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講師の「細切れ雇用」で、大学は教育できるのか?

非常勤講師の40代男性のケース

  • 小林 美希

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2010年5月24日(月)

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 1コマいくらで、いくつ取れるか。大学の講師は究極の細切れ雇用にさらされている。

 「もう専任講師の道は諦めた」

 そう話すのは、第二外国語の非常勤講師、立石誠司さん(仮名、44歳)だ。誠司さんは早稲田大学を卒業後、大学院に進み外国文学を学んだ。修士課程で2年、博士課程は6年在籍して、所定の単位を取り学位(博士号)を取得せずに博士課程を修了する「満期退学」した時は31歳だった。

コスト削減で授業がなくなっていく・・・

 博士課程に在籍していた頃、教育学部での助手の仕事が回ってきた。図書研究費を含め月20万~30万円の収入となった。大学院生が大学に就職する時、通常は指導教官が独自の人脈などを使って就職先を世話する慣例があるのだが、誠司さんの担当官は全く就職の斡旋をするタイプではなかった。自力で就職しようにも、第二外国語はもともと受講生の人数が限られるためポストが少なく、専任講師として正職員採用されにくい。誠司さんは、人づてに1コマ90分の授業を複数の大学から拾うようにして、食いつなぐことにした。

 「4~5年前が一番、コマ数が多く、週に14コマの授業を受け持つことができた。1コマ平均2万5000円で、年収は最高で400万円。今年は週11コマに減っているが、それでも周囲の非常勤講師と比べたら恵まれていて、申し訳ない気分になる」(誠司さん)

 大学の職場環境は、年を追うごとに悪くなる。誠司さんは、週に3コマも授業のあった理系の大学での授業は3年前に打ち切られた。そこで6年教えていた間、入学生が年々減少していたため、大学間の競争と少子化の影響を肌で感じた。

 ある大学では、数年前に突然、報酬が時給計算に変更され、1コマ90分だった授業が70分に短縮され、その分の収入が減った。補修授業がなくなった大学もあった。全てコスト削減によるものだった。誠司さんの収入は年100万円減った。学会に納める数千円の会費さえも負担を感じる。

 実家で一緒に住む両親は70代後半になる。今はまだ健康だが、もし病気になったり介護が必要になったりしたらと思うと、大きな不安が過ぎる。このまま自分も50代、60代と年を重ねていくのだろうか。収入が安定する専任講師の道を探りたくても、コストカットで第二外国語の授業数が減らされる傾向は強く、論文を書く意欲も減退してしまった。

 ただ、研究者と教員という両面を持つ仕事の中で、教員として授業の工夫次第で学生のやる気を引き起こし、社会問題を考える動機にもなることには、社会的意義を感じている。社会問題のドキュメンタリー映画などを外国語で見て、討論する。

 誠司さんは「若い世代は、きっかけさえあれば、視野がどんどん広がっていく。それを提供できるという、これ以上、楽しい仕事はない。この年になって楽しいと思える仕事に就けることは幸せだ」と話す一方で、そう遠くない将来、非常勤の仕事すらなくなるのではないかと覚悟しているという。

 1991年4月に中央教育審議会から「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」(答申)が出され、2000年度まで大学院生を2倍にすると目標が掲げられた。

増加する高学歴ワーキングプア

 国策として大学院生倍増計画が図られた結果、1991年度の博士課程修了者数は6201人だったものが2000年度は同1万2192人と倍増。2009年度は1万6000人となった一方で、大学講師になれる数が限られ、高学歴ワーキングプアが増加している。

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