「時事深層」

iPadが呼ぶ価格破壊

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2010年6月7日(月)

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iPad上陸で、出版を中心とするコンテンツ業界や通信業界の利用者争奪戦が始まった。両分野で低価格路線を打ち出すのがソフトバンクグループだ。魅力的なサービスを提供できなければ消耗戦に巻き込まれかねない。

 米アップルが5月28日に日本でタブレット型の多機能端末「iPad(アイパッド)」を発売してから1週間余り。

 発売当日にiPadを取り扱う一部の店舗で、早朝から客が長蛇の列を作るなど大きな話題を呼んだ。大ヒット商品になるとの思惑が先行し、出版業界や通信業界ではiPad向けにサービスを提供する動きが活発化している。

雑誌・新聞が月450円で読み放題

 出版業界では、1997年から書籍・雑誌の市場規模が縮小傾向にある。出版不況が続く中で、関係者は電子書籍端末として利用できるiPadが、市場のカンフル剤になると期待する。

 要になるのが、電子書籍配信サービスだ。電子化した単行本や漫画、雑誌、新聞をiPadで購読できるようにする。成否のカギを握るのが、読者を引きつける豊富な品揃えだ。

 講談社や新潮社など主な出版社31社で組織する「日本電子書籍出版社協会」はiPad発売当日の5月28日に、電子書籍購読ソフトを今秋からiPad向けに無料で提供すると発表した。

 同協会が運営するパソコンや携帯電話向けの電子書籍配信サービス「電子文庫パブリ」をiPadからも利用できるようにする。出版社各社が共同で約1万点の電子書籍を取り揃え、iPadユーザーを囲い込む構えだ。

 パソコンなどを対象に漫画の電子出版を手がけるイーブック イニシアティブ ジャパンの小出斉社長も、「閲覧に最適の端末」とiPadでの配信に乗り気。既に出版社各社が発売した漫画を中心に、約3万7000点を電子化しており、世界最大規模の漫画配信サービスをうたう。

 規模を武器に、iPad向け配信サービスの主導権を握ろうと、各社は対応を急いでいる。

 出版社はこうした電子書籍配信サービスに自社の出版物を提供する一方で、価格競争に陥ることを恐れる。電子書籍は造本コストや書店流通コストがかからない分、紙の書籍よりも安い費用で販売できる。

 電子書籍の低価格化が進むと、紙の書籍が売れなくなり、出版事業の業績が悪化しかねないと懸念する関係者は少なくない。過度に安い価格を設定しようとする電子書籍配信サービスには、出版物を提供しないなど、自衛策を取っている出版社は多い。

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広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者。



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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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