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村木氏「無罪確実」で抜本改革を迫られる特捜検察

不合理なストーリー設定の背後にある組織の構造問題

  • 郷原 信郎

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2010年6月2日(水)

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 2009年4月、大阪地検特捜部が郵便法違反で強制捜査に着手し、虚偽公文書作成罪による厚生労働省の現職女性局長の逮捕に至った「凛の会」郵便不正事件は、捜査段階での関係者の供述が公判でことごとく覆され、検察官が証拠請求した供述調書の大半が却下されるという特捜検察の事件としては異例の展開になった。村木氏の弁護人は「無罪は確実」と述べている。

 裁判所が証拠請求却下決定で行った検察官の取調べや供述調書作成の手法についての指摘は従来からの特捜検察の捜査手法の根幹に関わる問題である。そればかりでなく、最高検も含めた検察組織全体の了解の上で行われた想定ストーリーがいかに不合理かを浮き彫りにするものとなった。東京地検特捜部が手掛けたPCI特別背任事件で一審に続き二審の東京高裁でも無罪判決が出て無罪が確定したこととも相まって、特捜検察の能力低下の深刻さを露呈した。

 筆者が、近著『検察が危ない』でも指摘したように、ここ数年、低迷・不振を続け、昨年春の西松建設事件以降の小沢一郎氏に関連する一連の事件でも暴走・劣化を繰り返してきた特捜検察は、最後の頼みの綱であった裁判所からも厳しく断罪されるに至り、一方では、検察審査会の議決の起訴強制による圧力にもさらされて、今や抜き差しならない状況に立ち至っている。今回の事件で明らかになった検察捜査の問題を改めて考えてみることとしたい。

 まず、郵便不正事件のこれまでの経過を振り返ってみよう。

捜査段階から容疑を全面否認

 同年4月の当初の強制捜査の容疑は、実体のない障害者団体の定期刊行物を同封することによって、障害者団体向けの低料第三種郵便割引制度を適用させ、大量のダイレクトメールを発送させて正規料金との差額を不正に免れた郵便法違反だった。

 罰金30万円以下という極めて軽い法定刑の事件だったが、大阪地検特捜部は、障害者団体「凛の会」、大手家電量販店会社、広告代理店、大手通販・印刷会社などの関係者10名を逮捕・起訴、低料第三種郵便を不正に受け付けた郵便事業会社側関係者も郵便法違反で逮捕・起訴した。

 そして、5月には、障害者団体を認定する虚偽の証明書を発行したことに関連して、厚生労働省の担当係長だった上村勉氏を、「凛の会」関係者とともに逮捕、6月には、当時担当課長であった村木厚子雇用均等・児童家庭局長を、上村係長に虚偽の証明書の作成を指示した虚偽公文書作成の容疑で、上村氏及び「凛の会」関係者とともに逮捕した。

 その間、村木氏に虚偽の証明書の発行をするよう要求していた民主党の大物議員の介在がしきりに報道され、衆議院の解散総選挙を控えた時期に、世の中に民主党議員に郵便不正事件に関して重大な疑惑があるかのような印象を与えた。

 村木氏は捜査段階から容疑を全面否認し、虚偽公文書作成で起訴されたが、公判でも一貫して無罪を主張した。上村氏は、村木氏の指示で虚偽の証明書を作成したとの捜査段階での供述調書について、公判では、検察官の執拗な誘導によるもので「偽の証明書は独断で作った」と供述し、捜査段階の供述調書で村木氏の関与を認めていた他の関係者も、公判ではほとんどが供述調書の内容を否定した。

 そして、2010年4月27日に、郵便法違反に加え、虚偽の証明書作成を村木氏に依頼した虚偽公文書作成の事実で起訴されていた「凛の会」の倉沢邦夫氏に対して、虚偽公文書作成について無罪の判決が出されたのに続き、5月26日には、村木氏の公判で、検察官が証拠請求した検察官面前調書(検察官の取調べで作成された供述調書、以下「検面調書」)43通のうち上村氏の供述調書15通全部を含む34通が、検察官の誘導によるもので、検面調書の証拠採用の要件である「信用すべき特別の情況がない」として却下された。村木氏の関与についての検察官立証は極めて困難となり、次回公判期日で検察官が証拠に基づく有罪論告を行えるか否かすら危ぶまれる事態となっている。

 裁判所は、証拠請求却下決定の中で、検察官の取調べの方法や検面調書作成に関して、以下のような指摘を行った。

(1)検察官の意向に沿う供述をしないと調書を作成しない。(2)検察官が「記憶なんか曖昧だから取調べた関係者の多数決で決めよう」などと言って、記憶に反する供述調書への署名を求めた。(3)調書の内容について主任検事の了承をとった上で調書を作成する。(4)調書の訂正を求めても応じない。

 そして、(5)取調べ状況に関する証人として出廷した担当検察官が、いずれも「取調べの際のメモを保管していない」と証言し、その理由について合理的な説明ができなかったことも調書の信用性を判断する重要な事実として指摘した。

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