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介護業界で“男の寿退社”が相次ぐワケ

介護福祉士の33歳男性のケース

  • 小林 美希

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2010年3月29日(月)

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 「結婚を機に、仕事を辞めた。最後はまるで、寿退社のようだった」

 介護福祉士の川上圭一さん(仮名、33歳)は、2年前、結婚を機に「これ以上、給与が上がることはないだろう」と介護業界から去った。結婚し、子どもができた時に家計を維持してはいけないと思ったからだ。そんな“現代版・男の寿退社”が、介護業界では数年前から囁かれている。

 圭一さんは高校卒業後、介護専門学校を出て入所型の介護施設で働き始めた。圭一さんが就職した頃は、2000年に介護保険制度がスタートしたばかりで業界に勢いがあり、介護の世界に魅力を感じて就職した若者が多かった。

ずっと働けるか、不安になった

 就職してから、24時間対応型の訪問介護ステーションで働くホームヘルパーの清美さん(仮名、29歳)との交際が始まった。結婚が視野に入った時に、圭一さんと清美さんは、「このまま結婚して、やっていけるか」という強い不安にかられた。

 圭一さんの月給は手取り20万円。ボーナスは年に基本給の2カ月分程度で年収は約320万円。清美さんの給与もほぼ同じ額で、2人の収入を合わせれば、世帯収入は年600万円程度となる。2人がずっと働き続けることができれば、贅沢しなければ、やってはいける。

 ただ、圭一さんの周囲でも清美さんの周囲でも、妊娠が分かった後で流産したり、切迫流産や切迫早産となって仕事を続けられなくなったりする女性が何人もいた。同じ心配をして辞める同僚の女性もいたため、その心配が頭から離れなかった。万年人手不足とも言える介護業界の中で、妊娠したからといって業務負担が軽減されることがなく、無理を強いられる場面が少なくないからだ。

 清美さんの職場では、経費削減のため1人当たりの夜勤回数が増えたり、2人で回っていた夜勤のシフトが1人になったりするなど、負担が増していた。訪問介護は入所型の施設より賃金が低く、休日も取りにくいため、特に人が入ってこない。

 個人加盟労組のUIゼンセン同盟の日本介護クラフトユニオン(訪問介護が半数を占め組合員数は約5万4000人)の「就業意識実態調査」(2008年度)では、月給制の組合員の平均月収は「15万円以上~17万5000円未満」が最も多い22.9%を占めている。また、1年間の有給休暇の取得状況について、月給制で23%、時給制で27.4%が「0日」と答えた。

 夜勤労働者や寝たきりの高齢者の体を支えるなどする「重筋作業」の多い介護職は一般労働者より流産の危険にさらされている。日本医療労働組合連合会の「介護・福祉労働者の労働実態調査報告書」(2008年7月)によると、介護職の24.7%、つまり4人に1人が「切迫流産」を経験しており、全産業平均の19.2%(全国労働組合総連合調べ)より高いことが分かる。

 また、2007年5月の産業衛生学会で報告された「介護労働者の月経関連症状および妊娠異常について」では、介護職の妊娠異常の高さが分かる。この調査では全国402の介護事業所、4262人の女性から回答を得た。この調査に携わった、滋賀医科大学の北原照代講師によれば、「回答者から45歳未満の女性を抽出し、妊娠経験者374人のうち156人が切迫流産や流産の経験をしており、その率は42%に上った」と言う。

夜勤に規制がない介護職

 夜勤について、介護職の場合は看護師と違って、規制がかけられていない。例えば、看護では、診療報酬(入院基本料)の中で看護配置基準の「7対1」(患者7人に対して看護師1人)の基準をクリアする項目に「月平均夜勤時間72時間以内」などの規制がかけられており、管理者側にある程度の抑制が働く。しかし、介護職の場合、介護報酬制度でなんの夜勤制限もかけられていないため、野放し状態の原因となってしまう。

 さらに、無事に出産に至った場合でも、育児との両立が困難となり辞めていくのは、介護業界でも他の業界でも同様だ。売り手市場と思われる介護職でも、いったん職場に出れば「一人前」としてカウントされる。人手不足だからこそ、いっそう、マンパワーとしての期待がかかってしまう。

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