「時事深層」

中国車の真打ち、続々登場

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2010年5月7日(金)

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中国市場で日系自動車メーカーの強敵となりうる中国車が現れた。外資の技術力を国有企業に吸収させるために約30年前に導入された「合弁法」の成果だ。その実力は未知数だが互いに手の内を知るライバルの潜在成長力は侮れない。

 11回目を数えた北京国際汽車展覧会(北京モーターショー)で、広州汽車工業集団のブースは従来と違っていた。合弁相手であるトヨタ自動車やホンダのクルマを端に追いやり、中央のひな壇を飾ったのは白いセダンだった。広州汽車が9月に発売する「傅祺(英語モデル名はTrumpche)」である。

 同集団の曾慶洪総経理は「我が子が生まれたように感激している」と上機嫌だった。無理もない。傅祺の誕生は、2009年に建国60周年を迎えた中国にとって悲願とも言える成果だからだ。

 1949年の建国以前、中国に国産車はなかった。53年に始まった第1次5カ年計画では、ソ連(現ロシア)から技術援助を受けて国産トラックの生産を始めたが、乗用車は重視していなかった。国土再建の道具となる商用車の生産に主眼が置かれたためだ。

トヨタとホンダのいいとこ取り

 76年に小平氏が実権を握り、流れが変わる。産業ピラミッドの頂点にある自動車産業を育成しなければ国の発展はないと判断、79年に自動車産業政策の柱となる「中華人民共和国中外合資経営企業法」を施行した。

 合弁法とも呼ばれるこの法律の対象は外国企業。外資の参入を原則禁止していたが、中国企業と合弁事業であれば認めることにした。高い技術力を有する外国企業の力を利用して自国産業の競争力を高めることを狙ったが、当初は見向きもされなかった。西側諸国の外国企業にとっては、“不平等条約”とも言うべき内容だったからだ。

 合弁事業では利益の半分を中国側に渡さなければならず、技術やノウハウの流出リスクに常にさらされる。しかも合弁法では外国企業に対して最新の技術や設備を導入することを求め、「故意に遅れた技術を導入して損失を発生させた場合には補填しなければならない」とまで規定された。

 しかし、中国には他国にはない磁力が備わっていた。世界最大の人口大国は世界最大の自動車市場になり得る。その可能性に気がついた企業から、続々と中国市場に参入していった。独フォルクスワーゲン(VW)などに続き、98年に日系メーカーとして初めてホンダが中国に本格的に進出した。

 その合弁相手が当時生産台数が年1万台にも満たなかった広州汽車だ。ホンダは法律の趣旨通り「アコード」の最新モデルを中国市場に投入し、中型セダン市場で高いシェアを確保。その後もミニバン「オデッセイ」や小型車「フィット」を次々とヒットさせた。

 2004年からはトヨタ自動車も広州汽車と合弁事業を始め、中型セダン「カムリ」や「ヤリス(日本名ヴィッツ)」などを相次いで発売していった。

 トヨタとホンダに支えられるように広州汽車の規模は拡大し、2009年の乗用車販売台数は約61万台に達した。実に10年で60倍以上に増えた計算だ。

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広州汽車にとって初の自主開発車となる「傅祺」。発売を機に広州(Guangzhou)の頭文字をモチーフにしたブランドロゴも発表

 2008年から広州汽車は新たなステージに入った。合弁事業を通じて得た利益を元に全額出資子会社の「広州汽車集団乗用車(広汽乗用車)」を設立。独自ブランドの乗用車を生産するために38億元(約513億円)を投じて自社工場も建てた。2009年に完成したその新工場で初めて生産されるのが、冒頭に紹介した傅祺だ。

 傅祺は胡錦濤政権が国策に掲げる「独自開発」にも合致する。これまで中国のローカルメーカーが生産するクルマは独自開発車と呼ばれてきたが、明らかに潜在力が異なる。合弁事業を通じてホンダとトヨタのクルマ作りを体得した広州汽車が開発・生産するクルマだからだ。その意味で、“真打ち”とも言うべき中国車なのだ。

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著者プロフィール
坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)

日経BP社北京支局長。入社してから6年間はバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」で記者として修行、2004年に「日経ビジネス」に異動、以来、主に製造業を中心に取材活動を続けた。2009年から北京支局に赴任し現在に至る。趣味は上手とは言い難いがバドミントン。あと酒税の安い中国はビール好きには天国です。


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