「時事深層」

ゆとり世代は男子も「一般職」

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2010年4月12日(月)

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一般職に応募する男子学生、就職専門の家庭教師に指導を受ける有名私立大学生…。買い手優位の厳しい雇用環境を背景に、学生の就職戦線に異変が起きている。「ゆとり教育」世代が就職期に入り、全体の質が落ちた影響と採用側は言う。

 「一般職に、男ですよ」

 困惑を隠し切れないといった表情で、ある生命保険会社のベテラン採用担当者が話す。企業の採用活動が本格化する4月。その最前線では、一昔前なら考えられない事態が起きている。

 この保険会社では、長らく一般職と総合職の2つの職種で学生を採用してきた。一般職は、社内の事務処理などの仕事が中心であり、キャリアを積み重ねていく総合職とは異なる。応募条件に男女の制限はないが、通常は女性が就く職種と考えられてきた。

とりあえず「一般職男子」目指す

 ところがここ数年、一般職の応募者に男子学生の姿を散見するようになったのだという。想定していなかった事態に、採用側も戸惑い気味で、「理由を一生懸命分析している」と採用担当者は言う。

 彼らはどんな理由で一般職に応募するのか。先の採用担当者によれば、ある男子学生の志望理由は、「遠方への転勤がないから」だった。「一般職は、勤務地が大きく変わることがないことから、自宅から通える仕事を安易に選んだ、というのが本音だったようだ」。

 一般職に群がる男子学生――。こうした動き、実は業種を問わずに広がっている。企業の採用活動を支援する採用プロドットコムの寺澤康介社長は、「ここ最近、一般職を希望する男子学生の話はよく耳にする」と言う。

 試しに、一般職を採用している商社、銀行、生損保など10社に聞いたところ、6社で男子学生の応募があったとの回答を得た。実際に、どの程度の男子学生が一般職に応募しているかというデータはないが、その傾向が広がりつつあるのは確かなようだ。

 無論、特殊な事情で一般職を希望する男子学生もいる。「家庭の事情などで、自宅を離れられないことから仕方なく応募する場合もある」と、損害保険会社の採用担当者が言う。

 ただし、それだけではここ最近の増加を説明できない。ある採用支援会社の社長は「厳しい雇用環境の一端を反映した結果」と指摘する。

 この社長によれば、一般職を選ぶ学生は、従来、派遣会社などに登録をしていたという。ところが、昨今は派遣切りが広がり、「派遣は不安定」というイメージが刷り込まれた。その結果、正社員志向の学生が増え、多くが一般職に流れ込んでいるという。

 厳しい総合職の選抜競争を避け、「とりあえず一般職へ」と考える学生も増えている。「競争の激化で、総合職の内定獲得を最初から諦める学生もいるようだ」とメガバンクの採用担当者は言う。いわゆる、草食化。そんな傾向が、一部の学生に見られる。

 多くの企業が採用を絞り込んだ結果、やむなく一般職へと向かう男子学生。だが、大企業の採用担当者は手厳しい。「一般職に応募する男性は、まず採用しない」と口を揃える。

 もっとも、男女雇用機会均等法以降は、一般職と総合職に男女の制限はない。現実には総合職への女性進出が拡大しており、逆の現象が起きる可能性もゼロではない。実際、ある採用担当者はこう言う。「まとまった数の男子学生が一般職に応募してくれば、採用方針も変えざるを得ないかもしれない」。近い将来、総合職の女性と一般職の男性が結婚し、「男の寿退社」が始まるかもしれない。

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著者プロフィール

蛯谷 敏(えびたに・さとし)

2000年、日経BP社入社。通信業界誌『日経コミュニケーション』記者を経て、2006年より日経ビジネス記者。情報通信、ネット、金融、不動産、政治、人材など色々担当。「一極集中」から「多極分散」へと移り変わる様々な事象をテーマに日々企画を考えている。

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に配属。翌年日経ビジネスアソシエ編集部へ移り、若手ビジネスパーソン向け経済情報を取材・執筆する。2007年から再び日経ビジネス編集部へ。重工、中堅・中小企業を担当。近年は第一次産業や人材業界に関する取材にも注力する。趣味は幼少期から続く宝塚歌劇鑑賞(月2回の観劇はマスト)と、ハマってから6年目になる阿波踊り。今年も徳島と東京・高円寺で踊る予定。



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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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