個人が短文を投稿するネットサービス「ツイッター」の利用が企業に広まる。ソフトバンクの孫正義社長は新サービスを続々と“発表”し、話題の人に。一方で、公平な開示や、情報の真偽、公私の区別など経営課題も浮き彫りに。
消費者A:「すべてのソフトバンクショップで無線LAN(構内情報通信網)を無料提供してもらえませんか?」(3月6日午前6時28分)
ソフトバンク孫正義社長:「やりましょう。ついでに充電プラグも。4月末までに」(同日7時12分)
消費者B:「ついでにイスはいらないから小さなテーブルと缶コーヒーでも置いてもらえれば待ち合わせにも使えて助かります」(同日午前7時16分)
孫社長:「了解。できるだけ多くの店で」(同日7時49分)
ツイッターで経営者が対話

これは企業イベントでの会話などではない。孫社長と消費者が、インターネット上でわずか1時間半の間に交わしたやり取りだ(編集部注:趣旨を変えずに一部表記を変更)。大企業の社長に対して消費者が直接サービスの改善案を提案し、それに即座に答える。ネットの進化は、これまでは考えられなかった経営手法を生み出した。
その震源地が「Twitter(ツイッター)」。米ベンチャー企業のツイッターが運営し、米国を中心に世界で1億人以上が使っているとされる。
無料会員登録して、個人が携帯電話やパソコンから発言を投稿したり、閲覧したりできるサービスだ。140字以内という制限があって2~3行の短文がほとんどなので、ツイッターに投稿することは「つぶやく」と称される。冒頭の会話もツイッター上のものだ。
2008年4月に日本語対応が始まり、昨秋からは携帯電話に公式対応した。もともとはネットに詳しい若者を中心に人気を博したが、最近はその発信力や即応性に目をつけた経営者が業務目的も兼ねて自ら活用する例が増えている。その代表が孫社長だ。

2月にもツイッターを媒介にして、障害者割引適用対象となる携帯電話料金プランを拡大した。3日に要望が寄せられ、9日に「できました」と返信。同日に正式発表された。
活用例はほかにもある。
価格比較サイトを運営するECナビは2月、ツイッターを活用した新卒採用活動を実施した。宇佐美進典社長は「IT(情報技術)に詳しく情報発信できる人が集まると考えた」と語る。楽天の三木谷浩史社長もツイッター活用で知られる。
その利便性に注目が高まる一方で、課題も浮かんできた。重要な情報がツイッターの利用者だけに先に伝わることの是非である。
目新しいからか、ツイッターに対して変に注目しすぎな気がします。従来とは異なる特徴を持つけれどユーザーからすれば数種類ある利用メディアの一つでしかないはず。ツイッター利用の有無による情報格差についてはテレビや新聞でも全ての人が利用しているわけではないのだからツイッターだけの問題ではないはずです。「重要事項をツイッターでしか流さない」のであれば問題かもしれませんが実際にはそんなはずもなく各々のメディアの発信速度と表現方法で(必然的に発生するタイムラグはあれども)流されるでしょう。ツイッターはその特性上発信が他のメディアに比べて速いのは当然のことです。代わりに詳細は語れない、画像で示すことが出来ないなどデメリットもある。ユーザー側からすれば、自分の都合に合わせて情報源を選んで欲しい情報を得る、ただそれだけのことではないでしょうか。情報弱者を作らないという観点で大事なことは「世の中に様々な伝達手段が存在すること」だと思います。情報の信頼性についてはテレビや新聞だって取材、編集の過程が部外者からは全く分からず「ブラックボックスから出てくる情報」であり「提示された情報を正しいと信じるしかない」点は結局同じです。(2010/03/17)