはレナウン株式の買い増しを実施、昨年9月末時点で24.87%まで増やしている。

 藤澤氏が筆頭株主の立場から、藤澤氏本人や日本振興銀行の木村剛会長など3人の取締役の派遣を提案、プロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展しかねない展開となって、話題を呼んだのは2009年4月である。結局プロキシーファイトには至らず、藤澤氏1人だけが社外取締役に就任することで決着はついた。

連結売上高の4割を稼ぐレリアングループ

 あれほどの大騒ぎを経てようやく手にした取締役のポストを、藤澤氏はなぜこうもあっさり手放したのか。

 ネオラインキャピタル広報は「レナウンの子会社の案件に関する内容不服のためと聞いているが、保有株については特に売却する予定はない」という。

 その問題の子会社とは、中高年女性対象の婦人服メーカー・レリアンを指す。1968年に三菱レイヨンとの合弁で設立した会社で、出資比率はレナウン56.36%に対し、三菱レイヨン34.92%。百貨店に強いブランドで、レナウンにとってはまさに「虎の子の子会社」と言っていい。

 レナウンは藤澤氏が取締役を辞任した昨年12月25日に、伊藤忠商事へのレリアン売却を発表しているのだが、この売却、レナウンにとっては極めて重要な意味を持つ。

 2008年12月期のレリアン単体の年商は457億8800万円で営業利益は13億7600万円。

 今回、伊藤忠商事には、レリアンとともにレリアンの子会社5社も売却されている。レリアンとしての連結決算は実施しておらず、レリアンとその子会社の数値を単純合算した場合、年商は627億3600万円で、営業利益は15億7600万円になる。

 一方、レナウンの2009年2月期の連結売上高は1559億9900万円、営業利益は75億2000万円の赤字である。レナウン単体の売上高は788億円で営業利益は61億1000万円の赤字だから、レナウンの連結決算における、レリアングループの貢献度がいかに大きいかが分かるだろう。連結売上高の4割を稼ぎ、レリアングループの貢献なかりせば、連結営業赤字は90億円を超えていた計算になる。

 売却は今年1月15日付けなので、2010年2月期の決算期末時点では、レリアングループは連結対象ではなくなる。ただし、決算月がレナウン本体と異なるので、2010年2月期のレナウンの連結業績には、基本的には2009年12月期のレリアンの実績が反映され、1月分と2月分は調整が入る形になる。

 本稿執筆時点でレナウンが公表している2010年2月期の業績予想は、売上高1300億円、営業赤字13億円、当期純損失109億円。レリアンの業績がフルに寄与してこの数値である。

 既に走り出している2011年2月期は、ここからさらにレリアンの数値が抜け落ちる。

 損益計算書への影響もさることながら、バランスシートへの影響も大きい。2009年2月期末時点のレナウンの連結純資産は371億円。レリアングループの純資産が単純合算で292億円あるので、レリアングループが連結対象から外れるだけで、純資産が大きく目減りしてしまう。しかも2010年2月期に発生する当期純損失は109億円である。

 連結除外に伴う入り繰りがあるので、最終的に2010年2月末時点の連結純資産がどうなるのかは決算発表を待つことになるが、レリアングループがレナウンの連結対象から外れる影響はあまりにも大きい。

125億円の資産価値を87億円で売却?

 それではなぜ、これほどの犠牲を払ってまで、レナウンはレリアン売却を決めたのか。

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著者プロフィール

伊藤 歩(いとう・あゆみ)

金融ジャーナリスト。1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行など複数の企業で融資、不良債権の回収、金融商品の販売などを経験。サラリーマン時代の実務経験と知識を基に経済専門誌を中心に執筆している。



このコラムについて

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