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新生児集中治療室に見る、社会問題化する親子関係の縮図

小児科医の30代半ば女性のケース

  • 小林 美希

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2010年4月12日(月)

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 熟睡してしまうのが怖い――。

 そんな経験をする人が、いったいどのくらいいるだろうか。

 大学病院の小児科医として約10年。桜井京子さん(仮名、30代半ば)は、自宅にいてもベッドで眠らず、あえて寝心地の悪いソファで寝ている。小児科の中でもNICU(新生児集中治療室)で働く京子さんは、いつ妊婦や新生児が急変して呼び出されるか分からないからだ。緊急呼び出し時に、「万が一、目が覚めなかったらどうしよう」。そんな心配から、熟睡することを避けている。

 京子さんは、「人が足りないからこそ、やってみよう」と、あえて激務の小児科を選んだ。朝8時から仕事が始まり、小児外来や病棟の回診をこなす。仕事が終わるのは夜10~11時というのが日常的な労働時間。

 病院からの呼び出しに対応するオンコールの当番は月10回。オンコールの日は、30分以内に病院に駆けつけられる場所にいなければならない。休みの日でも病院に顔を出し、当直の医師に病院の様子を確認しなければ、患者が心配で休めない。

増加する「ハイリスク新生児」

 大学病院には、母体や胎児が死亡もしくは発症する可能性が高くて地域の産婦人科医院などで診ることのできない「ハイリスク妊婦」や、救急搬送されてくる妊産婦が半数以上を占める。すると、早産などによって低体重で生まれてくる新生児や、分娩異常などで仮死状態で生まれてくるような「ハイリスク新生児」の出生が必然的に多くなる。

 「ここにいると、正常なお産が珍しく感じてしまう」と思ってしまうくらい、奇形や障がいを持って生まれた重症患者を診るため、京子さんは「親御さんやその子の将来を考えると、相手の人生をも背負ってしまう」と話す顔が曇る。

 生まれつき心臓の病気を持っていたり、肺が形成されないまま生まれ自発呼吸ができなかったりする小さな子どもが、無菌状態のNICUの中でチューブやモニターにつながれながら必死に生きようとしている。しかし、どんなに子どもや医師、看護師らが頑張っても、生後数時間で亡くなる子もいれば、退院できないままNICUで1歳を迎える子どももいるのが現実だ。

 近年は晩婚化もあって、高年初産婦も増えている。日本産婦人科学会では、35歳以上の初産婦を「高年初産婦」と定義している。医療の進歩はあるものの、やはり若い妊婦と比較すると、出産のリスクは高い。35歳以上の初産では、妊娠高血圧症候群、糖尿病合併妊娠、常位胎盤早期剥離、前置胎盤などを起こす確率が増すからだ。そうした症状をもつ妊婦をハイリスク妊婦と言い、(1)妊娠22週から32週未満の早産、(2)妊娠中毒症、(3)妊娠30週未満の切迫早産、(4)前置胎盤、(5)40歳以上の初産婦、(6)分娩前にBMIが35以上の初産婦人、(7)多胎妊娠――などを指す。晩産化によって増えるこうしたハイリスク妊婦から、ハイリスク新生児の出生に直結することが多い。

 例えば、東京都が2009年3月から始めた「母体救命対応総合周産期母子医療センター」(いわゆる「スーパー総合周産期センター」)では、救命救急センターと連携して、脳卒中や出血性ショックなど重症な疾患で緊急に母体救命処置を必要とする妊産褥婦を日本赤十字社医療センター、昭和大学病院、日本大学学部附属板橋病院で受け入れている。2009年3月25日から同年12月31日まで、37件の搬送があった。東京都医療政策部によれば、その中で、最も多かった妊婦の年齢は30~34歳の15件。次いで35~39歳が11件だった。

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