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口蹄疫、「生き地獄」の現場から

好転の兆し見えない宮崎県川南町から町職員が報告

2010年5月18日(火)

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 口蹄疫(こうていえき)――。牛や豚、羊、ヤギなど蹄のある動物に感染する、ウイルス性の病気である。家畜が感染すると、発熱や口にできた水ぶくれなどの症状によって餌が食べられなくなり、肉量や乳量を激減させる。非常に伝染力が強く、蔓延を防止するためには、発生した農場で飼育された家畜はすべて殺処分するよう、法律では定められている。

 家畜農家を震撼させるこの伝染病が、今年4月、宮崎県で見つかった。最初の感染が確認された都農町から、隣接する川南町、えびの市へ広がり、約4週間たった現在も、一向に収束する気配が見えない。

 現場では一体、何が起きているのか。最前線で対応に当たる宮崎県川南町役場の河野英樹氏が、発生から現在までに至る経緯をまとめた手記をご覧いただきたい。(5月16日までの状況。蛯谷敏=日経ビジネス記者が再構成した)。

何気ない電話のやり取りで始まった

 口蹄疫発生の日から25日以上が経過した。今もなお、収束の気配は見えないが、現在に至る宮崎県川南町の様子と、その間に私自身が体験した出来事などを中心に振り返りながら、今なお見えない相手と必死で戦い続けている川南町の現場の状況を記す。

 この作業を通じて、真面目にコツコツと家畜を守り育ててきた農家が直面している状況を知っていただきたい。また、私たちの大切な故郷が、全国の方々に心から応援していただけるよう、環境を整えていきたいと思う。

■4月20日(火)

 2010年4月20日早朝、私の携帯に知人からの電話が鳴った。

 知人:「尾鈴農協内で何かがあったかもしれない…。農協主催の宴会が立て続けにドタキャンになったそうだ。今までにそんなことはなかったから、君なら何か知ってるんじゃないかと思って電話したんだけど。何か思い当たる節はない?」

 私:「はあ? 全く知りませんよ。もしかして…、農協職員が不正な経理をしていた、なんてことじゃないでしょうね(笑)。まあ、宴会のドタキャンが連続したのはただの偶然でしょう。とりあえず情報持ってそうな人に探りを入れてみますね」

 当時は、この友人との何気ない電話のやり取りが、大きな問題のスタートになるとは、思ってもみなかった。

「沈静化するだろう」大きな危機感はなく

 友人:「隠したってすぐ判るから言うけど…。隣の都農町(つのちょう)で、口蹄疫に感染した牛が発見されたんだ…。家畜伝染病の口蹄疫が…。」

 私:「本当に!? 本当に口蹄疫に感染したのか?」

 友人が言ったとおり、その数十分後には、検索サイト「Yahoo!」のトップニュースで、「宮崎県で口蹄疫に感染した牛が見つかる!!」といった内容の記事がアップされていた。

 宮崎県では10年ほど前、口蹄疫が発生したことがある。だが、当時は事態が速やかに収束した。このことが頭の中にあったため、今回も「適切に対応すれば蔓延せず、沈静化するだろう」と大きな危機感も持たなかった。若干の心配を感じながらも、どこかで「きっと大丈夫!」という気持ちでいた。

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「口蹄疫、「生き地獄」の現場から」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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