世情がどのように推移しようと、桜の季節はやってくる。南から北へ移動する桜前線は、ほんのいっとき浮世の憂さを忘れさせてくれる。なんてありがたい季節の到来だろうと心底から喜びが湧きあがる。
先週から今週にかけて、松山、高知、宮崎に熊本と開花宣言が出され、いよいよ花の季節の到来を印象づけた。そこで当コラムも去年に引き続き、各地の銘桜を紹介するタイミングを知ったのである。
それにしても今年は早い。去年も記録的な早さ、と書いたことを覚えているが、それにも増して今年の桜は早咲きの予感がする。
私は二十余年前からこのかた桜撮影に臨んできた。毎年、新たな桜木との出会いがあり、また、再訪する1本桜がある。とうぜんのことながら、今年も意中の桜があって、花狩りを兼ねて写真撮影を計画している。
“ツウ好み”の桜を紹介したい
満開の予想は専門職に譲るとして、今回の桜の展覧について述べていこう。昨年は日本三大桜の一つ、福島県三春町の「三春の滝桜」を紹介した(「毎年30万人を癒やす一本の千年桜」)。
今年は嗜好を変えてみようと思う。いわゆる“ツウ好み”の桜を織り交ぜようと企画した。自分だけが楽しんできた、あまり知られていない桜も紹介してみたい。隠れた銘桜については、開花情報が入りにくかったり、アプローチに難儀をしたりするが、花に出会えたときの感激はたとえようもない。
老若男女を問わず、世間には厳しいことが多いこの頃だけど、ほんのいっとき、花狩りの気分を味わっていただければ嬉しい限りである。どこかで美しいものを見つけてきては皆さんに喜んでもらうことを生業とするカメラマンにとっては冥利に尽きる。
日本人と桜の切れないえにし
この国の桜観は深く、広い。上古から科学的理解よりも観念的解釈に偏り、表象よりも深層に隠れた象を求めてきた。
国民的な花に祭り上げられた桜は、芸術の分野に限らず、情緒的表現の最たる対象になってきた。狩野派も琳派も、はたまた、名を残さなかった工芸家や絵描きにしても、技と心的解釈の限りを尽くして桜を形象化することに血道をあげてきたのである。カメラマンの私もその末席にいる。
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